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【第二章】ユウカ・バーレン
【第四話】告白③
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「おはよう…………」
ユウカが起きてきたのは、アベルトが家を出てから約40分ほど経ってからのことだった。
時間で言えば、6時を少し回ったくらい。
恭司は生唾をゴクリと飲み干した。
少し緊張する。
「あれ…………?お父さん、もう出てったんだね。相変わらず慌しいなぁ…………」
ユウカは眠そうに目を擦りながら、半覚醒状態で欠伸混じりにそう呟いた。
恭司はそんなユウカに対し、ついつい目を背けてしまう。
昨日のアベルトとの会話で、ユウカは恭司が普通の一般人でなかったことに気づかされたはずだ。
恭司からすれば、まるでユウカを騙していたような気分になる。
正直、後ろめたかった。
「恭司もいつもより早いね。何時頃に起きたの?」
しかし、
ユウカは恭司の心情を知ってか知らずか、完全に普段通りの声でそう話しかけてきた。
緊張感は…………全くこれっぽっちも感じられない。
まるでいつも通りだ。
だが、
そこは敢えて合わせようと無理をしているのかもしれない。
恭司は慎重に頷いた。
「…………だ、大体5時頃かな…………」
少し出だしで詰まってしまった。
ユウカは恭司の様子を見て、頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。
恭司としては、苦笑いで返すしかなかった。
「へぇー、そうなんだ。早く起きるのはいいことだよね。私も普段は早寝早起きの良い子なんだけど、昨日はなんか夜中にお父さんから話があるって言われてね。けっこう夜遅くまで寝かせてくれなかったんだよ…………」
ユウカはそう言いつつ、冷蔵庫までノロノロと歩いていき、アイスのコーヒーパックを取り出した。
恭司の頬に、冷や汗がゆっくりと伝う。
アベルトは、ユウカに確かに話をしたのだ。
別に疑っていたわけではないが、残念ながら、これに間違いは無かったようだ。
「…………どんな話を聞かされたんだ?」
恭司は再度詰まらないよう、慎重に尋ね返す。
内容ならもちろん知っているが、ユウカの反応を見たかった。
なんせ、つい最近までずっと一緒にいた男が、常軌を逸した最悪の殺人鬼だと判明したはずなのだ。
普通は怖くて眠れない。
「んー、眠かったし…………何を言ってたのかイマイチ覚えてないなぁ…………。確か恭司に関することだった気がするよ」
「………………」
軽かった。
思っていた何倍も軽く、アバウトだった。
アベルトは確かに、ユウカはそんなことで臆する人間じゃないとは言っていたが…………臆する臆さない以前に話をあまり聞いていない。
恭司はそれでもとかぶりを振ると、表情を整える。
恭司にとって、ユウカはあらゆる面で大切な人物だ。
嫌われたくない。
だが、
これはアヤフヤなままにしてはいけない話だ。
「その内容…………さすがに少しくらいは覚えているだろう?アベルトさんは俺について、どういうことを話していたんだ?」
「ん?えーっとねー、えーと…………」
ユウカは首を捻りながら、自分と恭司の二人分のアイスコーヒーの用意を始めた。
パックからコップ2つにそれぞれ注ぎ、机に置く。
思い出すことより喉の渇きを何とかする方が優先順位が高いのか、ユウカは恭司の隣に座ると、答えを返す前に両手でコップに手を添えてゴクゴクと飲み始めた。
対応は適当だし、座る席もまさかの隣だ。
隣に座ること自体はいつも通りだが、警戒心が無さすぎる。
恭司は徐々に、気を使っているのが馬鹿らしくなってきていた。
「んーとねぇ…………恭司が昔、世界中で人を斬りまくったってことと…………その恭司がこの世界に時空間魔法で飛ばされてきたってこととー…………あとはあの恭司の部屋にあった刀がどうとかこうとかも言ってたかな?」
ユウカは十分に喉を潤すと、かなり適当な感じでそう答えた。
心なしか面倒くさそうに見える。
「俺についての要点は掴んでるじゃないか…………。よく平気で話せるな…………」
「え?何で?別に態度変える必要も無いし。まぁ、恭司が私を襲ってくるなんて話ならさすがにビックリするけど、そんなことないでしょ?」
「まぁ…………そりゃあそうだが…………。要は人斬りの前科持ちってことだぞ?しかも大量殺人犯だ。口ではそう言っててもって可能性はあるじゃねぇか」
「いやいや大丈夫でしょ。今のところ敵意とか何も感じないし。怖くなったらお父さんに言えばいいんだしね」
「…………軽いな。まぁ、お前がいいって言うんなら、特に問題は無いんだが…………」
「でしょ?」
ユウカはそう言って、もう一つ欠伸を漏らす。
本当に興味がなかったのか、それともアベルトに何か言われてるのか、不自然なほどに短かった。
釈然としない気持ちはあるものの、兎にも角にも、恭司についての話はこれで終わったのだ。
てっきり『ずっと騙してたのか!』や『何で隠してた!』『自分に何をする気だった!』といった言い合いは避けられないと思っていただけに、恭司としては完全に拍子抜けだった。
「ちなみに、俺について以外のことは何か覚えてないのか?武術主義がどうとかって話もしてたろう」
恭司は切り替えて、これからの話を行う。
拍子抜けはしたが、解決したのは解決したのだ。
それなら、話を次に進めるべきだった。
しかし…………
「あー、言ってたようなー…………言ってなかったようなー…………」
ユウカの意識は猛烈に低かった。
あまりにも低すぎた。
警戒心どころじゃない。
お使い頼まれたくらいの認識レベルだ。
ユウカが起きてきたのは、アベルトが家を出てから約40分ほど経ってからのことだった。
時間で言えば、6時を少し回ったくらい。
恭司は生唾をゴクリと飲み干した。
少し緊張する。
「あれ…………?お父さん、もう出てったんだね。相変わらず慌しいなぁ…………」
ユウカは眠そうに目を擦りながら、半覚醒状態で欠伸混じりにそう呟いた。
恭司はそんなユウカに対し、ついつい目を背けてしまう。
昨日のアベルトとの会話で、ユウカは恭司が普通の一般人でなかったことに気づかされたはずだ。
恭司からすれば、まるでユウカを騙していたような気分になる。
正直、後ろめたかった。
「恭司もいつもより早いね。何時頃に起きたの?」
しかし、
ユウカは恭司の心情を知ってか知らずか、完全に普段通りの声でそう話しかけてきた。
緊張感は…………全くこれっぽっちも感じられない。
まるでいつも通りだ。
だが、
そこは敢えて合わせようと無理をしているのかもしれない。
恭司は慎重に頷いた。
「…………だ、大体5時頃かな…………」
少し出だしで詰まってしまった。
ユウカは恭司の様子を見て、頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。
恭司としては、苦笑いで返すしかなかった。
「へぇー、そうなんだ。早く起きるのはいいことだよね。私も普段は早寝早起きの良い子なんだけど、昨日はなんか夜中にお父さんから話があるって言われてね。けっこう夜遅くまで寝かせてくれなかったんだよ…………」
ユウカはそう言いつつ、冷蔵庫までノロノロと歩いていき、アイスのコーヒーパックを取り出した。
恭司の頬に、冷や汗がゆっくりと伝う。
アベルトは、ユウカに確かに話をしたのだ。
別に疑っていたわけではないが、残念ながら、これに間違いは無かったようだ。
「…………どんな話を聞かされたんだ?」
恭司は再度詰まらないよう、慎重に尋ね返す。
内容ならもちろん知っているが、ユウカの反応を見たかった。
なんせ、つい最近までずっと一緒にいた男が、常軌を逸した最悪の殺人鬼だと判明したはずなのだ。
普通は怖くて眠れない。
「んー、眠かったし…………何を言ってたのかイマイチ覚えてないなぁ…………。確か恭司に関することだった気がするよ」
「………………」
軽かった。
思っていた何倍も軽く、アバウトだった。
アベルトは確かに、ユウカはそんなことで臆する人間じゃないとは言っていたが…………臆する臆さない以前に話をあまり聞いていない。
恭司はそれでもとかぶりを振ると、表情を整える。
恭司にとって、ユウカはあらゆる面で大切な人物だ。
嫌われたくない。
だが、
これはアヤフヤなままにしてはいけない話だ。
「その内容…………さすがに少しくらいは覚えているだろう?アベルトさんは俺について、どういうことを話していたんだ?」
「ん?えーっとねー、えーと…………」
ユウカは首を捻りながら、自分と恭司の二人分のアイスコーヒーの用意を始めた。
パックからコップ2つにそれぞれ注ぎ、机に置く。
思い出すことより喉の渇きを何とかする方が優先順位が高いのか、ユウカは恭司の隣に座ると、答えを返す前に両手でコップに手を添えてゴクゴクと飲み始めた。
対応は適当だし、座る席もまさかの隣だ。
隣に座ること自体はいつも通りだが、警戒心が無さすぎる。
恭司は徐々に、気を使っているのが馬鹿らしくなってきていた。
「んーとねぇ…………恭司が昔、世界中で人を斬りまくったってことと…………その恭司がこの世界に時空間魔法で飛ばされてきたってこととー…………あとはあの恭司の部屋にあった刀がどうとかこうとかも言ってたかな?」
ユウカは十分に喉を潤すと、かなり適当な感じでそう答えた。
心なしか面倒くさそうに見える。
「俺についての要点は掴んでるじゃないか…………。よく平気で話せるな…………」
「え?何で?別に態度変える必要も無いし。まぁ、恭司が私を襲ってくるなんて話ならさすがにビックリするけど、そんなことないでしょ?」
「まぁ…………そりゃあそうだが…………。要は人斬りの前科持ちってことだぞ?しかも大量殺人犯だ。口ではそう言っててもって可能性はあるじゃねぇか」
「いやいや大丈夫でしょ。今のところ敵意とか何も感じないし。怖くなったらお父さんに言えばいいんだしね」
「…………軽いな。まぁ、お前がいいって言うんなら、特に問題は無いんだが…………」
「でしょ?」
ユウカはそう言って、もう一つ欠伸を漏らす。
本当に興味がなかったのか、それともアベルトに何か言われてるのか、不自然なほどに短かった。
釈然としない気持ちはあるものの、兎にも角にも、恭司についての話はこれで終わったのだ。
てっきり『ずっと騙してたのか!』や『何で隠してた!』『自分に何をする気だった!』といった言い合いは避けられないと思っていただけに、恭司としては完全に拍子抜けだった。
「ちなみに、俺について以外のことは何か覚えてないのか?武術主義がどうとかって話もしてたろう」
恭司は切り替えて、これからの話を行う。
拍子抜けはしたが、解決したのは解決したのだ。
それなら、話を次に進めるべきだった。
しかし…………
「あー、言ってたようなー…………言ってなかったようなー…………」
ユウカの意識は猛烈に低かった。
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警戒心どころじゃない。
お使い頼まれたくらいの認識レベルだ。
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