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王子の追憶
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今から4か月前。王立学園からの卒業まであと2か月というところで僕は、ある決断を下した。
「いずれミランダとの婚約を破棄するよ。」
そう伝えた時のライラの嬉しそうな顔ったらなかった。僕たちは1年前にライラが男爵家の庶子だと判明して王立学園に転入してきて、出会った。貴族らしい貴族との関係に疲れていた僕にとって、天真爛漫なライラは最高の癒しだった。2人が親密になるのに1ヶ月もかからず、甘い日々を過ごしていた。外聞がよくないことはわかっていたし、彼女がその言動や行動が学園内で顰蹙を買っていたのも気にはなった。ただライラは勘違いされやすい子で可哀そうだと思っていたのも事実だ。
その日いつも2人で語り合い愛を育んでいた中庭に、ライラは泣きながら、泥だらけの状態でやってきた。
「うぅ……ひっく……アンソニー様ぁ、実はずっと私いじめられていてぇ……。」
転入以来、ライラはずっと嫌がらせを受けてきたらしい。教科書やノートを破かれ、机やいすを捨てられ、今日は挙句の果てに噴水に突き落とされたと言う。
そんなことをする生徒がいるなんてにわかには信じがたかったが、「たぶん、アンソニー様の婚約者のミランダ様だと思うんです……。」老婆みたいな白髪の少女が走り去るのを見たのでと、泣き腫らした目でライラが訴えてくるのでさらに驚いた。
ミランダ・ハレルソン公爵令嬢。
王家の守りである3公爵家のうちのハレルソン家のご令嬢で、僕の婚約者でもある。彼女とはマーレイ公爵家令息ブライアン、フランクリン公爵家令嬢アナスタシアと、幼馴染として育った。
ミランダはその整った冷たい容姿とは裏腹におてんばそのもの、一緒にふざける僕、それをいさめるのが1つ年下だけど落ち着いたアナスタシア、そんな僕らを見守るブライアンという4人で、幼いころは王宮の庭でよく遊んだ。
そのままの関係でいられると思ったのに。成長していくうちにいつしかミランダを見るブライアンの目が熱を帯びるようになり、彼女もブライアンを慕うようになった。相変わらず僕らは親しい友達だったが、ときおり2人には甘い空気がただよう。それが僕は面白くなかった。
そんなおり、父と母に呼び出された。「そろそろあなたの結婚相手を決めようと思うのだけれど、いいなと思うご令嬢はいる?」優しく聞いてくれる母。確かに何人かのご令嬢とお茶会を共にしたことがあったが、ぴんとはこなかった。
いないと答えようとした僕に、ふととある考えが思い浮かんだ。ミランダを選んだらどうだろう?王妃教育で今よりもっと一緒にいられるようになるし、何よりあの2人の雰囲気を壊してしまえる。
「ミランダがいいです!」と僕は元気に答えた。名案だと思ったからだ。父と母は戸惑うような顔をしたが、「彼女なら、よく知っているし、あの”公爵家”のご令嬢だから安心ね。」と納得し、そのまま王命で彼女との婚約が決まった。
なのに……それからミランダは変わってしまった。もちろん今まで通り僕らは遊ぶし、彼女が王妃教育で王宮へ通うようになったので、僕らの時間は増えた。ただときおりどこか心あらずといった態度を取るようになり、王妃教育のせいか彼女の活発さは影をひそめた。
申し訳ない気持ちがあるにはあったが、僕自身も立太子に向け帝王学が始まったせいでそれどころではなくなった。
いつからだろう……会うたびに彼女がため息をつくようになったのは。優秀な彼女はすでに王妃教育を終え、王宮での仕事に着手しつつあった。僕は苦手な軍略や君主論、語学が進まず、すでに立太子が王立学園卒業後に伸ばされていた。別に僕自身は延期も構わなかった。5つ下に弟がいるが、どちらかというと武に秀でていた彼を特にライバル視はしておらず、このままなんとなく立太子しいずれは国王になるのだろうと思っていたからだ。
「アンソニー様は治水にご興味があるのですね。」
「ああ、よく地形を見ては議論しているよ。僕のアイデアは面白いと農水大臣が言ってくれてね……。」嬉しくなって彼女に話そうとしたのだが。
「それもよいですが、バイラル国の公用語について学習の進捗状況が悪いと先生がおっしゃっていまして……。」とそこから彼女からのお説教が始まってしまった。
会うたびにそういう話をするようになった。いいさ、彼女は優秀だから。でも僕は違う。それに僕と結婚しなければそんな彼女だってなんの役にも立たないのに。
何で彼女と婚約なんかしたのかな。
学園に入学してからも退屈な日々が続いた。王立学園は貴族社会の縮図。腹の探り合いに派閥、そして権力を得るために強者に媚びる。そんなよどんだ沼に現われたのがライラだったのだ。
ライラは可愛かった。いつでも僕を褒め、励ましてくれた。
だからミランダが彼女をいじめていると知った時、婚約を破棄してしまおうと思った。
泥だらけのライラを慰め、学園内の王家専用の居室で湯あみをさせ、そして……初めて彼女と関係を持った。
それからはますますライラとの関係は親密になった。もう婚約破棄するつもりなのだから、他の学生の目なんて気にするものか。僕らは人目をはばかることなく一緒にいるようになった。
1ヶ月が経った頃、ライラが妊娠したと僕に告げた時は驚いたが、2人の愛の結晶ができたことが本当にうれしかった。
「ミランダとの婚約を破棄する。……そして僕と結婚して欲しい、ライラ。」僕のプロポーズにうるんだ目で「はい。」と承諾したライラは世界で一番可愛かった。このときが僕の幸せの絶頂だったに違いない。
それから1週間たったある日、僕はミランダを呼び出した。僕は滅多に人の来ない礼拝堂にしようとしたが、なぜか彼女から人目の多い中庭の「女神の泉」の近くで会うことを求められた。
不思議に思ったが、「婚約破棄した後、その場でアンソニー様と私の婚約を発表すれば、きっとみんな祝ってくれますよ!」というライラの言葉に気を良くして、彼女を伴って泉へ行くと、まるで泉の精霊のようなミランダが待ち受けていた。
「ミランダ・ハレルソン公爵令嬢!僕は君との婚約を破棄する!」穏便にと思っていたはずなのに、なんだか周りの学生たちが観客のように思えてきて、僕はそう宣言するとそこからミランダの罪を大声で糾弾した。
なぜだかどんどん僕の語気は強まっていく。燃え盛る炎のような怒りにとらわれた僕が彼女への言葉を吐ききると、黙って聞いていた彼女が「殿下がおっしゃりたいのは、それだけですか。」と冷たく答えた。
そこからは、彼女の独壇場だった。僕が責めたミランダがライラをいじめていたという日時を聞き、そしてアリバイをまわりの学生たちや、そして王家が付けている護衛達が証言したのだ。
「それに国王陛下の決裁はいただいたのですか?私たちの婚約は王命ですわよ。」そうミランダは告げた。ライラの妊娠に浮かれていた僕はぐうの音も出なかった。急速に気持ちがしぼんでいく僕に、彼女が歩み寄って耳元で何かささやく。なぜだかその時ミランダが何を言ったか思い出せないのだが、次の瞬間僕は激情にかられ、彼女を泉へと突き落としていたのだ。
響き渡る悲鳴。騒ぎを聞きつけ僕らを心配してきたのか、ブライアンやアナスタシアの姿も見える。泉に駆け寄るブライアンだったが、ショックを受けたライラが倒れこみそうになったところを、後ろから抱きかかえるような形になった。
「ミランダ!」ライラを僕に放り投げるように任せると、彼は冷たい泉に飛び込んだ。おてんばだったミランダだが、王宮の噴水に落っこちてからは水場には近寄らなくなったのだ。当然泳げない。
ずぶぬれになりながら、泉から彼女を助け出したブライアン。引き上げられたミランダは透き通るような髪が濡れて、血の気の無い白い顔に張り付いている。固く閉じられた目に、血の気の無い唇。心肺蘇生と人工呼吸を彼がほどこしたが、2度と彼女が目覚めることはなかった。
「いずれミランダとの婚約を破棄するよ。」
そう伝えた時のライラの嬉しそうな顔ったらなかった。僕たちは1年前にライラが男爵家の庶子だと判明して王立学園に転入してきて、出会った。貴族らしい貴族との関係に疲れていた僕にとって、天真爛漫なライラは最高の癒しだった。2人が親密になるのに1ヶ月もかからず、甘い日々を過ごしていた。外聞がよくないことはわかっていたし、彼女がその言動や行動が学園内で顰蹙を買っていたのも気にはなった。ただライラは勘違いされやすい子で可哀そうだと思っていたのも事実だ。
その日いつも2人で語り合い愛を育んでいた中庭に、ライラは泣きながら、泥だらけの状態でやってきた。
「うぅ……ひっく……アンソニー様ぁ、実はずっと私いじめられていてぇ……。」
転入以来、ライラはずっと嫌がらせを受けてきたらしい。教科書やノートを破かれ、机やいすを捨てられ、今日は挙句の果てに噴水に突き落とされたと言う。
そんなことをする生徒がいるなんてにわかには信じがたかったが、「たぶん、アンソニー様の婚約者のミランダ様だと思うんです……。」老婆みたいな白髪の少女が走り去るのを見たのでと、泣き腫らした目でライラが訴えてくるのでさらに驚いた。
ミランダ・ハレルソン公爵令嬢。
王家の守りである3公爵家のうちのハレルソン家のご令嬢で、僕の婚約者でもある。彼女とはマーレイ公爵家令息ブライアン、フランクリン公爵家令嬢アナスタシアと、幼馴染として育った。
ミランダはその整った冷たい容姿とは裏腹におてんばそのもの、一緒にふざける僕、それをいさめるのが1つ年下だけど落ち着いたアナスタシア、そんな僕らを見守るブライアンという4人で、幼いころは王宮の庭でよく遊んだ。
そのままの関係でいられると思ったのに。成長していくうちにいつしかミランダを見るブライアンの目が熱を帯びるようになり、彼女もブライアンを慕うようになった。相変わらず僕らは親しい友達だったが、ときおり2人には甘い空気がただよう。それが僕は面白くなかった。
そんなおり、父と母に呼び出された。「そろそろあなたの結婚相手を決めようと思うのだけれど、いいなと思うご令嬢はいる?」優しく聞いてくれる母。確かに何人かのご令嬢とお茶会を共にしたことがあったが、ぴんとはこなかった。
いないと答えようとした僕に、ふととある考えが思い浮かんだ。ミランダを選んだらどうだろう?王妃教育で今よりもっと一緒にいられるようになるし、何よりあの2人の雰囲気を壊してしまえる。
「ミランダがいいです!」と僕は元気に答えた。名案だと思ったからだ。父と母は戸惑うような顔をしたが、「彼女なら、よく知っているし、あの”公爵家”のご令嬢だから安心ね。」と納得し、そのまま王命で彼女との婚約が決まった。
なのに……それからミランダは変わってしまった。もちろん今まで通り僕らは遊ぶし、彼女が王妃教育で王宮へ通うようになったので、僕らの時間は増えた。ただときおりどこか心あらずといった態度を取るようになり、王妃教育のせいか彼女の活発さは影をひそめた。
申し訳ない気持ちがあるにはあったが、僕自身も立太子に向け帝王学が始まったせいでそれどころではなくなった。
いつからだろう……会うたびに彼女がため息をつくようになったのは。優秀な彼女はすでに王妃教育を終え、王宮での仕事に着手しつつあった。僕は苦手な軍略や君主論、語学が進まず、すでに立太子が王立学園卒業後に伸ばされていた。別に僕自身は延期も構わなかった。5つ下に弟がいるが、どちらかというと武に秀でていた彼を特にライバル視はしておらず、このままなんとなく立太子しいずれは国王になるのだろうと思っていたからだ。
「アンソニー様は治水にご興味があるのですね。」
「ああ、よく地形を見ては議論しているよ。僕のアイデアは面白いと農水大臣が言ってくれてね……。」嬉しくなって彼女に話そうとしたのだが。
「それもよいですが、バイラル国の公用語について学習の進捗状況が悪いと先生がおっしゃっていまして……。」とそこから彼女からのお説教が始まってしまった。
会うたびにそういう話をするようになった。いいさ、彼女は優秀だから。でも僕は違う。それに僕と結婚しなければそんな彼女だってなんの役にも立たないのに。
何で彼女と婚約なんかしたのかな。
学園に入学してからも退屈な日々が続いた。王立学園は貴族社会の縮図。腹の探り合いに派閥、そして権力を得るために強者に媚びる。そんなよどんだ沼に現われたのがライラだったのだ。
ライラは可愛かった。いつでも僕を褒め、励ましてくれた。
だからミランダが彼女をいじめていると知った時、婚約を破棄してしまおうと思った。
泥だらけのライラを慰め、学園内の王家専用の居室で湯あみをさせ、そして……初めて彼女と関係を持った。
それからはますますライラとの関係は親密になった。もう婚約破棄するつもりなのだから、他の学生の目なんて気にするものか。僕らは人目をはばかることなく一緒にいるようになった。
1ヶ月が経った頃、ライラが妊娠したと僕に告げた時は驚いたが、2人の愛の結晶ができたことが本当にうれしかった。
「ミランダとの婚約を破棄する。……そして僕と結婚して欲しい、ライラ。」僕のプロポーズにうるんだ目で「はい。」と承諾したライラは世界で一番可愛かった。このときが僕の幸せの絶頂だったに違いない。
それから1週間たったある日、僕はミランダを呼び出した。僕は滅多に人の来ない礼拝堂にしようとしたが、なぜか彼女から人目の多い中庭の「女神の泉」の近くで会うことを求められた。
不思議に思ったが、「婚約破棄した後、その場でアンソニー様と私の婚約を発表すれば、きっとみんな祝ってくれますよ!」というライラの言葉に気を良くして、彼女を伴って泉へ行くと、まるで泉の精霊のようなミランダが待ち受けていた。
「ミランダ・ハレルソン公爵令嬢!僕は君との婚約を破棄する!」穏便にと思っていたはずなのに、なんだか周りの学生たちが観客のように思えてきて、僕はそう宣言するとそこからミランダの罪を大声で糾弾した。
なぜだかどんどん僕の語気は強まっていく。燃え盛る炎のような怒りにとらわれた僕が彼女への言葉を吐ききると、黙って聞いていた彼女が「殿下がおっしゃりたいのは、それだけですか。」と冷たく答えた。
そこからは、彼女の独壇場だった。僕が責めたミランダがライラをいじめていたという日時を聞き、そしてアリバイをまわりの学生たちや、そして王家が付けている護衛達が証言したのだ。
「それに国王陛下の決裁はいただいたのですか?私たちの婚約は王命ですわよ。」そうミランダは告げた。ライラの妊娠に浮かれていた僕はぐうの音も出なかった。急速に気持ちがしぼんでいく僕に、彼女が歩み寄って耳元で何かささやく。なぜだかその時ミランダが何を言ったか思い出せないのだが、次の瞬間僕は激情にかられ、彼女を泉へと突き落としていたのだ。
響き渡る悲鳴。騒ぎを聞きつけ僕らを心配してきたのか、ブライアンやアナスタシアの姿も見える。泉に駆け寄るブライアンだったが、ショックを受けたライラが倒れこみそうになったところを、後ろから抱きかかえるような形になった。
「ミランダ!」ライラを僕に放り投げるように任せると、彼は冷たい泉に飛び込んだ。おてんばだったミランダだが、王宮の噴水に落っこちてからは水場には近寄らなくなったのだ。当然泳げない。
ずぶぬれになりながら、泉から彼女を助け出したブライアン。引き上げられたミランダは透き通るような髪が濡れて、血の気の無い白い顔に張り付いている。固く閉じられた目に、血の気の無い唇。心肺蘇生と人工呼吸を彼がほどこしたが、2度と彼女が目覚めることはなかった。
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