魔導戦記マギ・トルーパー

イズミント(エセフォルネウス)

文字の大きさ
44 / 57
第2部 激戦編

第43話 エマージェンシーシステム

しおりを挟む
【side ルキア】

「え、エマージェンシーシステムって……きゃあっ!?」

 コンソールから発したとされる無機質な音声に戸惑っているうちに、アパタイトが強制的に動き出した。
 キャノン砲の直撃による私の身体へのダメージを無視して、とんでもないスピードで緑の機体……フォレストグリーンに迫る。

『がっ!?』

 突如の事で対応できなかったのか、フォレストグリーンは攻撃を受けて吹き飛ばされていく。

「な、何よこれ!? 操縦が受け付けない!? うぐっ、急に身体が、魔力が……!」

 どういう訳か、急に魔力が吸われる感覚に陥り、身体に倦怠感が出始めた。

『うぅ、ま、マスター……?』

「アパ子、これはどういう事!? エマージェンシーシステムって何!?」

 その時、アパ子が意識を取り戻したので聞いてみたが、私自身がパニックになっているのもあってか、上手く言えないでいる。
 そうしている間にも、今のアパタイトはフォレストグリーンに対し、的確に狙っている。
 フォレストグリーンも辛うじて回避したり、カタナでサーベルを防いだりしているようだ。

『え? エマージェンシー……システム……? どういう事ですか?』

「キャノン砲の直撃を受けて、私がつれ去られる恐怖を感じた瞬間に起動したの! 操縦が一切受け付けず、身体も怠いのよ……!」

『え!? まさか……』

 アパ子がそう言いながらコンソールを見る。
 あの様子だと、子機であるアパ子も知らないものだとでも……!?

『そんな! マギ・ブーストシステムも発動してる!? これもエマージェンシーシステムの影響ですか!?』

「そ、そうよ! ご覧の通りに操縦が効かないから、システムが勝手に私の魔力を吸って……! うぅ、このままじゃ魔力切れに……」

『マスター!』

『ルキア! アパ子! どうしたんだ!?』

 アパ子でも知らなかったエマージェンシーシステムに混乱している時にアルムが声を掛けてきた。

「アルム! い、今のアパタイトから離れて……!」

『どういう事だ!?』

「エマージェンシーシステムが発動して、操縦が受け付けないの! 今はフォレストグリーンが敵性判定で勝手に攻撃してるけど、近くにいたら下手すれば貴方も……!」

『くっ、わ、分かった……』

 何とか今のアパタイトから離れてもらった。
 だが、フォレストグリーンは今のアパタイトの攻撃にさらされても引く気配がない。

『どうやらシステムとやらが勝手に動いてるようだな。 なら、時間を稼げば動きが止まるはずだ』

『テッタイノケハイナシ。 ビームサーベルシヨウスル』

『え!?』

「ビームサーベル!?」

 エマージェンシーシステムがビームサーベルを解禁し、フォレストグリーンのコクピットを狙った。

『う、うおおぉぉぉっ!?』

「くっ、フォルス……!」

 操縦が受け付けない中で、私はビームサーベルの攻撃を受けるフォルスを見ている事しか出来ないのであった。

◇◇◇◇◇◇◇◇

【side クラウド艦長】

「何が起こっている!?」

「アパタイト、突如青く光ったままフォレストグリーンに突撃し、ビームサーベルも使った模様!」

「何だと!?」

 私ことクラウド・フェルバッハは、直撃を受けて損傷したアパタイトが青く光ったまま立ち上がり、そのまま帝国のMGTである指揮官機フォレストグリーンに突撃し、さらにビームサーベルで攻撃をしていた光景に衝撃を受けていた。
 今のルキア嬢が、アルム大尉の許可なしでビームサーベルを使うのはあり得ない。
 報告をしたオペレーターの少女も動揺している。
 何があったと言うのだ!?

『こちらアルム!』

「アルム大尉、何があったんだ!? 今のアパタイトに何が!?」

『アパタイトにエマージェンシーシステムなるものが搭載されていたらしく、現在ルキアの操縦を受け付けない状態……、いわばシステムが勝手に動いている状態なんだ』

「ええっ!?」

「何と……!」

『ちなみにこのシステムは、子機であるアパ子も知らないらしい』

 まさかアパタイトにそんなものが搭載されていたとは……!
 いや、アパタイトが【オリジネイター】で操縦者を選ぶのなら、搭載されていても不思議ではないが、子機であるアパ子君すら知らないとなると、子機には記憶していないブラックボックスなのか?

「フォレストグリーンは?」

「生存しています。 辛うじてコクピットへの直撃を避けた模様ですが、損傷は激しいようです」

『くっ、この状態では時間稼ぎすら出来んか! 撤退だ! だが、必ずオーパーツを我が帝国の手に取り戻す!』

「ファシナシオン王国内で発見されたものだというのに……よく言う」

 オペレーターの少女がフォレストグリーンがビームサーベルの直撃を避けたが損傷は激しいと伝えてくれた。
 だが、撤退間際にフォルス・ノーヴァーが相も変わらずアパタイトを帝国のモノだと言わんばかりの発言をしていた事に内心腹を立てていた。
 アパタイトが発掘された場所はファシナシオン王国内なのだがね。

「フォレストグリーンならびに残りの帝国軍のMGTが撤退していきます」

「ルキア嬢、アパタイトは?」

『撤退した直後、システムが停止し今は操縦できます。 マイア王女も無事です』

「分かった。 全機帰還してくれ。 ルキア嬢とマイア王女は帰還したらすぐに医務室に行くように」

『分かりました』

「ハッチ、早く開くの!」

「は、はい! ハッチ開きます!」

 格納庫に繋がる着艦口のハッチを開かせ、全機が続けて艦内の格納庫へ向けて着艦していく。
 アパタイトやマイア王女の機体は、損傷が激しいが二人はひとまず無事だったのは幸いか。
 念のため医務室に向かうように指示は出しておいたし、私も格納庫に向かうとしようか。
 エマージェンシーシステムという未知のシステムについて調べないといけないからな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...