追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

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【第五章】恭司の過去

【第十一話】王族狩り:序章⑧

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「そちらも……反応を示したものは一つもありませんでした。残念ながら、全て空振りに終わっております」

「そうか……」


シェルは固い声で呟く。

これだけの被害数を出しながら、これだけの残虐的犯行を受けながら、これだけの対策をとりながら、結局は足跡の一つすら掴めていない。

世界最大の人口を誇るこの国で、世界一目撃者たりえる人間の最も多いこの大国で、未だ犯人の影すら見た者はいないのだ。

本当に鬼や羅刹の仕業と考えたくなるような事態だ。

シェルは大きくため息をつきそうになるのを抑え、各隊長から引き続き報告を受ける。

だが、

シェルの求めている報告を上げられた者は、最終的に一人もいなかった。

これが現状だ。

これが事実だ。

シェルもこんな事態になる前に、先ほどの罠の件も含め、様々な指示を出してきたが、ついぞ成果を上げたものはなかった。

人間以外の罠も、人間を使った連携も、万全を配した防御体制も、王族狩りにはこれまで一切全くこれっぽっちも通じなかった。

シェルはとうとうため息をつき、各隊長たちはゴクリと生唾を飲み込む。

何故なら、これからが本番だからだ。

ここまでの話は、シェルも何度か報告を受けて聞いている。

先ほどまではあくまでも確認に過ぎない。

この現状を受けた上で、今この国は対策に乗り出さなくてはならないのだ。

1年間もの解決出来ずにいたこの事件に、とうとうピリオドを打つ時がきた。

シェルは俯きがちだった顔を持ち上げる。

その表情は、シェルが大軍を率いて戦地に赴く時と同じものだった。


「明日。行動に移す」


その発言は唐突なものだった。

どちらかと言えば呟きに近い。

最初に明日の話であるということを伝えたのだ。

隊長たちの表情も強張る。

シェルは落ち着いた声音でスゥと息を吸い込むと、ゆっくりそれを口にした。


「僕が囮になって、王族狩りを引き付ける。そこで全戦力をもって迎撃だ」

「「「「なっ!?」」」」


そこにいた隊長たち全員が絶句した。

予想外もいい所だ。

隊長たちのうち一人が思わず立ち上がる。


「それはなりません!!貴方様の御身はこの国の希望です!!何より、貴方がいなくなれば、誰が王の後を継ぐというのです!!」


シェルもこの意見が返ってくることは分かっていた。

現在、この国で皇太子たる立場にいるのはシェル・ローズのただ一人のみ。

他の兄弟たちは全員殺され、そもそも王族自体がもうほとんど残っていない。

傍系の数人程度だ。

だが、

裏を返せば数人いるということでもある。

立ち上がった隊長はそちらを人柱にすればいいと言外に告げているのだ。

王族狩りは王族なら誰でも狙う上に、同じ王族でも、シェルとその傍系数人では人としての価値が違う。

シェルは実績もある実力派な上、その傍系たちより身分も圧倒的に上なのだ。

どう考えても人選がおかしい。

やるならそちらを使うか、あるいは影武者でも立てればいい。

それほどに大きなリスクを払わずとも、他に方法はあるのだ。
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