舌先三寸覚えあり 〜おヌル様は異界人。美味しいお菓子のプロ技キラめく甘々生活

蜂蜜ひみつ

文字の大きさ
62 / 175
光の湖畔編

第61話 焼けたらちょっとつまみ食い

しおりを挟む
 急いでクレールの大きなミトンをはめて、天板を出し奥手前をくるっと入れ替えて、オーブンに差し戻す。
 うーんいつもより色濃いような微妙……。
 175度に落として1分減らして残り8分にするか……。

 使ったことないオーブンは神経を使う。
 オーブンチェックを見越しての、昨日のメニュー。
 カナッペのパンをシンプルにカリっと焼く、を選んだんだけど。

 それとオーブンのムラも知りたかったし。
 どうやらここのは、上段の右手前が特に強く焼けるみたい。
 まあ、天板1枚で焼くときは、3段ある場合は中段で。
 2段の場合は下段に入れるから、今回は気にしなくて大丈夫。

 このマフィンは焼いたその日はいいんだけど、翌日や冷凍保存して解凍すると、なぜかおっそろしいほど口の水分奪ってくお菓子なんだよね。
 小さな頃食べた甘食あましょくに匹敵する。

 焼き過ぎると、ことさら酷い。
 よし、直感に従おう!
 温度下げて焼き短め。

 早速軍手をはめ、さらにもう一枚上からはめて。
たごたごする指先は一旦脱いで、スプーンの後ろの掴むところ使ってぎゅいっと押しやり、2重にぴったり重ねる。

 ダメ元で、楊枝、竹串、箸を持ってないかイラスト混じりで聞くも、無しとの回答。
 ですよね、そう思ってました~。

 でもスツールに乗って高いところから古めかしい箱を出して来たクレール。

 覗くとすごく綺麗な銀色の製品が。
 ピックと小さなデザート用のスプーンとフォークがそれぞれ多分1ダースづつ2段に分かれ入っていた。 
 飾りに緑とオレンジの宝石のような石飾りが付いていた。

「これもお婆様の嫁入り道具。このとんがったの使う?」

 ひええええ~
 使わないよ、使えない! 焼けてるか刺して確認するだけだから! しかも時間な~い!!

 慌てて断り、そ、そうだ! 
 例のちょっと文房具が入った引き出しからワイヤークリップを出した。

 もらっていいか確認とって、ぐねった針金状にして、急いで洗って拭いた。
 ブザーが鳴った。
 間に合った……。

 軍手をはめ、ドアを開け手前の1個に針金を刺し、確認する。
 何にもついてこない、オッケー。
 オーブンから天板を取り出し、網の上にココット型を全て移す。

 紙は高さを低めにとっていたので、上部マフィンが盛り上がって、キノコの傘みたく張り出してて可愛い。
 右手でココット型持ってひっくり返し、左手で優しく掴む。
 バターが塗ってあったので型取れよく、こぽんとココット型から抜けた。
 
 バナナマフィン 5個
 胡桃レーズンマフィン 5個

 異界で作った初お菓子、無事完成~。

 作ったことあるお菓子が成功か否かは、じつは食べる前から見た目でほぼ分かる。
 なにか間違ったり、上手くいってないときは、作業中や完成後、見た目が明らかに違うから。

 まあ、食べるまでは最後まで気が抜けないんだけどね。

 どうよ? と思ってクレールを見やると、心から楽しくて堪らない顔で私とマフィンを交互に眺めていた。

「コニー……流れるような作業をする君に見惚れているうちに、あっという間にお菓子ができたねぇ。ああ、本当に美味しそう」

「えへへ、職人の技を間近で見てると魅入られちゃうって分かる~。光栄です! クレールありがとう。
これは簡単で、家庭でお母さんが作るような簡素なお菓子だけど。売る用じゃないけどさ、素朴でわりと美味しいんだよ。まさにおうちオヤツだね」

 嬉しそうな声をあげてエタンがやってきた。

「おお、マジか?! もう出来たのか。少ししかない洗濯干し終わるのと同じって、早ぇな」

 笑っているものの鷹のごとし、黄金の目が獲物にロックオンしてる。

 コーヒーのお供にって思ってたけど、こんなワクワクの瞳たちで見られちゃあね!

「2人とも朝から活躍ありがとう。まだ全然冷めてないけど、ちょっと味見しちゃおっか?」
 バナナマフィンを不公平切りで3分割した。

 小さいやつを、ぱく。
「うん。美味しい! どぞ」

「「やった!」」
 あはは、子供のようでちょっとかわいい2人。
 私もなんだか嬉しくなった。

「うわ、美味しい。ええ?! これウチにあったあれっぽっちの材料で?」

「マジか……。素朴でほっこり美味えなぁ。バターの匂いは全然しないのにパンとも違うし、なんだこれ……口の中でほろっと、優しい味だなぁ」

「エタンは見てなかったもんね。バター入れずに生クリームだよ。あの皮黒くなった熟成し過ぎバナナもお菓子にすると、甘くて美味しいよね」

「いつもあんなになったバナナは、ヨーグルトにグチャと入れて食べるんだよ」

「生クリームもホットケーキに添える用にちょうど買ってあったから、使ってもらってよかったな」

「え? そうだったの? ごめん。まだ残ってるから大丈夫だよ」

「いやいいんだ。いつも余らせてどうしようって思案してたから」

「家庭だとそうだよね。このオヤツも生クリーム消費するのに考えたものなんだ。残りダメにしないよう使ってくからそこは任せといてね!
 あとは、泡立ててからなら冷凍できるよ。食感はイマイチになるから、お菓子用じゃなくて料理のコクだしとかパン焼くのに使うとかになっちゃうけど。絞り袋とかスプーンを使って、小さくお山に小分けしとくと便利だよ」

「へー! 知らなかった。冷凍すると分離してダメになっちゃうもんね……。泡立てたものなら冷凍できるとは。気づかないもんだな」

「今は持って無さそうだけど、生クリーム量の1/3以上の溶かしたチョコと合わせれば、冷凍しても、お菓子としての滑らかさも維持できるよ。
 特に美味しいホワイトチョコと合わせると、乳製品好きのクレールは悶絶しちゃうよ~」

「そりゃいつの日にかに、期待大だな」

 そしてこっちは? と言わんばかりに2人が胡桃レーズンの方をチラチラ見出したから、コーヒー実験のあとで! と後ろの作業台に移動させる。

 打ち合わせ通り、コーヒーの準備スタートです!!





しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...