魔導戦記マギ・トルーパー

イズミント(エセフォルネウス)

文字の大きさ
14 / 57
第1部 邂逅編

第13話 模擬戦(後編)

しおりを挟む
【Side フェリア】

「ルキアさん、シミュレーターでの模擬戦とはいえ、アルム大尉をあそこまで渡り合えるなんて」

「俺もびっくりだよ。 まさかデバイスを使わせるとはな」

「確か大尉にデバイス使わせたのって、この中じゃカロン君ぐらいじゃない?」

「俺はあれを使われた後は成すすべもなかったんだよ。 ルキアさんはどうなんだろうな」

 私ことフェリア・イスマイールは現在のアルム・クレスト大尉と異世界より飛ばされ、アパタイトに選ばれた影響でアルム小隊に配属になったルキア・フィーブルさんとの模擬戦の流れを見ていた。
 彼女の飲み込みの早さと様々な戦いぶりを見て私は驚いていた。
 ミュリアと違い、接近する時も撃ちながら近づき、距離を取る際もサーベルを投げたりライフルで足を止めておいてから距離を置いたりなど、ミュリアの後だとかなりすごい戦いを演じている。
 しかも、それによってアルム大尉は背中の【マギ・デバイス】を使う事になったようで、これはカロン君以来二人目らしい。
 
 私?
 デバイスを使われる前にあっさりやられましたよ、悪いですか?

『流石のマスターでもアルムさんのデバイス攻撃には回避しきれてませんね。 4機のうち2機は躱してますがね。 それだけアルムさんのデバイスの操り方はかなりの達人クラスだと思われます』

 アパ子ちゃんからそう言ったのだが、それでも2機のデバイスからは回避しているのは流石としか言いようがない。
 カロン君は成すすべもなくやられたわけだから、それを何とか保たせているだけでも私達よりもすごいんじゃって思う。
 後はメンタル面だと思うが、そこは戦場に出てからなのかもしれないけど。

「おい、デバイスを撃ち落としたぞ!?」

「ええっ!?」

『ライフルでデバイスを撃ち落とすとか、マスターは前の世界でどんな戦いをしてたんでしょうか……』

 色々な事を考えてた私に、カロン君の言葉で我に返った。
 何とアルム大尉の4機のデバイスの内の2機をライフルで撃ち落としたのだ。
 目が慣れて来たのか動きに何かを掴んだのか、2機のデバイスを撃ち落とせるようになるなんて。
 アパ子ちゃんも言ってたけど、前の世界ってどんな相手と戦ったのかな……?

 そう思いながら、私はこの模擬戦を見届けていた。

◇◇◇◇◇◇◇◇

【Side ルキア】

(ダメだ! 目では追えても……!)

 デバイスを出された当時はそう感じた。
 4機のデバイスが不規則にかつ、速いスピードで動くから2機のデバイスは回避できても、いつの間にか2機のデバイスに後ろを取られて攻撃を受けるパターンを繰り返していた。
 背中に伝わる振動に思わず苦痛に顔を歪める私。
 それだけアルムのデバイスの操作は、達人級と呼んでもいいレベルだ。
 そのため、オーブに添えている手にも、そして全身にも冷や汗が止まらなかった。

(このままじゃジリ貧だわ。 イチかバチかだけど……使い魔攻撃を対処したやり方をやってみるか)

 デバイスの動きと、私のいた世界で相対した使い魔を操る相手とはスピードも違うだろう。
 だが、賭けとして私は前の世界でやった魔法で使い魔を撃ち落として戦いやすくするというやり方をライフルを使う形でやってみる事にした。

 デバイスの攻撃を回避し、もう一度距離を取った後にもう2機のデバイスがこちらに牙を剥く。
 そこを逆に狙う。

「今ッ!!」

『何っ!?』

 デバイスに向けてライフルを連射し、何とか2機のデバイスを撃ち落とした。
 それを見て驚いたようなアルムの声を聴いた。
 ひとまず2機減らせたが、それ以上にこっちのエネルギーがすでに半分を下回っていた。
 シミュレーターの模擬戦ではこのエネルギーがなくなれば試合終了となり、負けになる。

「手は休めない! このまま仕掛ける!!」

『くっ、今度はバルカンとライフルの複合か!』

 エネルギーも段々減ってきているし、まだデバイスは2機残っている。
 手を休める暇はないので、私はこのまま【アイスニードルバルカン】を撃ち、さらにライフルも撃ちながら接近する。
 アルムも距離を取られまいと不規則に動いているが、バルカンの攻撃とライフルの攻撃は出来るだけギリギリ掠めるかのレベルで撃っているので上手く動けないようだ。
 だが、向こうもただではやられず、残りの2機のデバイスを防御に使いつつ、ライフルなどでやり返している。
 なのでこっちも上手く攻めていけないのだ。

(エネルギーも少ないけど、こうなれば……)

「ブーストッ!!」

『なっ!?』

 サーベルを手にし、バルカンを撃ちながらカロン軍曹から教えられたブースト機能を使い、一気に距離を詰める。
 まさか1日足らずでブースト機能を使う事が出来た事に驚いたのか、アルムの動きは固まった。

「ここだぁぁぁっ!!」

 サーベルに魔力を乗せ、私はコクピット部分を狙って刺突しようとする。

『なんとぉぉぉ!?』

 アルムもサーベルで阻止しようと仕掛ける。
 ある意味刺し違いに持っていくような形だが、エネルギーが減っている今はこれしかないのだ。
 私のサーベルとアルムのサーベルは、同じタイミングで突き刺さる。

「うぐっ!?」

 刺される際も振動があるため、顔を歪めた。
 だが……。

「やっぱりわずかにダメだったかぁ……」

 エネルギーがなくなり、模擬戦終了の文字が浮かび上がる。
 対してアルムは辛うじてエネルギーが残ってたようだ。

 やはりデバイスを出してきた時に避けきれなかったのが分かれ目になったのだろう。
 ただ、外のフェリア軍曹たちは拍手で私を出迎えていた。

「惜しかったですけど、初めての模擬戦で大尉をあそこまで追い込むのはすごいですよ!」

「全くだ。 デバイスを撃ち落とすなんて芸当、大尉の動かし方を見たら出来るもんじゃないと思ったけど」

「うう、私も頑張らないと……」

 フェリア軍曹、カロン軍曹、ミュリア軍曹がそれぞれ私にこう言ってくれた。
 そういやミュリア軍曹はあっさりアルムにやられたんだっけ。

「ルキア、模擬戦とはいえここまでやれるのは流石だったぞ」

「アルム大尉」

「ここまで追い込められたのは久しぶりだったしな。 後は戦場で自信をつける事だな」

「はい!」

 アルムからもこう言ってくれた私は今後につながるものだと割り切り、笑顔で応えた。
 さて、水浴びでもしないと……冷や汗掻いたから服がグッショリなのよねぇ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...