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第二章

2-4 一度は聞いてみたいだろう

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 どうしようか。



「全く考えてないのね」



 女子Bのツッコミが刺さった。



「そういえば、良くこれほどの長時間魂が現世に滞在してるわね、何かのスキル?」



 あぁ、そうなんだ......って、そういえば最近ステータスを確認してなかったな......『ステータス』



 俺は確認していなかったステータスを確認する。



 十時 宗次 lv1 男



 職業:死神



 HP:0/100

 MP4/300



 Str:153

 Vit:55

 Dex:135

 Int:137

 Mnd:65

 Agi:155



 SP:0



 スキル

 大鎌術lv1



 固有スキル

 死神lv2





 ギフト

 時間操作lv1





 ......あれ。



 俺の目線が止まったのは固有スキルの欄。

 俺はこの周回、戦闘という戦闘をしていない。経験値になりそうなことも、大穴でさっき潰された時に経験値が入ったことくらいだ。

 しかし、それにしては早すぎる。



 そう思ったが、そこでいったん思考を遮る。

 とりあえず、効果の確認だ。



 死神lv1



 このスキルを獲得してからlv×30日の間、死ぬことが出来ない。

 lv×30日後、スキル所有者は死ぬ。



 死神lv2



 精神強化

 精神が強くなる。



『―――――』使用可能









 何か隠れている情報があるが、使用可能と言われても使用条件も効果もわからないため何もできない。

 けどまぁ、今の今までこれだけグロい光景を見ても涙一つ流せなかった理由はわかった。



 ――――と、ともあれ。

 俺は情報のすべては語らず、ただ「一定時間後に復活できるスキル」とだけ説明した。



「そう、それならいいわ。いずれ死んだ体も元通りってことなら――――」



 女子Bは少し寂しそうな顔をしたが、やがて元通りとなった。



「何、何なの、私のいないところで話を勝手に進めないでよ!」



 折原さんだけが、訳が分からず頭を抱えているという、なんとも稀有な状況だった。



「それで、結局どうするのよ」



 王城にいるやつらは見捨てる――――そして結果がどうなるか



「結果――――なるほど、確か十時君はラノベをかじるように読んでいたね」



 何がなるほどなのかは、教えてはくれなかった。

 だが、女子Bはとても何か納得したような、そんな表情だった。



「だから、私にも教えてよ!」



 と、ここで折原さんがついに実力行使に至った。

 女子Bの両肩をつかむと、前に後ろに右に左にと揺さぶりまくる。

 これには今までクールな感じを出していた女子Bも、これには耐えられなかったのか「うわわわわああわわわああ」と情けない声をずっと漏らしていた。



 そこまで揺らしたらもっと話せなくなるぞー、と言ってみるものの、まぁ、分かっていたが折原さんには届いていない。

 体ももちろん動かないし......という感じだった。



「うっ......うん、十時君、最後に聞かせて」



 どうしたんだ。



 落ち着いて、そう問われる。



「この戦いに、勝ち筋はあるの?」



 ない、そう即答するのは簡単だった。確かに、戦う相手によれば――――そこら辺の魔物の一体二体程度なら、総がかりで殴るだけでも勝てるだろう。しかし、相手は魔王軍幹部が二人。まぁ、普通に考えたら序盤に戦う相手ではないだろう。

 というか、それを聞いてきた時点で彼女は――――



「まぁ、そこで黙った時点で大体わかったわ。それならここで待ちましょう」



 一応、支援があとで来るんだけど、そのころには内部は全滅なんだよな......



「そう。まぁ、それでもいいわ。クラスメイトの命とどちらを比べるかなんて考えるまでもないもの」



 お、同じ思考の持ち主。

 死んだ後にここまでわかってくれるなら死にやすい。死ぬこと前提にすると動きにくいだろうが。



「ねぇ、それじゃあ私たち、ここでずっと王城が襲われてるのを見てるだけなの?」



 そこに異論を出すのはやはり折原さん。

 わかっていた。これぞまさに彼女が人気な理由だろう。

 何処までも純粋、理論で納得させられても、感情が拒めばしっかりとNOを言える。



 救援が来れば入れる、と伝えてくれ



「十時君が、救援が来るだろうから、それまで待てって」



「救援なんて来るって決まってるわけない!」



 折原さんは叫ぶ。

 俺は未来を知っている、と言えれば良いのだろうが......きっとそう伝えたら、まだ経験してない遥か先――――帰れるか銅貨まで、聞かれるだろう。それにこたえられない以上、その能力は偽物だと糾弾されてもおかしくないと思う。

 確証はない。だが、俺にはどこか確信めいたものがあった。



 そうだな......あ、そうだ。



 ――――――って、言ってくれ



「全く、ふざけて......貸し一つ」



 あぁ、分かったから



 俺は諦めた。もちろん女子Bをこれ以上の条件で言うことを聞いてもらうことをだ。

 貸し一つ、それが何を要求してくるものなのかはわからないが――――



 それにしたがって、女子Bは折原さんへと言い放つ。



「ここを通りたければ、私と十時君を超えていきなさい」

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