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羽馬渓谷編
第140話 吊り橋効果を回避せよ
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な、なるほど、こりゃまた、ホント……
思ったよりもぉ密着するとぉきたもんだ。
後ろからエタンにずっぽし抱き込まれ、お腹よりちょい上、胸の下あたりに、ぎゅうっと回されたエタンの腕。
セクハラ対策を施す必要性、納得の密着ポーズ。
さっきのカッコいいライダースジャケットを脱ぎ、エタンがいま着てるのは。
上半身の一部チャックを開けて、前方騎手を取り込める、だぶだぶな二人乗り用の落下安全ツナギ。
コントの二人羽織さながらエタンの服の中へ、私をぽすんと内包するようにイン。
腕や膝下は騎手たるもの、自由に動かせるように、胴体と太ももだけだけど。
あちこち連結パーツやらでカチリと留めて、互いをしっかり固定。
くっつかり過ぎてなんか……恥ずかしい!
でも、意識してるのがエタンにバレるのは、もっと恥ずかしい気がするから、平常心平常心。
そだ、エタンの変な装いを見て落ち着こうっと。
「ん、なんだ? ちゃんと前見てくれよ、コニー」
「ひょわっ、あ、ご、ごめん」
耳元で低音ボイスで喋られて、ぞわわってなった。
エタンってば、いい声なんだもん。
どきどきしちゃうのは、しょうがないよね?
「ヘンテコメガネのダサいエタンが見たかっただけ」
騎手が装着するのは禁止だけど、タンデム同乗者用に開発された、漫画の瓶底メガネそっくりなのをかけているのだ。
空間認識を歪ませ、高いとこの怖さを軽減なんちゃら。
「……今度クレールにカッコいいサングラスへ、特別に魔道具回路付与してもらいてえ」
痩せて皮膚の余ったお相撲さんコスプレみたいな、にくじゅば~ん色の二人乗り用安全服しかり。
明らかに笑かす気満々だよね? このタンデムファッション。
肉体的密着と高所の吊り橋効果で生じるドキドキリスクを回避する作戦に、確実に一役買ってることは間違いない。
羽馬の二つある腹帯の一つ、騎乗者たちの股下を通して留める腰の安全ベルトが、いい感じにマワシ風味。
ちなみに「相撲って知ってる?」って聞いたら、なにそれって言ってたけど、偶然ってすごい。
「ダメだよ、このままで。エタンぐらいの男前なら、これくらい個性的なメガネと服を着こなさなきゃ。よく似合ってるよ」
ティアドロップ型のあの世界的に有名なサングラスをかけたエタンは、きっと格好良過ぎて反則だろうな。
でも逆に、凄腕パイロットの風格漂う顔面ビジュアルで、私の背にコアラみたく一生懸命しがみついてるのも、ギャップがあって可愛いかもしれない。
その上、相撲取り二人羽織だし。
「チェッ。似合ってるって言われても微妙だな。しっかし、羽馬に乗ってこんな高度で軽口言える日がくるなんてな。……マジな話、感謝してる。コニー。ありがとう」
二人でたわいないお喋りの甲斐あってか、飛行当初より無駄な力の抜けたエタンが、ぎゅっと一瞬、わざと腕に力を込めて抱きしめてきた。
「うん、エタンの役に立てて良かった。それに私も楽しいし、一緒に飛べて嬉しいよ。あ、もうじきだね、虹の滝」
さっき乗る前に「更衣塔に高度上げて帰るなら、虹を近くで見てみたい」って私の提案に対し。
牧場羽馬は、虹渡り門界隈と羽馬聖岩の上空を、暗黙の了解で避けて通るから、どうなんだろうね、となったのだ。
ギャロ爺っちゃは、そんならタマ子たちを一旦牧場に連れ帰って、私の筋肉痛対策に、奥さんの腰痛グッズを持ってきてあげよう、と言ってくれて。
更衣塔で合流することになったのだ。
「エタン。虹って日本語で『こう』って読み方があるんだよ。日本人おヌル様の私としては、あの虹の裏の洞窟名前に『渡り』が入ってて何よりだと思ってんだ~」
エタンの気分が紛れるように、くだらないお喋りするのが良いのかも? と思いついたことを私は口にする。
「ん? 謎かけか? 『渡り』を抜いたら、虹門だから……日本語で……こう……マジか?! ケツの穴じゃねえか。コニーから下ネタ聞けるとは、貴重だな、くっ、はははっ」
「下ネタじゃないやい! 日本語の特別伝授だよ。でも、下品だからクレールに教えるのは恥ずかしいかも、あはは」
「俺は特別?」
「ん。恥ずかしいメガネかけてるエタンと、恥ずかしおあいこだからさ。特別サービス」
「そうか。この恥ずいメガネが取り持つ秘密か。悪くねえな」
こくり、私はうなづいた。
「ロクム。さっきロクムたちの住まいの崖にある滝や、てっぺんがどうなってるか見てみたいって言ったけど。無理強いはしないよ。コース取りはお任せするね」
軽くいななき返事をするロクム。
頭に乗ったポンポ振り向いて私に手を振る。
背中の羽はいつのまにかなくて、いつもの水まんじゅう猫フォルム。
私もクレールを振り返りたいけど、大っきいエタンが後ろにいるから見えっこない。
さあいよいよだ。
はりゃ、ロクムが右へと舵を切り、崖から離れいく。
そっか……うん。
ちょっぴり期待してたんだけどな、残念。
わっ?!
左へギュインと旋回したぞ。
滝と虹とがババーンと、視界真正面にくるコース取り?!
あ、もしかして……
垂直に、崖に目掛けて飛んでいくロクム。
壁の亀裂から吹き出す水のところに、淡い虹が一つ浮かんでいる。
その水は下に向けて細かい飛沫の滝となって。
崖にぽっかり大きく口を開けた暗闇を隠す、霧のシャワーカーテンさながら。
そしてなんと言っても圧巻なのは。
洞窟の入り口の下ら辺に存在する、明るく眩しい虹。
初めて見た、虹のダブルアーチだ!
下からじゃ一個だけしか見えなかったなあ。
へえ……上下、配色が反転してる。
なんて不思議なの、お伽話みたいな景色……
少し上から滑空するように、二つの虹で作られた門を渡り。
私とエタンを乗せたロクムは、真っ暗な洞窟の入り口へと滑り込んだ。
【第141話 羽馬聖岩の中】
思ったよりもぉ密着するとぉきたもんだ。
後ろからエタンにずっぽし抱き込まれ、お腹よりちょい上、胸の下あたりに、ぎゅうっと回されたエタンの腕。
セクハラ対策を施す必要性、納得の密着ポーズ。
さっきのカッコいいライダースジャケットを脱ぎ、エタンがいま着てるのは。
上半身の一部チャックを開けて、前方騎手を取り込める、だぶだぶな二人乗り用の落下安全ツナギ。
コントの二人羽織さながらエタンの服の中へ、私をぽすんと内包するようにイン。
腕や膝下は騎手たるもの、自由に動かせるように、胴体と太ももだけだけど。
あちこち連結パーツやらでカチリと留めて、互いをしっかり固定。
くっつかり過ぎてなんか……恥ずかしい!
でも、意識してるのがエタンにバレるのは、もっと恥ずかしい気がするから、平常心平常心。
そだ、エタンの変な装いを見て落ち着こうっと。
「ん、なんだ? ちゃんと前見てくれよ、コニー」
「ひょわっ、あ、ご、ごめん」
耳元で低音ボイスで喋られて、ぞわわってなった。
エタンってば、いい声なんだもん。
どきどきしちゃうのは、しょうがないよね?
「ヘンテコメガネのダサいエタンが見たかっただけ」
騎手が装着するのは禁止だけど、タンデム同乗者用に開発された、漫画の瓶底メガネそっくりなのをかけているのだ。
空間認識を歪ませ、高いとこの怖さを軽減なんちゃら。
「……今度クレールにカッコいいサングラスへ、特別に魔道具回路付与してもらいてえ」
痩せて皮膚の余ったお相撲さんコスプレみたいな、にくじゅば~ん色の二人乗り用安全服しかり。
明らかに笑かす気満々だよね? このタンデムファッション。
肉体的密着と高所の吊り橋効果で生じるドキドキリスクを回避する作戦に、確実に一役買ってることは間違いない。
羽馬の二つある腹帯の一つ、騎乗者たちの股下を通して留める腰の安全ベルトが、いい感じにマワシ風味。
ちなみに「相撲って知ってる?」って聞いたら、なにそれって言ってたけど、偶然ってすごい。
「ダメだよ、このままで。エタンぐらいの男前なら、これくらい個性的なメガネと服を着こなさなきゃ。よく似合ってるよ」
ティアドロップ型のあの世界的に有名なサングラスをかけたエタンは、きっと格好良過ぎて反則だろうな。
でも逆に、凄腕パイロットの風格漂う顔面ビジュアルで、私の背にコアラみたく一生懸命しがみついてるのも、ギャップがあって可愛いかもしれない。
その上、相撲取り二人羽織だし。
「チェッ。似合ってるって言われても微妙だな。しっかし、羽馬に乗ってこんな高度で軽口言える日がくるなんてな。……マジな話、感謝してる。コニー。ありがとう」
二人でたわいないお喋りの甲斐あってか、飛行当初より無駄な力の抜けたエタンが、ぎゅっと一瞬、わざと腕に力を込めて抱きしめてきた。
「うん、エタンの役に立てて良かった。それに私も楽しいし、一緒に飛べて嬉しいよ。あ、もうじきだね、虹の滝」
さっき乗る前に「更衣塔に高度上げて帰るなら、虹を近くで見てみたい」って私の提案に対し。
牧場羽馬は、虹渡り門界隈と羽馬聖岩の上空を、暗黙の了解で避けて通るから、どうなんだろうね、となったのだ。
ギャロ爺っちゃは、そんならタマ子たちを一旦牧場に連れ帰って、私の筋肉痛対策に、奥さんの腰痛グッズを持ってきてあげよう、と言ってくれて。
更衣塔で合流することになったのだ。
「エタン。虹って日本語で『こう』って読み方があるんだよ。日本人おヌル様の私としては、あの虹の裏の洞窟名前に『渡り』が入ってて何よりだと思ってんだ~」
エタンの気分が紛れるように、くだらないお喋りするのが良いのかも? と思いついたことを私は口にする。
「ん? 謎かけか? 『渡り』を抜いたら、虹門だから……日本語で……こう……マジか?! ケツの穴じゃねえか。コニーから下ネタ聞けるとは、貴重だな、くっ、はははっ」
「下ネタじゃないやい! 日本語の特別伝授だよ。でも、下品だからクレールに教えるのは恥ずかしいかも、あはは」
「俺は特別?」
「ん。恥ずかしいメガネかけてるエタンと、恥ずかしおあいこだからさ。特別サービス」
「そうか。この恥ずいメガネが取り持つ秘密か。悪くねえな」
こくり、私はうなづいた。
「ロクム。さっきロクムたちの住まいの崖にある滝や、てっぺんがどうなってるか見てみたいって言ったけど。無理強いはしないよ。コース取りはお任せするね」
軽くいななき返事をするロクム。
頭に乗ったポンポ振り向いて私に手を振る。
背中の羽はいつのまにかなくて、いつもの水まんじゅう猫フォルム。
私もクレールを振り返りたいけど、大っきいエタンが後ろにいるから見えっこない。
さあいよいよだ。
はりゃ、ロクムが右へと舵を切り、崖から離れいく。
そっか……うん。
ちょっぴり期待してたんだけどな、残念。
わっ?!
左へギュインと旋回したぞ。
滝と虹とがババーンと、視界真正面にくるコース取り?!
あ、もしかして……
垂直に、崖に目掛けて飛んでいくロクム。
壁の亀裂から吹き出す水のところに、淡い虹が一つ浮かんでいる。
その水は下に向けて細かい飛沫の滝となって。
崖にぽっかり大きく口を開けた暗闇を隠す、霧のシャワーカーテンさながら。
そしてなんと言っても圧巻なのは。
洞窟の入り口の下ら辺に存在する、明るく眩しい虹。
初めて見た、虹のダブルアーチだ!
下からじゃ一個だけしか見えなかったなあ。
へえ……上下、配色が反転してる。
なんて不思議なの、お伽話みたいな景色……
少し上から滑空するように、二つの虹で作られた門を渡り。
私とエタンを乗せたロクムは、真っ暗な洞窟の入り口へと滑り込んだ。
【第141話 羽馬聖岩の中】
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