舌先三寸覚えあり 〜おヌル様は異界人。美味しいお菓子のプロ技キラめく甘々生活

蜂蜜ひみつ

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羽馬渓谷編

第139話 天翔る白騎士

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「あれ? 地球の言葉だけどコニー知らない? ああ、スウェーデンおヌル様が用いて定着した言葉だからか。コニーはスウェーデン語は馴染みがないかな? 確か蛍様はもっと短い日本語で言ってたような」

「おう。俺は覚えてるぞ。お前が『SECセックってフランス語で乾いたって意味だけど、乾いてるどころかむしろ、欲望で湿り脂ぎってそうなはらだ』っつうのが印象的でよ。蛍様を狙ったオッサンども相手に、彼女しょっちゅうキレ散らかしてただろ。『セクハラ!』って」

 セクハラ。
 ティーンエイジャーの蛍様、可哀想な目にあってたんだね。
 苦労したんだなぁ…… 
 済んだこととはいえ、もやもやした気持ちになる。
 でも泣き寝入りせず、逞しくて元気の良い蛍様の様子も伝わってきて、少しほっとした。

 そっか、二人乗りって体が密着するんだもんね。
 ダイレクトに肌感覚が伝わらないようにか。
 
 不幸な事故?
 おしめっぽいやつ、格闘技の人が履くプロテクターみたいだ。
 そっか、反動とかでぶつかって、アイタタタってなったら一大事だもんね。
 恥ずかしがったらダメだと思うけど。
 そんな話題は友達でも異性だと、ちょっと恥ずかしくなっちゃう。
 だって女の子だもん。

 基本的に前方に小柄、後ろに大きい人間の組み合わせで二人乗りし、もちろん小柄な者同士は当然ありとのこと。

「おらのように小柄な男や女性が、お客様がら人気指名騎手だんてよ。こんたにめんけこんなに可愛い嬢っちゃがその気になって、うぢの牧場で働いでくれだら、花形騎手さ違いね」

 リンゼル島での仕事の初スカウト、にひひ、やったね。
「爺っちゃ、ありがとう! まだ来たばっかりだから、いろいろ世界を見て試して考えるね。もしもそんな決断のときがきたら、よろしくお願いしま~す」

「「男の客は却下!!」」
 クレールとエタンから、声を揃えて待ったコールがかかった。

「コニーが穢れる!!!」
「ジジイ! ありえねえ!」

「はは、私も男性との身体接触は是非とも避けたいねえ。だからエタンは特別だよ~」



 パラシュートをはじめ、騎手との連結パーツは後方の人間、エタンがもろもろ装着する。

 私はロクムの飛行装備を点検する。

 飛行鞍の腹帯のチェック。

 鞍といっても、いつもの重さを感じなくさせる透明な糸でできてる、お座布団みたいなやつ。
 中には魔植物から抽出した、ムニっとした緩衝材が入ってる。

 もう一本の腹帯は、搭乗者の腰と繋ぐ安全ベルト。
 
 例の糸は『モーリィン』といって、外森で飼育されてる虫の魔生物『モーリィボン』の繭からとる、と爺っちゃに教えてもらった。
 
 後部搭乗者用のエキストラ鎧臨時あぶみを取り付ける。

 飛行用頭絡とうらくは、ハミのついていない無口頭絡むくちとうらく
 柔らかなモーリィンをよったロープで編まれ、耐久性にも優れてるから、手綱たづなも平織りの同素材でできている。

「爺っちゃ。ロクムは私の言ってる指示を聞いて理解してるみたいなの。肩を叩いたりでもいけるから、慣れたら飛行用の頭絡しなくても良くなる?」

「いや。羽馬の張るバリアは全て遮断するわげでねがら。強風や速度上げるど風ゴウゴウ、聞ごえねがもしれねぞ。
それにバリアの恩恵は、器具さ介してでも、羽馬にどっかが接着してなぇば受げでね。座った尻と腹の安全ベルトからだげでねぐで、飛行鞍の取っ手ど、頭絡の手綱。両方握ったほうがええ」

 ギャロ爺っちゃは厳しさを瞳にのせ、無口頭絡を私に手渡す。

「一番重要なのはな、嬢っちゃん。どんたに絆深めでも、騎乗したら騎手が制御してらんだど、羽馬さ誇示するごどだ。
頭絡の手綱たづなは騎手の命綱いのちづな。己で握れ。
羽馬にとってもな。頭絡は、装着したら自由飛行でねぐで、『主人の命背負って飛ぶ』気合いを入れる、戦闘兜せんとうかぶとだ」

 なるほど……諸々納得。

「ロクム、馬具は嫌じゃなかった? この頭絡はね、空において私の命綱なの。
誇り高き空の王者ロクム。
これはあなたの自由を妨げるものではなく、私の命を預ける信頼の証です。私と飛行するときは戦兜いくさかぶとだと思って、装着してくれると嬉しいな」

 初めてのときこそ、何気なくパッとつけてしまったけど。
 ギャロ爺っちゃの教えを聞き、今一度、ロクムに対して、自分の考えをきちんと告げねば、と思った。

「飛ぶならあなたと一緒がいい。ロクム。その虹の翼でこれからも、私をこの世界のいろんな場所に連れて行ってくれる?」

 ロクムは虹色の翼をふぁっさぁ~っと広げ、頭絡をつけやすいように頭を下げてくれた。

「ありがとう。天翔あまかける私の白き騎士」

 私はロクムの首筋にそっと抱き付き、頬を寄せた。

「むぐぁ!」

 ポンポが突然叫んで、私の頭の上にぽいんと飛び乗ってきた。
 そしてロクムと私のほっぺの隙間に、しゅるんと割り込むように滑り込み。

 むぷ~むぷ~、唸る。
 ぷんっっと膨らんで、密接している部分を完璧に引き剥がした。

「おらにはおめの気持ぢが分がるぞ、ポンポ様! おらも羨ましぇ! 『天翔る白騎士』なんぞ、御馬番おうまばんより上等で重要そうでねえが。おらだって、白髪はくはつだんて『天翔る白髪爺しらがじぃ』じゃ。はりゃ? 白騎士ど音はそう遠ぐねが、なんか締まりがわりぇぞ?」

「僕にも分かる! ほっぺをくっつけて抱きしめられるなんて! 新参者で、しかも既婚者のくせに全く図々しい。僕だって、まだやってもらっていないんだからな」

「俺も分かるぜ。お前だけなんかカッコ良すぎじゃねえかロクム。俺もイカした二つ名をコニーにつけてもらいてえ」

 もお、みんな、ロクム相手になあに言ってんだか。

「爺っちゃは白騎士もじらなくても、私の尊敬する馬の師匠だよ? 
エタンは二つ名欲しいなんて、それこそ妹のエレオノーラさんに『いい歳ぶっこいて』って言われちゃうよ?
クレールは。まだっていうか、これから先もそんなことクレールにはしないから」

 全く男子はお子ちゃまね。

「ポンポ~! またヤキモチ妬いちゃったの? くふふ、可愛いなあ。あのね、ポンポにはね。よかったら私の家族になって欲しいと思ってるんだけどな? 大好きだよ」

 あはは、むぬ! って、すごく喜んでくれてる~嬉しいな~。

「クレ坊。おめだぢの『すまほ』とやらで、さっきの騎士叙任式、撮影したが?
はぁ~まったぐもう、なにぼさっとしてんだ。
クレ坊が、コニー嬢っちゃの羽馬伝説一緒さ作っていごうっつったでねえが。世紀の瞬間だったのに、仕方ねな。おらにも『すまほ』今度用意してけれ」

そっから話の流れで、爺っちゃも私の支援指導係に加わることが即決定して。

「しぇば、えぐ行くべか」

 さあ、エタンを後ろに乗せて、タンデムフライト洒落込みますか~。






【次回予告 第140話 吊り橋効果を回避せよ】

(すみません。過労と体調不良(微熱続き)で執筆が滞ってます。いつも10話以上常にストックを持っての投稿なのですが、現在ストック5話。パンツァータイプ執筆で、辻褄合わなくならないよう、先を書きつつストックの手直ししていくスタイルなのです。週一投稿でしたが、ストック10話超えるまで10日~2週間一投稿になると思います。諦めずしつこく続けるモットーですので( ・∇・)そこは安心して、最後までお付き合いいただければ、と心より願っています。いつもお読みくださりありがとうございます。勇気づけられています。山盛りの感謝を!)

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