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第2部 激戦編
第56話 それぞれの動向③
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【Side オライオン帝国】
「まさか、戦艦にあのような武装が……」
「ええ、まさか我々もそのようなものがあるとは思いませんでした」
オライオン帝国では、皇帝キスクが自身の別邸で部下からの報告を受けて顔を歪めた。
彼らにとって戦艦に【マギ・バスターキャノン】という強力な主砲が搭載されているなど思わなかったのだ。
「一応、ゼネアと言う魔女がその戦艦を足止めしたようですが、既に同型艦が動いており、他国からも同様の戦艦が出航するのは時間の問題かと」
「ぐぬぬ……、連合軍め!」
何とかゼネア・ベルベットが最初の戦艦を足止めしたようだが、既に同型艦が発進しているので進軍に影響はなく、それどころか他国からも戦艦が出航される可能性があると聞き、さらにキスクは顔を歪める。
報告した部下も同様だった。
「奴らは?」
「その同型艦に乗ってロゼッタ魔法国のある方向に向かったようです」
「そうか。 【アレ】の準備はどうだ?」
「まだ時間がかかるようです。 ロゼッタ魔法国方面へは他の指揮官クラスの者を差し向けるべきかと」
「そうするしかないな。 マギアクリスタルの確保が難しくなるが」
キスクはひとまず【アレ】を実行しようとするが、部下はまだ時間がかかるとの事なので、他の指揮官クラスを差し向けるべきと提言し、キスクはそれを受け入れた。
「【アレ】を実行するには大量の生命エネルギーが必要だからな。 時間が掛かるのも仕方がないか」
「そうですね。 幸い逃げ遅れた第二皇女を例の場所で確保しておりますが、本当に【アレ】をそこで実行なさるおつもりで?」
「ああ、あそこは500年前、我が帝国の元であったオライオン公国の首都だった場所だ。 現在は帝都が今の場所に移った事で、境界線ギリギリの辺境エリアになってしまったがな」
「500年前……なるほど」
確保者の生命エネルギーが必要な【アレ】を実行する場所として、今の辺境エリアを選択したキスクを部下は問いただした。
キスク曰く、その場所は500年前は前身のオライオン公国の首都だった場所であるようだ。
それを聞いた部下はすべてを察したようだ。
そこに逃げ遅れた第一皇子一派の一人である第二皇女を確保しているようだった。
「準備が出来次第、私もそこへ向かう。 念のための生贄の多数の確保をしておいてくれ。 生命エネルギーの抽出は生贄の死をもってでしか抽出できないからな」
「わかりました!では、私はこれで」
そう言って部下は、別邸から出ていく。
「オーパーツを我が手に取り戻し、世界を帝国の下で管理せねば、10年前の繰り返しぞ」
そう言いながら、キスクは別邸からかすかに見える歪な石の山の頂を見つめていた。
「その為にはいかなる手段も選ばん。 魔族も全て帝国が管理してこその真の平和だ」
そう決意したキスクは、【アレ】の実行場所である辺境の地へ向かう準備をし始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【Side フィーアクロイツ共和国】
「ここが貴方の新たな家です」
「ありがとうございます」
一方で、フィーアクロイツ共和国の首都では、ルキアと同じくこの【マナトピア】の世界に飛ばされた魔女のアリシア・フェルディナンドが連合軍の兵士に案内された一軒家に入る所だった。
彼女は魔王軍七大幹部の【変化】のモーシャス戦で起きた事がきっかけで、戦う意思を失ってしまったのだ。
そのため、戦艦フィールラスクスを降りてこの首都で過ごすことを選んだのだ。
「首都内であれば自由に動くことができます。 仕事も紹介できますので、遠慮なく伝えてくださいね」
「はい、ご迷惑をおかけしました」
「では、私はひとまずここで失礼します」
女性の兵士がアリシアにそう挨拶して去っていった。
アリシアもそのまま一軒家に入り、鍵を掛けてから二階のベッドに飛び込む。
「あんなのが現実だなんて……私は……」
未だに納得いかない内容が、しかしこの【マナトピア】では現実として実在する内容が彼女を押しつぶす。
彼女やルキアがいた世界の洗脳術とこの世界の洗脳術は仕組みが違うのだ。
只のマインドコントロールだと思っていたアリシアは、当時のクラウド艦長の命令に反論した。
しかし、マイア・ロゼッティアと名乗るロゼッタ魔法国の王女から聞かされたこの世界の洗脳術の内容にショックを受け、戦意を失った。
暫く個室に引きこもったが、どうしようもない状態だったので、これを機に彼女を艦から下ろし、首都で生活させることにしたのだ。
「私は……ルキアやリーゼみたいに……割り切れない……」
アリシアはベッドの上で涙を流した。
彼女に向けて徐々に魔の手が迫ることを知らずに……。
「まさか、戦艦にあのような武装が……」
「ええ、まさか我々もそのようなものがあるとは思いませんでした」
オライオン帝国では、皇帝キスクが自身の別邸で部下からの報告を受けて顔を歪めた。
彼らにとって戦艦に【マギ・バスターキャノン】という強力な主砲が搭載されているなど思わなかったのだ。
「一応、ゼネアと言う魔女がその戦艦を足止めしたようですが、既に同型艦が動いており、他国からも同様の戦艦が出航するのは時間の問題かと」
「ぐぬぬ……、連合軍め!」
何とかゼネア・ベルベットが最初の戦艦を足止めしたようだが、既に同型艦が発進しているので進軍に影響はなく、それどころか他国からも戦艦が出航される可能性があると聞き、さらにキスクは顔を歪める。
報告した部下も同様だった。
「奴らは?」
「その同型艦に乗ってロゼッタ魔法国のある方向に向かったようです」
「そうか。 【アレ】の準備はどうだ?」
「まだ時間がかかるようです。 ロゼッタ魔法国方面へは他の指揮官クラスの者を差し向けるべきかと」
「そうするしかないな。 マギアクリスタルの確保が難しくなるが」
キスクはひとまず【アレ】を実行しようとするが、部下はまだ時間がかかるとの事なので、他の指揮官クラスを差し向けるべきと提言し、キスクはそれを受け入れた。
「【アレ】を実行するには大量の生命エネルギーが必要だからな。 時間が掛かるのも仕方がないか」
「そうですね。 幸い逃げ遅れた第二皇女を例の場所で確保しておりますが、本当に【アレ】をそこで実行なさるおつもりで?」
「ああ、あそこは500年前、我が帝国の元であったオライオン公国の首都だった場所だ。 現在は帝都が今の場所に移った事で、境界線ギリギリの辺境エリアになってしまったがな」
「500年前……なるほど」
確保者の生命エネルギーが必要な【アレ】を実行する場所として、今の辺境エリアを選択したキスクを部下は問いただした。
キスク曰く、その場所は500年前は前身のオライオン公国の首都だった場所であるようだ。
それを聞いた部下はすべてを察したようだ。
そこに逃げ遅れた第一皇子一派の一人である第二皇女を確保しているようだった。
「準備が出来次第、私もそこへ向かう。 念のための生贄の多数の確保をしておいてくれ。 生命エネルギーの抽出は生贄の死をもってでしか抽出できないからな」
「わかりました!では、私はこれで」
そう言って部下は、別邸から出ていく。
「オーパーツを我が手に取り戻し、世界を帝国の下で管理せねば、10年前の繰り返しぞ」
そう言いながら、キスクは別邸からかすかに見える歪な石の山の頂を見つめていた。
「その為にはいかなる手段も選ばん。 魔族も全て帝国が管理してこその真の平和だ」
そう決意したキスクは、【アレ】の実行場所である辺境の地へ向かう準備をし始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【Side フィーアクロイツ共和国】
「ここが貴方の新たな家です」
「ありがとうございます」
一方で、フィーアクロイツ共和国の首都では、ルキアと同じくこの【マナトピア】の世界に飛ばされた魔女のアリシア・フェルディナンドが連合軍の兵士に案内された一軒家に入る所だった。
彼女は魔王軍七大幹部の【変化】のモーシャス戦で起きた事がきっかけで、戦う意思を失ってしまったのだ。
そのため、戦艦フィールラスクスを降りてこの首都で過ごすことを選んだのだ。
「首都内であれば自由に動くことができます。 仕事も紹介できますので、遠慮なく伝えてくださいね」
「はい、ご迷惑をおかけしました」
「では、私はひとまずここで失礼します」
女性の兵士がアリシアにそう挨拶して去っていった。
アリシアもそのまま一軒家に入り、鍵を掛けてから二階のベッドに飛び込む。
「あんなのが現実だなんて……私は……」
未だに納得いかない内容が、しかしこの【マナトピア】では現実として実在する内容が彼女を押しつぶす。
彼女やルキアがいた世界の洗脳術とこの世界の洗脳術は仕組みが違うのだ。
只のマインドコントロールだと思っていたアリシアは、当時のクラウド艦長の命令に反論した。
しかし、マイア・ロゼッティアと名乗るロゼッタ魔法国の王女から聞かされたこの世界の洗脳術の内容にショックを受け、戦意を失った。
暫く個室に引きこもったが、どうしようもない状態だったので、これを機に彼女を艦から下ろし、首都で生活させることにしたのだ。
「私は……ルキアやリーゼみたいに……割り切れない……」
アリシアはベッドの上で涙を流した。
彼女に向けて徐々に魔の手が迫ることを知らずに……。
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