くるり☆ショータイム!

イズミント(エセフォルネウス)

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第1部 幼馴染ざまぁ(?)編

006 いきなりの屋上退避(久留里視点)

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「えっ!?」

「ちょっ、九条さん!?」

(あっ、しまった! 彼は……)

 僕は、翔太君が幼馴染に暴力を振るわれた事によって恐怖症に近い女性不信になったという話を聞いたばかりなのに、彼を抱きしめていた。
 無意識だったとはいえ、僕が翔太君を抱きしめた事に七海ちゃんと圭太君は驚いていた。
 しかし、翔太君は拒絶反応を見せなかった。
 僕は大丈夫な女性の一人になったのだろうか?

「ごめん、翔太君。 僕、今の話を聞いたらたまらず……」

「いや、九条さんに触れられても大丈夫だったし、むしろ義妹と同じ優しさと温もりを感じたよ」

「それならよかった……って、義妹?」

 翔太君が大丈夫だったのを聞いて安心したんだろうけど、『義妹』という言葉に少し引っかかった。
 
「それなんだが、もうすぐ昼休みが終わりそうだし、トイレを済ませてから教室に戻ろう」

「もうそんな時間かぁ」

 色々話しているうちにどうやら昼休み終了の10分前の時間になっていたみたいだ。
 圭太君や七海ちゃんのいうように、先にトイレを済ませてから教室に戻ったほうがいいだろう。
 そう思っていたが……。

「ああ、ここにいましたか」

「あれ、先生?」

 屋上にまさかの担任の初芝はつしば 勇気ゆうき先生が現れた。
 なんか疲れ切ったような様子だったみたいだけど……?

「どうしたんですか?」

「実は今後の授業は取りやめて、君達以外のクラスの生徒を説教するための時間になるのですよ」

「何でです?」

「ひょっとして僕のせいですか?」

「いえ、九条さん人気に乗った男子生徒たちと止めようとした女子生徒たちの言い争いがかなり酷いと聞いたので」

「ああ……、三限目でも九条さんトイレに行きたかったのに他の男子に邪魔されたんだよな」

 まさかの授業取りやめで、今屋上にいる僕と七海ちゃん、圭太君と翔太君以外のクラスのみんなを説教する時間になったみたいだ。
 あんな形でエスカレートしていたら苦情がくるのは必然だったんだろうね。
 屋上へ続く階段付近まで罵声が響いてたからね……。

「そんなわけで、君達のカバンと先生からの飲み物を渡しておきます。 トイレは三階の階段近くのトイレを使うようにしてください」

「わかりました」

「では、私もこれから説教しに教室に戻ります」

「お疲れ様です」

「やりすぎないようにしてくださいね。 ちょっとした異変があるとすぐに通報される時世ですから」

「もちろんですよ」

 先生は僕達のカバンと飲み物を渡し、すぐに教室へ戻っていった。

「えらいことになったね」

「まぁ、僕的にはあんな言葉の暴力が飛び交う地獄が起これは必然だと思うけどね」

「確かにな。 さて、さっさとトイレに行くか」

「あ、私も」

「僕も」

 僕達四人は、予定外な出来事でトイレを済ませた後で屋上で自習することになったのだ。
 しかし、転校初日でこれは流石に酷いよねぇ。

 なお、この後の話だけど、僕達が翔太君の過去に関する話をしながら屋上で過ごしている傍らで、僕が入ったクラスの大半の男女が放課後まで休みなしの説教、その後教室の大掃除をしたんだとか。
 どうも、僕が屋上に行った時に罵声だけじゃなく机や椅子がめちゃめちゃになり、さらにはガラスが割れるという大惨事が繰り広げられていたようだった。

 一応、説教途中でもトイレに行かせてはもらえるはずだったのだが、他の先生同伴で行かないとだめらしく、それが嫌でずっと我慢していた生徒が……特に女子が多かった。
 そのため、僕達が下校する時には多くの女子が全ての女子トイレに並んでいたようだった。

 なお、この話は放課後に副担任の女性の先生から聞いた話であるという事を付け足しておこう。

 帰りにでも機会があったら『義妹』の事とか、親戚のヨッシーの事とか色々聞いてみようかな?
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