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【第五章】恭司の過去
【第十一話】王族狩り:序章⑨
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「それも試したことがあったろう?そして失敗したじゃないか。本当の囮ではダメなんだ。今回は王族狩りを捕まえるのが目的ではない。始末することが目的なんだ。囮は囮でも、反撃できないと意味がない」
「で、ですが!!それならせめてシェル様以外の腕の立つ者にお任せください!!何なら私が……ッ!!」
「ダメだ。お前では奴に勝てない。王族狩りがどれだけ強いかは、先ほどの報告でも明らかだろう。それなら、この国の最大戦力である僕が行くべきだ」
「し、しかし……ッ!!」
普段はシェルの言葉に二つ返事で了解する彼らも、さすがに今回ばかりは素直に頷くわけにはいかなかった。
シェルの存在はこの国にとってそれほどまでに重要で、替えがきかない唯一無二なのだ。
後継者問題も大きい。
今の王である『バルキー・ローズ』は謀略においてシェル以上の強大な力を持つ傑物で、彼だからこそこのミッドカオスは他2国と渡り合っているといっても過言ではなかった。
統率には欠けるが最強の武力を持つディオラスと、少数だが不思議な能力を操るメルセデス相手に、生半可な王が立っては決して抗えない。
身分だけでなく実力から言っても、バルキーの後を継げる人間はシェルしかいないというのが、この国全員の総意だった。
だからこそ、
ここでシェルに万一のことでもあったら最悪のシチュエーションに陥りかねない。
隊長たちが必死に止めるのも至極当然の話だった。
「お前たちが言うことも分かる。僕だって色々と考えた結論だ。だが、現在の状況を考えても、奴らの実力は生半可なものじゃない上に、早期的な解決が必要となっている。僕が行くのが一番効率的なんだよ。例え戦闘になっても、僕が誰よりも勝てる可能性が高い」
「そ、それならせめて、囮は代役を立て、シェル様は護衛の人間に紛れてください!!何も貴方様が一番の矢面に立つ必要など無い!!」
隊長たちの声はどんどん遠慮が無くなっていった。
彼らも保身ばかりで話しているわけではない。
シェルのことを心から尊敬し、慕っているからこそ、シェルに一番の重荷を背負わせることに我慢がならないのだ。
忠誠心が本当に高いからこそ、こういう時はちゃんと言わなければならない。
例えそれでシェルの不快を買おうとも問題ないくらいには、彼らはミッドカオスのことを心から考えられる忠義者だった。
シェルもそれが分かっているからこそ、不快になんて当然なったりしない。
「お前たちの思いは分かっているつもりだ。とても嬉しいよ。だが忘れていないか?僕には、他の誰にもない『能力』があることを」
「…………」
隊長たちはいきなり黙ってしまった。
忘れてはいないが、その『能力』については確かに一理ある。
「アレは僕個人に敵意が向いている時、最も効果を発揮する。半径も一番広くなる。この状態で奴らが現れた時こそ、我らは最も有利な立場になる」
「…………」
隊長たちから反論は無かった。
納得したわけではない。
シェルの言葉を聞いて、その覚悟が生半可なものではないことを感じさせられてしまったのだ。
もうこうなっては、シェルは一歩も引いたりしないだろう。
隊長たちは一様に頭を下げる。
「伝えた通り、決行は明日だ。本日中に用意を済ませ、明日の朝から、奴らを待ち受ける。
各自、それまでに準備を整えよ!!」
「「「「ハッ!!」」」」
隊長たちは一斉に起立し、合わせたように同じ仕草で了承の意を示す。
決まったからにはもう何も言わない。
せめて、シェルを死なせないよう全力を尽くすのみだ。
これは戦争でも内乱でも何でもないが、隊長たちは皆同じ想いだ。
シェルはその様子を見て自らも立ち上がると、バッと身を翻す。
明日の決戦に向け、シェルはキビキビとした動きで会議室を後にした。
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「で、ですが!!それならせめてシェル様以外の腕の立つ者にお任せください!!何なら私が……ッ!!」
「ダメだ。お前では奴に勝てない。王族狩りがどれだけ強いかは、先ほどの報告でも明らかだろう。それなら、この国の最大戦力である僕が行くべきだ」
「し、しかし……ッ!!」
普段はシェルの言葉に二つ返事で了解する彼らも、さすがに今回ばかりは素直に頷くわけにはいかなかった。
シェルの存在はこの国にとってそれほどまでに重要で、替えがきかない唯一無二なのだ。
後継者問題も大きい。
今の王である『バルキー・ローズ』は謀略においてシェル以上の強大な力を持つ傑物で、彼だからこそこのミッドカオスは他2国と渡り合っているといっても過言ではなかった。
統率には欠けるが最強の武力を持つディオラスと、少数だが不思議な能力を操るメルセデス相手に、生半可な王が立っては決して抗えない。
身分だけでなく実力から言っても、バルキーの後を継げる人間はシェルしかいないというのが、この国全員の総意だった。
だからこそ、
ここでシェルに万一のことでもあったら最悪のシチュエーションに陥りかねない。
隊長たちが必死に止めるのも至極当然の話だった。
「お前たちが言うことも分かる。僕だって色々と考えた結論だ。だが、現在の状況を考えても、奴らの実力は生半可なものじゃない上に、早期的な解決が必要となっている。僕が行くのが一番効率的なんだよ。例え戦闘になっても、僕が誰よりも勝てる可能性が高い」
「そ、それならせめて、囮は代役を立て、シェル様は護衛の人間に紛れてください!!何も貴方様が一番の矢面に立つ必要など無い!!」
隊長たちの声はどんどん遠慮が無くなっていった。
彼らも保身ばかりで話しているわけではない。
シェルのことを心から尊敬し、慕っているからこそ、シェルに一番の重荷を背負わせることに我慢がならないのだ。
忠誠心が本当に高いからこそ、こういう時はちゃんと言わなければならない。
例えそれでシェルの不快を買おうとも問題ないくらいには、彼らはミッドカオスのことを心から考えられる忠義者だった。
シェルもそれが分かっているからこそ、不快になんて当然なったりしない。
「お前たちの思いは分かっているつもりだ。とても嬉しいよ。だが忘れていないか?僕には、他の誰にもない『能力』があることを」
「…………」
隊長たちはいきなり黙ってしまった。
忘れてはいないが、その『能力』については確かに一理ある。
「アレは僕個人に敵意が向いている時、最も効果を発揮する。半径も一番広くなる。この状態で奴らが現れた時こそ、我らは最も有利な立場になる」
「…………」
隊長たちから反論は無かった。
納得したわけではない。
シェルの言葉を聞いて、その覚悟が生半可なものではないことを感じさせられてしまったのだ。
もうこうなっては、シェルは一歩も引いたりしないだろう。
隊長たちは一様に頭を下げる。
「伝えた通り、決行は明日だ。本日中に用意を済ませ、明日の朝から、奴らを待ち受ける。
各自、それまでに準備を整えよ!!」
「「「「ハッ!!」」」」
隊長たちは一斉に起立し、合わせたように同じ仕草で了承の意を示す。
決まったからにはもう何も言わない。
せめて、シェルを死なせないよう全力を尽くすのみだ。
これは戦争でも内乱でも何でもないが、隊長たちは皆同じ想いだ。
シェルはその様子を見て自らも立ち上がると、バッと身を翻す。
明日の決戦に向け、シェルはキビキビとした動きで会議室を後にした。
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