舌先三寸覚えあり 〜おヌル様は異界人。美味しいお菓子のプロ技キラめく甘々生活

蜂蜜ひみつ

文字の大きさ
24 / 175
ヌルッとスタート編

第24話 お預けコーヒー

しおりを挟む
「見て見てこれ。〈コーヒーポット〉クレールさんにあるかな?」

「んー、多分この世界にはない物かもしれない……。コニー画板箱の紙1枚貰うね。詳しく説明してくれる?」

「はーい。あんまり蘊蓄捏うんちくこねくらないで、あえてサラッといこうね。
用途は、沸かしたお湯をやかんからドバってコーヒーに注ぐんじゃなく、一旦お湯を〈コーヒーポット〉に移して、超ゆっくり少しづつ、お湯をコーヒー豆に注いでいくためだよ。
素材は錆びず味が移らず軽いもの。
地球で言うならステンレス素材。温度計を使わないなら直接火にかけれる必要はなくて良いと私は思ってる」

 このまま進めていいかな? チラッと2人を見る。

「コーヒーを淹れる温度は沸騰したてよりちょい低め、85~95度。だからポットに移す事で温度計で測らなくてもざっくり調節が出来るの。
簡単に言えば、高いと苦味、低いと酸味が抽出されるって感じかな。
『93度で淹れる』。そう語る街のコーヒー店の複数の取材記事を読んだことあるよ。その温度帯が人気ってわけ。
大事なのはこの部分の形。注ぎ口を細く長めにすることで、狙ったところに狙った量だけ、ちょろろろって注ぎ易くしてんの。先をね、スパッと平らに切った形がお湯の切れがいいね」

「無いから1番注ぎ口の細い紅茶ポットを使おうか?」

「ころんとしたやつじゃなくて、縦長の、白鳥の首の様に太いとこから先に向けて長く細くなる注ぎ口の紅茶ポットがいいな。
初心者じゃなくてちょっと練習した人には〈鶴口つるくち〉って言ってそんな形も人気があるみたい。
次はね~、ポタポタを受ける方。コーヒーサーバーね。いま使ってる陶器のじゃなくて、透明だったら形は何でもいいんだけど……
この家なら、〈ティザンヌ〉用のガラスポットとかありそうじゃない?」

「〈ティザンヌ〉って何だ?」

「フランス語でハーブティーのことだ。確かお婆様の嫁入り道具で、日常使いにはちょっとって感じだが、美しいやつがしまってあったぞ。
別荘って、使わないんだけど捨てるには惜し物を持ち込みがちだよね。僕の家に引き継いでからはそういうのは処分してるんだけど、あれは綺麗だったから」

「うっわ! そんな高そうなもの恐ろし過ぎて使えないよ~。でもうるわしいなら改めていつか一目見てみたい気がする。
そうだなー、耐熱性のカラフェなんて無いか……。基本的に常温か冷たい飲み物入れだからねぇ」

「酒飲んだりするとき置いとくあのガラスのやつがいいんじゃねえか? それにお前の強化回路の付与を付けて」

「研究申請の対象だもんな。よし。まずはコニーにこんなんで良いか見てもらおう」

 少し気泡の入った、若干青みがかった透明なガラスでできていて、丸みを帯びたフォルムの取っ手付きピッチャー。
 可愛い。

 家本体いえほんたいもさることながら、ここのおうちにある物全てがお洒落で、ちょっと温もりがある様なナチュラルな感じで、センスの良さに溢れてる。
 まさにフランスのインテリアの雑誌に載ってそう。

「これとっても可愛くていい! コーヒードリッパー乗せてみるね。うん、これも相性良し。上に乗せても安定感がある。
はい。これでいきたいです。
あとはここに直接テープとかシールとか、ちょこっと貼ってもいいかな?」

「ん? いいけど、なんで?」

「ちょっと待っててね」

 飲み終わったカップをローテーブルに回収しにいこうと思ったら、既にエタンさんによってサッとすすいで伏せるとこまでされてた。
 素敵!
 片付けできん子の私は、ちょぼんとする。

「出来上がり量の目安に印をつけとくの」
 3人のカップに水を汲みピッチャーに移し変えて、その水面の場所にテープを貼りたい事を告げる。

「じゃあこのペンで直接書き込んで良いよ。どうせなら3人で初めて実験するんだから、記念になるよう絵とか地球の字とかも一緒に描いて」

 クレールさんが引き出しから黒と白を1本づつ出した。

「え、マジ? 直接? 本当に書いていいの?」

 エタンさんも面白がってやれよと勧めて来る。

「へへ、楽しそう。私も3人のコーヒー時間大事にしたいもん。そんなら思い切って書いちゃうぞ。
フランス語でみんなの名前入れようかな? つづり合ってるかクレールさん見て」

 紙に書く。
 あれ? エタンさんはどっちだ?
 スパークの意味で『Étincelle』?
 英語読みだとイーサンで、人名の『Ethan』のほうかな?

「こっちだよ。僕の母親の侍女がエタンの母君で、二人は大親友なんだ。たまたま出産時期も同じ頃でさ。
僕の両親はフランスのおヌル様研究家だから、フランス語の辞書を見ながら妊婦2人であーでもないこーでもないと、沢山の名前の候補を捻り出してたみたいだよ。
エタンとの腐れ縁はお腹の中にいた頃からってわけさ。
逆に辞書に載ってない人名の綴りは知らなかったな。」

「俺も。英語でイーサンってカッコいいな。」

「確か、〈ヘブライ語〉? で強いって意味じゃなかったかな? 
〈イーサン•ホーク〉って二枚目俳優がいてね。どっかで読んでイーサンの由来を知って、『強い鷹』って意味で名前までカッコいい、って思った記憶があるの。
じゃあエタンさんのあだ名として、私これからイーサンって呼ぼうかな?」

「だ! ダメだよ! コニー!」

 慌ててダメ出ししてくるクレールさん。
本人はクレールさんの反応と私の提案に、ダブルでびっくりした顔してる。
そんなに馴れ馴れしかったか、すまぬぬぬ。

「あ、そっか、そだね、イーサンさんになっちゃっうしね?」

「んじゃ『さん』無しでエタンって呼んでくれ。年も近いしな?」

「じゃあ僕も『さん』無しで」

 ふーん、その程度までの馴れ馴れしさはオッケーなんだね?

「了解! 改めてよろしくね。エタン、クレール!」

 コーヒーが濃い色だから白いペンに決めた。
 2カップの分、3カップの分、多めに水を汲んでそれぞれに線を引く。
 量り終わった水は、強制断水の話聞いたからには、怖いしもったいないしで、ちゃんとヤカンに移した。

 白ペンでイラストを書き入れ、クレールに渡す。

「じゃあ次はこれに強化の付与を施すよ。
コーヒーのお代わりがまたちょっと遠のくけど、軽く説明しても良いかな?」

「勿論です。この世界の事は何でも知りたい!」

「生き物には出来ないけど、物に対しては魔道具を利用して強化が出来るんだ。
と言っても生産局で許可を受けた物のみだけど。
作り手側が許可申請を経て、製造の段階で最初っから付与して販売する商品。
もしくは買い手の個々の希望で、付与してもいいとされている指定物品。例えば貴金属とか写真とか。 
制限がかけられるのは大きく2つ理由があるよ。何でだと思う?」

「うーん……物が壊れないのはいい事だけど、みんなが新しいの買わなくなったら物が売れなくなっちゃうから?」

「お! いきなり正解」

「そう。それだと経済が回らない。
そしてもっと大ごとに発展する可能性がある。
壊れない良いものを作ろうとする努力が要らなくなってしまうんだ。技術の停滞、ひいては手抜き粗悪品の横行。
購買意欲があまりに低すぎる世の中では、生産側の意欲も下がる。自然な適度な買い替え需要があるからこそ、次は自分達の製品を選んで買ってもらう為に、ここを改善してみようとか、全く新しい物を生み出してやるとか、こういった創意工夫や閃き、熱意さえも失われていくかもしれない」

 なるほど~。
 正解って言っても私の答えなんて超入口で、深い考えが複雑に派生し合ってるんだなぁ。

「あとは、魔力を沢山使うからね。簡単に言えば地球の〈電力〉みたいなものだから〈節電〉だよ。この話は長くなるからまたあとで。
さあ、付与すんの見る? 2階で僕が1人パッとやって持って降りようか?」

 そんなの勿論ついて行くっしょ。


--------------------

コニーがキュイっとペンで書き込んだもの。



特別な呼び名はダメ……いつか理由が出てきます。





















しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~

ぐうのすけ
ファンタジー
赤目達也(アカメタツヤ)は少女を育てる為に冒険者を辞めた。 そして時が流れ少女が高校の寮に住む事になり冒険者に復帰した。 30代になった達也は更なる力を手に入れておりバズり散らかす。 カクヨムで先行投稿中 タイトル名が少し違います。 魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は黒魔法と白魔法を覚え世界にただ1人のトリプルジョブに至る~ https://kakuyomu.jp/works/16818093076031328255

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界に迷い込んだ盾職おっさんは『使えない』といわれ町ぐるみで追放されましたが、現在女の子の保護者になってます。

古嶺こいし
ファンタジー
異世界に神隠しに遭い、そのまま10年以上過ごした主人公、北城辰也はある日突然パーティーメンバーから『盾しか能がないおっさんは使えない』という理由で突然解雇されてしまう。勝手に冒険者資格も剥奪され、しかも家まで壊されて居場所を完全に失ってしまった。 頼りもない孤独な主人公はこれからどうしようと海辺で黄昏ていると、海に女の子が浮かんでいるのを発見する。 「うおおおおお!!??」 慌てて救助したことによって、北城辰也の物語が幕を開けたのだった。 基本出来上がり投稿となります!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...