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第1部 邂逅編
第14話 それぞれの動向
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【side ???】
「ぐぬぬ……、連合軍め!」
「まさか、『ゲート』から出てきたあの娘をサリエル殿下のパーツごときに先を越され、さらには奴の隊に組み込むとは……!」
「連合軍の奴らは我々を敵視している上、国王も我々に不快感を示しておられるからな……」
「このままでは、我々は追われてしまうぞ」
「国を帝国に売ってでも、武力を使うなどもっての他なのに……! 軍事権利がまだ国王にあるせいで……!」
王城内にあるどこかの部屋に複数の老人達が焦った様子で色々と話をしていた。
その老人達の中心にいる大臣のアーリントン・カバルが歯ぎしりしながら、連合軍を恨むように呟き、後に続くように他の老人達も怒りを口にした。
彼らは、かつての王族だった男で、今は連合軍の大尉の階級を持つアルム・クレストを他の王族と比較して能力が低かった事で、無能と断じて、さらには天才的な能力を持つ兄サリエル王子のパーツ扱いをしていた。
彼らにとって、そのパーツ扱いをした男がいる連合軍に『ゲート』から現れた女性のルキア・フィーブルを確保されて以来、上手く物事が進まない事に焦りを感じだしたのだ。
だが、老人達は気を失っているルキアを何としても帝国に身売りしようと試みたが、見張りが厳しくそれを成せなかったのだ。
「しかし、あの娘が我々にとっての懸念の対象である【オーパーツ】を動かせるとはな……!」
「それ故にもう一度あの娘を眠らせて、帝国に身売りしようと考えたが、軍に属させるとは……!」
元々、連合軍とアーリントン大臣達は敵対している存在。
今の魔王軍や帝国軍の動きを見ても尚、武力を使う事を反対し、話し合いをすべしという主張をしている。
それが叶わぬなら、帝国に国を売る事も辞さない売国思想も持っていた。
故に連合軍からはアルムの件もあって相容れぬ存在として敵対、国王や王妃に至っては秘密裏に大臣達を処分しようと動いている。
言ってしまえば八方塞がりなのだ。
「例の起動兵器とそれを整備する技師達をも帝国に売った事がバレれば、我々は確実に処分される!」
「最悪、無理やりにでも軍を解体させねばならんか……!」
アーリントン大臣を始めとした老人達は、とんでもない暴挙を考える位しか出来ない程に、詰んでいたのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
【Side オライオン帝国】
一方でオライオン帝国の城内では、帝国の大臣と現在の皇帝であるキスク・グラム・オライオンがこの間の件について話をしていた。
「あの【オーパーツ】を動かした者がいるだと?」
「ええ、ファシナシオン王国の大臣がこちらにこっそり流した内容ではそうらしいです」
「確かにあそこの近くに『ゲート』が一時現れたのは聞いていたが……その娘はおそらく【オーパーツ】を動かす為に召喚された可能性が高いな」
「しかし、ファシナシオン連合軍にそのような事が可能な者はいないはず……」
「いや、神なら可能だろう」
「この世界を見守る神……ですか?」
「ああ。 余計な事をしてくれたものよ」
キスクはこの世界を創ったとされる神がルキアを召喚したのではという事を予想しつつ、その神の行為に不快感を滲ませていた。
この男の目的は、帝国による世界征服と世界の管理。
これを成すためには、神の存在も邪魔という事なのだろう。
「現在の魔王軍との戦いはどうなっている?」
「魔王軍に対しては、わが軍のMGT部隊による活躍で大半の魔王軍部隊を壊滅させています。 ですが、目下の問題はファシナシオン連合軍でしょうね」
「奴らの根城で保管していたあの【オーパーツ】が動き、真の意味で連合軍の管理下になったのだ。 我としては到底許されん事だ」
全てのMTGは帝国の物だと言い放っただけあって、キスクにとってオーパーツがファシナシオン連合軍の管理下になった事は到底許されない事のようだ。
それを聞いた大臣も察したようだ。
「では……?」
「【オーパーツ】とそれを操る娘を確保するのだ。 他は殺してもいいが、その娘だけは殺してはならん」
「使い道があるからですね? 分かりました。 軍にも伝えておきましょう」
「うむ、頼むぞ」
「はっ!」
ルキア捕獲命令を出し、それを軍に伝えるために大臣が部屋から出ていく。
そして、一人残ったキスク皇帝はワインを片手にこう独り言ちた。
「世界が我が帝国の下で管理できるようにするには、あの【オーパーツ】が必要なのだ。 娘共々、何としても手に入れるぞ」
ニヤリとしながら赤ワインを飲むキスク。
だが、それが叶わぬ野望だという事はこの時点で知る由はなかったのだった……。
「ぐぬぬ……、連合軍め!」
「まさか、『ゲート』から出てきたあの娘をサリエル殿下のパーツごときに先を越され、さらには奴の隊に組み込むとは……!」
「連合軍の奴らは我々を敵視している上、国王も我々に不快感を示しておられるからな……」
「このままでは、我々は追われてしまうぞ」
「国を帝国に売ってでも、武力を使うなどもっての他なのに……! 軍事権利がまだ国王にあるせいで……!」
王城内にあるどこかの部屋に複数の老人達が焦った様子で色々と話をしていた。
その老人達の中心にいる大臣のアーリントン・カバルが歯ぎしりしながら、連合軍を恨むように呟き、後に続くように他の老人達も怒りを口にした。
彼らは、かつての王族だった男で、今は連合軍の大尉の階級を持つアルム・クレストを他の王族と比較して能力が低かった事で、無能と断じて、さらには天才的な能力を持つ兄サリエル王子のパーツ扱いをしていた。
彼らにとって、そのパーツ扱いをした男がいる連合軍に『ゲート』から現れた女性のルキア・フィーブルを確保されて以来、上手く物事が進まない事に焦りを感じだしたのだ。
だが、老人達は気を失っているルキアを何としても帝国に身売りしようと試みたが、見張りが厳しくそれを成せなかったのだ。
「しかし、あの娘が我々にとっての懸念の対象である【オーパーツ】を動かせるとはな……!」
「それ故にもう一度あの娘を眠らせて、帝国に身売りしようと考えたが、軍に属させるとは……!」
元々、連合軍とアーリントン大臣達は敵対している存在。
今の魔王軍や帝国軍の動きを見ても尚、武力を使う事を反対し、話し合いをすべしという主張をしている。
それが叶わぬなら、帝国に国を売る事も辞さない売国思想も持っていた。
故に連合軍からはアルムの件もあって相容れぬ存在として敵対、国王や王妃に至っては秘密裏に大臣達を処分しようと動いている。
言ってしまえば八方塞がりなのだ。
「例の起動兵器とそれを整備する技師達をも帝国に売った事がバレれば、我々は確実に処分される!」
「最悪、無理やりにでも軍を解体させねばならんか……!」
アーリントン大臣を始めとした老人達は、とんでもない暴挙を考える位しか出来ない程に、詰んでいたのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
【Side オライオン帝国】
一方でオライオン帝国の城内では、帝国の大臣と現在の皇帝であるキスク・グラム・オライオンがこの間の件について話をしていた。
「あの【オーパーツ】を動かした者がいるだと?」
「ええ、ファシナシオン王国の大臣がこちらにこっそり流した内容ではそうらしいです」
「確かにあそこの近くに『ゲート』が一時現れたのは聞いていたが……その娘はおそらく【オーパーツ】を動かす為に召喚された可能性が高いな」
「しかし、ファシナシオン連合軍にそのような事が可能な者はいないはず……」
「いや、神なら可能だろう」
「この世界を見守る神……ですか?」
「ああ。 余計な事をしてくれたものよ」
キスクはこの世界を創ったとされる神がルキアを召喚したのではという事を予想しつつ、その神の行為に不快感を滲ませていた。
この男の目的は、帝国による世界征服と世界の管理。
これを成すためには、神の存在も邪魔という事なのだろう。
「現在の魔王軍との戦いはどうなっている?」
「魔王軍に対しては、わが軍のMGT部隊による活躍で大半の魔王軍部隊を壊滅させています。 ですが、目下の問題はファシナシオン連合軍でしょうね」
「奴らの根城で保管していたあの【オーパーツ】が動き、真の意味で連合軍の管理下になったのだ。 我としては到底許されん事だ」
全てのMTGは帝国の物だと言い放っただけあって、キスクにとってオーパーツがファシナシオン連合軍の管理下になった事は到底許されない事のようだ。
それを聞いた大臣も察したようだ。
「では……?」
「【オーパーツ】とそれを操る娘を確保するのだ。 他は殺してもいいが、その娘だけは殺してはならん」
「使い道があるからですね? 分かりました。 軍にも伝えておきましょう」
「うむ、頼むぞ」
「はっ!」
ルキア捕獲命令を出し、それを軍に伝えるために大臣が部屋から出ていく。
そして、一人残ったキスク皇帝はワインを片手にこう独り言ちた。
「世界が我が帝国の下で管理できるようにするには、あの【オーパーツ】が必要なのだ。 娘共々、何としても手に入れるぞ」
ニヤリとしながら赤ワインを飲むキスク。
だが、それが叶わぬ野望だという事はこの時点で知る由はなかったのだった……。
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