12 / 23
第二章
2-5 一難は去らず、また一難だけが積み重なる
しおりを挟む何故か永遠のような拷問が終わりを迎え、視界が戻ってきたとき、そこにあったのは俺一人から出たとは思えない血、血、血。肉が血を放出しきって色を失ってきているのを見て俺は真っ青になる。体のほうは青を通り越して真っ白どころか肉片なんだけど。
俺の体を見たところ、半透明状態だ。つまり肉体は無事ではないってことだ。知ってた。
「『ステータス』」
十時 宗次 lv1 男
職業:死神
HP:0/100
MP1/300
Str:153
Vit:55
Dex:135
Int:137
Mnd:65
Agi:155
SP:0
スキル
大鎌術lv1
固有スキル
死神lv1
ギフト
時間操作lv1
どうやら復活には魔力を消費するらしく、今はこの半透明の体を維持しながら肉体を復活させようとしているようだ。
今も少しずつ魔力が溜まっていくのがわかる。だが、このペースで三分の一って、数時間はかかりそうだぞ......
と思っていたところ、人影が見える。
「十時君! あなたたち、何をしたかわかっているの!」
折原さんが血相を変えて三人に詰め寄る。
後ろから異常な折原さんを追うようにして走ってきたクラスメイトが、俺の肉片と血痕を見て吐き気を催しているよう。数人はすぐにその場を立ち去った。
よく考えたら、俺の肉体がただの肉片になり下ってるんだよな......
「『ヒール』!『ヒール』!」
彼女の両手から光がスッ、と飛び出し、肉体の方へと飛んでいく。しかし、何も起こらない、ステータスにも全く変化はない。
「まさか......死んじゃった......」
絶望に染まる折原さんの表情。彼らもどうせ生き返るから、と攻撃していたが、復活しないと分かるとすぐに慌てだした。
「騎士さん! この三人を捕まえて!」
その顔は真っ暗な闇を進む子供の表情ではなく、どこか光を見ているようだった。
慌てていた彼らも駆けつけた騎士になすすべなく取り押さえられ、引きずられるようにして城の中へと連れ込まれた。
「ねぇ、十時君......早く戻ってきてよぉ......」
そう声をかけられても、まだ魔力が二桁にすら到達していない。声を伝える手段がなければ、すぐに復活する手段もない。俺に出来ることは一刻も早く肉体を復活させる魔力をためること。
「十時君! ああああああああ!!!!!」
温厚で慈悲深く、いつも笑顔の折原さんが、先ほどとは打って変わって絶望に染まり、どこから出したかわからないほどの大きな声で哭いた。
クラスメイトが慰めに行くものの、彼女がそこを離れることはなかった。
服に土がつくことも、血が付くことも厭わずに座り込み、俺の肉片を見つめていた。
そんなに見つめられると、なんだか照れるんだが。とはいっても、どこにも原型がない、血が抜けきった、本当に自分の肉体か怪しい物体なんだけど。
そう思いながら、俺は魔力の回復を待つ。
肉体回復にいくら必要なのかはわからないが、先ほど発動したことや、半透明状態でここにとどめさせられていることを考えるに、復活できないというのはないだろう。
待つ、ひたすら――――と思っていた。
「ねぇ、そこにいるのは十時君?」
泣きつかれて一周回ったのか落ち着いた折原さんの隣に、女子が立ち、肉片ではなく、半透明の俺を見て話しかけてきた。
――――そうだよ、復活には魔力がいるみたいだからまだ復活できてないんだけどね
「あぁ、そうなんですか、だからそこに魂だけでとどめられているんですね」
――――あぁ、今、魂だけなのか
声にしようと思っても、その声は声帯を震わせることも、口から音として放出されることもなかった。なのに、目の前にいる彼女には確かにきこえているようだ。
「私、昔からお化けとか、幽霊とか、そう言ったものが見えてたの。今も目の前に、白い球が浮かんでるのが見えてる。場所的に、十時君かなって。当たっててよかった。あとどれくらいかかりそう?」
とりあえず聞こえているようだ。これで折原さんがこれ以上泣くこともない。助かる。
――――わからない、けど、さっき復活できたから、このペースだと......明日には復活していると思うよ
「わかった。何か、伝えておくことはある? 私は伝えることだけ伝えてもう行くわ」
――――伝えることはないけど、折原さんのケアを頼んでいいか
目がもう死んでいるのを見ると、ここで復活を待つのも苦痛だ。
「それはあなたの仕事。頑張って頂戴」
そう言って、彼女は背を向けてしまった。そういえば名前知らない。暫定的に女子Bと置こう。
とりあえず彼女が折原さんを連れて行ってくれたようで、独りぼっちとなってしまった。折原さんにずっといられるよりは心落ち着くことは間違いないそ、クラスでも一人だったため、別に何か特別な感情が湧くこともない......
暇だし昼寝でもするか、と半透明の体の状態で寝転んだ。
「あら、こんなところに無防備な魂が」
「本当だな。場所的に異世界転移された人のだろう。いるか?」
「えぇ、もらっていきましょう」
何処からか声が。と思っていたら、俺を見下す構図で二人の人――――いや、角が生えた女と男が立っていた。
「さて、もらっていきますか」
三角帽子に大きな杖を持った女性はそう言った。そこで口を開いたのがもう一人の男だ。
「あぁ、そうだ。こいつの肉ももらっていこう。何か面白いことがわかるかもしれない」
そう言った男は体中に機械を纏っていた。角が生えた女と言い、なんだこのペアは。
――――あれ?
気が付いたら、俺の体は瓶の中に入っていた。
「あら、自我があるタイプは相当珍しいのよ。大当たりだわ!」
「そうか、よかったよかった」
収穫が豊作だった、と言ったようなノリで俺の体は持ち去られて行ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
天才王子、引き篭もる……いや、引き篭もれない
戯言の遊び
ファンタジー
平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
辺境に飛ばされた“元サラリーマン王子”、引き篭もるつもりが領地再生の英雄に――!
現代日本で社畜生活を送っていた青年・レオンは、ある日突然、
中世ヨーロッパ風の王国「リステリア」の第五王子として転生する。
怠惰で引き篭もり体質なレオンは、父王により“国の厄介払い”として
荒れ果てた辺境〈グレイア領〉の領主を任される。
だが、現代知識と合理的な発想で領内を改革していくうちに、
貧困の村は活気を取り戻し――気づけば人々からこう呼ばれていた。
『良領主様』――いや、『天才王子』と。
領民想いのメイド・ミリア、少女リィナ、そして個性派冒険者たちと共に、
引き篭もり王子のスローライフ(予定)は、今日もなぜか忙しい!
「平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」
社畜転生王子、引き篭もりたいのに領地がどんどん発展していく!
――働きたくないけど、働かざるを得ない異世界領主譚!
こちらは、以前使っていたプロットを再構成して投稿しています
是非、通学や通勤のお供に、夜眠る前のお供に、ゆるりとお楽しみ下さい
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
筑豊国伝奇~転生した和風世界で国造り~
九尾の猫
ファンタジー
亡くなった祖父の後を継いで、半農半猟の生活を送る主人公。
ある日の事故がきっかけで、違う世界に転生する。
そこは中世日本の面影が色濃い和風世界。
しかも精霊の力に満たされた異世界。
さて…主人公の人生はどうなることやら。
暗算参謀は王国を追放される――戦わずして勝ち続けた男の失脚譚――
まさき
ファンタジー
現代日本から異世界へ転生した主人公。
彼に与えられた唯一の能力は、瞬時にあらゆる数値を弾き出す「暗算」だった。
剣も魔法も使えない。
だが確率と戦略を読み解くことで、王国の戦を幾度も勝利へ導いていく。
やがて王国の戦略顧問として絶大な信頼を得るが、
完璧すぎる功績は貴族の嫉妬を招き、巧妙な罠により不正の罪を着せられてしまう。
証明できぬ潔白。
国の安定を優先した王の裁定。
そして彼は、王国を追放される。
それでも彼は怒らない。
数字は嘘をつかないと知っているからだ。
戦わずして勝ち続けた参謀が、国を去るその日までを描く、
知略と静かな誇りの異世界戦略譚。
転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。
山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。
異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。
その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。
攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。
そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。
前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。
そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。
偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。
チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる