Dal Segno ~異世界転移した俺は、自分の願いを叶えるために何度でもやり直す~

大山 たろう

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第一章

1-3 長い、長い道のりの第一歩

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 目が覚める。まぶしい光が目に入り込み、目をすぼめる。

 少しずつ慣れてきたので目を開けると、そこに広がっていたのは花畑――――なんてあるはずもなく。

 そこにあったのはひび割れた石レンガでできて、唯一の出口も鉄格子と外側についた鍵で固く閉じられている。そこから漏れ出す光がドンピシャで目に当たっていたらしい。



「どうなった......って、考えるまでもないか」



 俺は確認して絶望を覚えた。

 首に何かがまかれている。体の構造上、そこに何があるかを確認することはできないが、大体予想できる。



 隷属の首輪。

 つまり俺は、というかクラスメイト全員、多分奴隷になってしまった、というわけだ。

 まぁ、これは俺たちが失念していた。というか委員長が良いと思っていた条件の抜け穴か。



 二人の間に交わされた約束は二つ。一つは衣食住と生命の保証。もう一つは戦闘を強制しないこと。

 確かに、身分の保証は入っていないし、先ほどの質問で誰も手を挙げなかった。つまり、戦闘の意思がある、というわけだ。



 命令して理性がぶっ飛ぶ系の隷属だったら面倒だ。例えば『読み込み』『書き込み』セーブできる時間に制限がある、なんて言われて、理性が戻ったころには三年経ってました! なんて悲惨なことはしたくない。だからこそどうにかしてこれを外すことは......出来ないだろう、ならば取返しがつかなくなる前に、あれをするしか。



 俺はステータスを呼び出すと、ギフトの欄を表示する。

 そこに確かに書かれているのは時間操作lv1。能力としてはポイントを記録するだけ。つまるところセーブだ。だからこそ『読み込み』をどうにかしてしないといけないんだけれど......



「『読み込み』......誰かができるのか、それとも単純な俺の能力不足か」



 前者なら現在連絡が取れないクラスメイトの機転にかけるしかない。けれど、後者なら本当にどうしようもない。

 とりあえずの目標として、一刻も早く『読み込み』を見つけよう。



 しかし、そう簡単に『読み込み』できるだろうか。他の人だったら面倒だな。

 というか、そもそもこの部屋が頑丈に防がれているうえに一人で閉じ込められている時点で、どうあがいても外に出る手段はない。それがわかっているからだろうか、手足をはじめとする行動の制限になるような器具はつけられていないようだ。



 部屋の中を見回す。

 ぼろぼろのベッド、丸出しの便器。机と椅子が一つずつ。蝋燭が一本、火がついてはいないがそこに置いてある。

 ひび割れたとはいえ石レンガが頑丈に積まれているからだろう、体当たりしてもびくともしない。

 また外部からの連絡も、外部への連絡も不可能。



「あれ、詰んでね」



 まぁ、そう簡単に脱獄できるならそれはもはや牢の意味をなしていないけど。

 眩しかった外を眺める。そこは大量の石が発光し、そこらじゅうを煌びやかに彩っていた。

 外見だけは高級ホテルみたいだ。部屋の質は最悪だけど。



「とりあえず自分で『読み込み』できる可能性を探すか......」



 そう考え、よくよく考えたら詳細を覗いていなかった時間操作を確認する。



 時間操作lv1



 時間を操作することが出来る。



 lv1 『書き込み』 

 使用した時間と場所を記録する



 ギフト能力:『読み込み』(回数制限:10/10)

 lv5 『読み込み』を回数制限ありで使用可能にする。



「いや警戒した割に結構楽に見つかったな......しっかし、lv5とは、道のりも遠いもんだ」



 回数はどうやらそれまで十回限定のようだ。

 この回数が復活すると結構うれしいのだが、この書き方的に復活はしない気がする。復活するならそれこそそれが書かれているだろうし。



「さて、十回をどこまで有意義に使ってこの状況を打破できるか......」



 制限がある以上、一回たりとも無駄にできない。少しでも、次に生かせる情報を入手しなくては......と思ったが、よくよく考えるとこの状況からこれ以上の情報は得られる気がしない。隷属系統の能力を使われてスキルを使えなくなる前にこの周回はあきらめる方がいいのかもしれない。



「さて、悩むもんだが......」



 情報、といえば......



「召喚された時の後ろの扉が都合よく外につながっているといいんだけど......」



 あの扉の先もそうだし、騎士が入ってきたほうの扉の先も、どうなっているかが一切情報がない。次当たりで確認したい。

 あと使えそうな物......



「条件を変えたらこのエンドも回避できるのかな......」



 思い出すのは男子委員長と国王のやり取り。

 例えば「平民以上の身分保障」だとか言って奴隷という身分制度で最下位に立たされるようなことを避ければ、もっと良い待遇で、国の庇護にあずかれるかもしれない。それも次回試してみるか。



「そのために必要な情報は......」



 次回のことは次回も考えられるだろうが、今回のことは次回考えられない。次回に必要な情報のうち、一つくらいは手に入れたい。

 眩しい外を見ると、ちょうど巡回の兵が二人ほど、こちらに向かって歩いてきていた。

 慌てて姿をひそめる。見つかって状況が変化して面倒になることは避けたい。

 そう考え扉に背を向けて座り込んでいると、話し声が聞こえる。

 最初のほうこそ距離が遠く声が聞こえにくかったけれど、どんどんと近くなっていく。

「にしても、面倒なことをしやがる」



「異世界から召喚はまだしも、こうやって奴隷にしたことがばれたら諸外国がどんな反応するんだろうな」



「そりゃ、軍事的に使用されることを恐れて跪くだろう。戦争でずっと勝っていた敵に跪く屈辱を味わわせると思うぜ」



「俺は逆だと思うな、外道だの悪魔だのなんだのと敵役に仕立てられて、一斉にせめこまれそうだ」



「うっわ、そうなったら亡命するしか......」



 どんどん声が遠くなっていく。

 結構な情報をとられたことを、あの兵士たちは気づいていないだろう。

 欲を言えばこの取れない首輪の解除方法を知りたいけれど、流石にそれは教えてくれないだろう。



「今回情報として有用だったのは......」



 情報を精査する。

 今回聞けたのは「奴隷の推測はある程度正しい」「召喚は初めてではない」「奴隷にするのはまずい」「この国は戦争で負けている」くらいか。

 これをクリアするために外国に亡命するのもありかもしれない。それもこれも、奴隷というシステムがわかってからにしたいけど。



 そう思っていた時、遠くから大きな声が響いてきた。



「――――く出てこ――」



「おら――――くしろ! 殺され――のか!」



 外を見ると少し遠いところから引きずり出されるようにして一人の男子が連れていかれていた。

 どうやらよくあるファンタジー的な強制力が働いているわけではなく、暴力に耐えかねてしぶしぶといった様子だった。まぁ、自分より体格の良い男二人に、剣を突きつけられて怒鳴られたら誰だってそうすると思う。

 となるとさっきの推測、奴隷のシステムが主人として登録されているのが別の人とかいうものなのか、それとも単純に身分を証明するためだけの首輪で強制力は発生しないのか。そこら辺を知りたいが......行動は起こせない。

 どちらにせよ、騎士に強制的に動かされないならあれができるかもしれない。



 頭の中で綿密に計画を立てる。

 全ては、この世界で生き残るために。











「さて、これくらいか......」



 考えられる可能性をすべて洗い出して、解決策も考えた。

 後は、俺がどれだけ「俺」を演じられるか。そこにかかっていると言っても過言ではない。



「さて、行くか」



 覚悟を決めると、俺はスキルを使用する。

 その声は小さく、しかしどこまでも力強かっただろう。



「『読み込み』」



 瞬間、視界がブラックアウトする。



 これから始まる、長い永い戦いの第一歩だった。
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