たとえばこんな、御伽噺。

弥湖 夕來

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薔薇園のラプンツェル

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「さぁ、できましたよ。お嬢様方」
 最後の花飾りを髪に止め、王妃付きのレディメイドは鏡越しにアネットの髪型を確認すると言った。
「ありがとう、リタ。助かったわ」
 やはり鏡越しにメイドの顔を見上げアネットは礼を述べる。
「よくお似合いですよ」
 姉からもらったドレスを着たアネットの姿を頭から爪先までもう一度確認し、メイドは満足そうに頷いた。
 豪華にカールした髪にドレスに飾られたものと同じ真紅の小バラを散らし複雑に結い上げてあった。
 エメラルド色のドレスはアネットの蜂蜜色の髪を格段に引き立てる。
「本当、来てくれなかったら間に合わなかったかも。
 アネットったら、着替えを始めなきゃいけない時間になっても帰ってこないんですもの」
 扇を手にリディアが言う。
「急いでください、お嬢様。
 もうお時間が…… 」
 メイドが促した。
「本当なら、王妃様にもみていただきたいのですが、無理そうですわ。
 早くサルーンへ向かってください」
 言われるままに向かったサルーンにはすでにほとんどの少女の姿があった。
 玉座には国王の姿もある。
 隣の王妃の椅子が空いているのを目にアネットは胸が痛んだ。
 毎日見舞いに行く時には、変らず元気そうな顔をしているが、すでに公式の場にわずかの時間でも顔を出すことができないほどその体調は悪化しているのだ。
「アネット、顔上をあげて、ね」
 現実を見るに耐えかね、顔をうつむかせてしまったアネットをリディアが軽く小突いた。
 同時にホールの中がいっせいにどよめく。
「みて、王子様方…… 
 正装姿もステキね」
 そこここからため息が漏れる。
 特にいつも庭師の作業着姿しか見ていないハーランの姿はまるで別物だ。
「あれ? どうしてサイラス先生や、セオドアさんがあの場にいるの? 」
 五人の王子の隣に並んだ男の顔にアネットは首をかしげた。
「何言っているのよ、アネット。
 サイラス先生は現国王陛下の末の弟さんで、セオドア様は王弟殿下のご長男でアイリス様のお兄様ですもの」
「王位継承権はないけれど、王族のご子弟だから? 」
「そうよ」
 リディアがたしなめるように言う。
 
 国王の言葉と共に舞踏会は始まった。
 少女たちはお披露目もかね、一人ひとり名前を呼ばれ王前にでて言葉をもらう。
「アイリス様、やっぱりきていないわね」
 身分の関係で一番に名を呼ばれていいはずのアイリスの姿はそこにはなかった。
「あんなに来たがっていたのに、残念ね」
「うん。どうかなって、さっきわたしもお願いにいったんだけど、あの乳母さんにものすごい顔で睨まれちゃった。
 当分アイリス様のお部屋にはいけないかも」
「アネット、あなたもしかして午後どこかに姿を消していたと思ったら、アイリス様のところに行っていたの? 」
「うん」
「呆れた。自分の身支度も放り出して? 
 王妃様がご自分のレディメイドお手伝いに貸してくださらなかったら間に合わなかったってことじゃない」
「どっちにしろ一人じゃ、この髪、結えないもの、リタがきてくれなかったら朝から掛かっても間に合わなかったかも? 」
「アネット、あなた本当にやる気なかったのね」
 呆れつくしたという感じでリディアつぶやいた。
 
 
 やがてホールに音楽が響きだす。
 滑らかに踊りだす数組のカップル。
 その光景をアネットはぼんやりと眺めていた。
 誰がパートナーになっても末席の自分の順番まで回ってくるのはまだだ。
 ホール中央に広がる少女達の色とりどりのドレスは花のよう。
 それをみているだけで華やいだ気持ちになった。
「踊っていただけますか? ラプンツェル」
 声に顔を上げるとそこには第5王子の顔がある。
「サシャ様? 」
 アネットは目を見開いた。
「僕じゃ、不満かな? 」
「いいえ、そんなこと! だって、私がサシャ様に一番にお誘いいただけるなんて思ってもいなかったから。ちょっとびっくりして」
 アネットは明らかに戸惑っている自分を感じていた。
「じゃ、いいよね」
「喜んでお受けいたします」
 アネットは差し出された少年の手にそっと自分の手を重ねる。
 始まった楽曲に乗ってステップを踏み出した。
 同時にホールの周囲から息が漏れる。
「どこのご令嬢だ? 」
「確か王妃様の…… 」
「さすが王妃様の妹御ですわね。
 王妃様のような輝く美しさはないけれど王妃様と同じ雰囲気をお持ちだわ」
「本当におかわいらしくて、サシャ様とお似合いのカップルですわね」
 あちこちから聞こえてくるささやき声にアネットは思わず顔が赤くなる。
「くすっ」
 耳元でサシャの笑い声がこぼれた。
「アネット、顔真っ赤」
「だって…… 」
 こんなに褒めてもらったことなんて今までなかったから、ものすごく気恥ずかしかった。
「それ、王妃様のドレスでしょ? 」
 そして、踊りながらいたずらっ子のようにからかう瞳でサシャは聞いてきた。
「やっぱりわかっちゃった? 」
「うん。それ、お父様からの贈り物だったんだ。それを着た王妃様はすごく嬉しそうだった」
「そんな、大切なドレスだったの? 」
 思わず大きくなりそうになった声をアネットはかろうじて抑えた。
「でも、アネットが着たほうがずっと似合っている。その蜂蜜色の髪がすっごくよく映えてとてもきれいだよ。
 さすがは姉妹だね。お義母さまはアネットに似合う色ちゃんとわかってて。
 サイズもぴったりだし
 ん? ぴったり?」
 首をかしげたサシャの視線がちらりとアネットの胸元に向かう。
「な、直したのよ。特に胸とか腰とか」
 隠しても仕方ないので正直に言ってしまう。直した場所が場所だけに少し恥ずかしくてアネットは顔を赤らめた。
「やっと、いつものアネットだ」
 サシャがふんわりとつぶやく。
 程なく楽曲はコーダを奏で、そして楽器は鳴り止んだ。
「終わっちゃったね。
 もう一曲って言いたいけど、マナー違反になるから諦めるね。
 また…… 」
 名残惜しそうにサシャは手を離し、アネットはその前でドレスの裾を上げ優雅に軽く膝を折る。
 ホールの片隅へ戻ろうと顔を上げ視線を戻すと、そこにライオネルの姿があった。
「姫君、一曲お相手願えますか? 」
 ライオネルは手を差し出しアネットの手をとる。
「ありがとう、サシャ様。また…… 」
 半ば強引に引き離されるようにしながら、アネットはようやくそれだけ口にした。
「何だよ? 俺じゃ不服か? 」
 振り回すような少し乱暴なリードをしながらライオネルは言う。
「いえ、あの、その…… 心の準備が。
 まさかライオネル様と踊れるなんて思っていなかったから…… 」
 先ほどのサシャの、たどたどしいけどまじめなステップとのギャップに戸惑い、上手に足が運べない。
 振り回されるようにするからか息が上がる。
 ステップのギャップ。
 ううん、そうじゃない。
 何かが自分の足をもつれさせ、鼓動を早めている。
 アネットは妙な感覚にとらわれていた。
 その背後には何故か先ほどとは違った痛みを伴いそうな強い視線がいくつも突き刺さる。
「わたしの順番ってもっと後のはずだし…… 」
 数合わせの為貴族の男性も複数参加してはいるが、この場に集まった少女たちの目当ては決まっている。一晩で踊れる回数などたかが知れているから、まさか自分の順番がこんなに早く回ってくるなんて思ってもいなかった。
「そんなの気にするなよ」
 何故か自分の手を握るライオネルの手に力が篭ったような気がした。
「そのドレス、見事だな。よく似合っている」
 しばらくすると、耳元でライオネルがポツリとつぶやいた。
「やっぱり王子様方にはわかりますよね、さっきサシャ様にも言われました」
 常に姉と一緒に生活している人には全部お見通しだったと思うとやっぱり少し恥ずかしくてアネットは顔を赤らめた。
「いや、そういう意味じゃない。
 本当に似合っていると思っただけで…… 」
 ライオネルは続きをあいまいにして戸惑ったようにアネットから視線をそらす。
「思ったより、ダンスは巧いな」
「乗馬はできないけれど、ダンスは大好きよ」
「レッスンの時に踊っている姿を一度も見たことがなかったから、苦手なのかと思ってた」
「それはライオネル様が毎回レッスンにお付き合いくださるわけじゃないから、知らなかっただけじゃ…… 」
「なら、大丈夫だな。
 俺のつま先に足乗せて」
 ライオネルが耳元で囁く。
「何? 」
「いいから」
 促されてそっと男のつま先に足を乗せる。
「暴れるなよ」
 ライオネルが言うやいなや身体がふわりと浮き上がる。
「あ? きゃ……  」
 予期せぬことにアネットは悲鳴に似た小さな声をあげた。
 アネットの身体は腰を支えられたまま乗せた足を支点に軽がると持ち上げられていた。
 持ち上げられたせいで下になったライオネルの顔がいたずらっ子みたいに輝く。
 そのままのターン。同時にドレスの裾がふわりと広がる。
 仕立てのせいだろうか、ドレスは本当の花が開くかのように優雅に広がり揺れて華やかに動く。
 カールされ緩やかに背中に広がる蜂蜜色の髪がそれに更に彩を添える。
 周囲からどよめきが上がると同時に動きが止まった。
 そして、一斉に視線が集まった。
「もう、下ろして。恥ずかしい、かも」
 痛いほどの視線に戸惑い、アネットは小声で懇願した。
「ああ、悪い」
 言われて気がついたのか、ようやくライオネルはアネットの足を床に戻す。
 そして通常のステップに戻ってゆく。
「驚かせたか? 」
 ライオネルはうっすらと笑みを作る。
「ええ、だってあんなの、レッスンで習わなかったし…… 」
「普通はないよ、あんなステップ。
 あれ、陛下の十八番のオリジナル。
 そのドレスさ、それが一番映えるように作ってあるって聞いたぜ」
「だから、こんなにきれいに広がったのね」
「そういうこと。
 せっかくのドレスなんだから、本領発揮させてやらないとな」
 ライオネルが目を輝かせる表情は本当にいたずらっ子みたいだ。
 けれどその言葉にアネットの胸はちくんと痛んだ。
 そっかドレスの…… 
「どうした? 」
 急に下を向いてしまったアネットの様子にライオネルは首をかしげ、顔を覗き込んでくる。
「ううん、なんでもない」
 アネットは、胸の中に湧き上がってきたかすかな黒いもやもやを追い払うように首を激しく横に振った。
 
 

 
「アネット、起きられる? 」
 カーテンを開けながらリディアはベッドの中のアネットに声をかけた。
「ん…… も、少し…… 」
 ベッドの中でアネットはうめく。
「もうお昼になるんだけど、食事できそうもない? 
 食べ損ねると夜までお預けよ」
「ん、行く…… 」
 疲れは残っていたけれど、さすがの空腹には耐え切れず、アネットはようやく起き上がる。
「無理もないわよね。結局夕べ夜通し踊りっぱなしだったんだから」
 リディアは同情的に言ってくれると、ドレッサーの前に座ったアネットの髪にブラシを通しはじめた。
 ライオネルとのダンスのあと、居合わせた貴族の子弟達に次々に申し込まれ、結局終わりまで休むこともできなかった。 
 そのせいか躯は泥のように重く、寝不足のせいで頭もうまく動いていない。
「まさかね、アネットが王子様二人ものファーストダンスのお相手になるなんて。
 おかげでお姉さま方のイライラ最高潮よ」
 少しだけ非難を含んだ声と、同じ視線を鏡越しに送りながらリディアはため息をついた。
「どうしてそうなるのよ? 」
 思ってもみない言葉に、背後のリディアを振り返る。
「確かにわたしサシャ様のファーストダンスのお相手はしたけれど、あれはたぶんアイリス様の代役みたいなものだし。
 ライオネル様はその後だったもの、ファーストダンスじゃないでしょ。
 そりゃ、わたしの身分じゃセカンドだって恐れ多いとは思うけど…… 
 ……その、誘われたのにお断りするのも失礼でしょ」
 リディアの表情に申し訳ないものを感じて、声がだんだん小さくなる。
「そっか、アネットは始まると同時にサシャ様とホールの中央へ出てしまったから知らなくても無理ないのよね。
 実はライオネル様お姉さま方に囲まれて身動きできない状態になっていたというか…… 
 お姉さま方の誰かを指名すればそこから抜けられたはずなのに、しなかったのよねー。
 で、誰とも踊らずにいて、一曲目が終わると同時にお一人でホールの中央にでていかれて、いきなりアネットの手をとるんだもの。もう、びっくりよ。
 お姉さまの中には白目剥いてひっくり返った方もいたみたいよ」
「たかがダンスの順番で? 何もひっくり返るほどのことじゃないじゃない」
 その言葉にリディアの手が止まる。
「アネット、まさか知らなかったなんていわないわよね…… 」
 鏡に映ったリディアの顔がわずかに青ざめ引きつって見えた。
「何を? ま、そりゃ、ダンスの回数が多ければそれだけ王子様方と親密になれるってことだから、わからなくもないけど…… 」
「あのね、アネット。
 今回の、この国王様主催の公式な舞踏会で国王陛下の前で王子方に一番最初に手をとられたってことはね、王子様の気持ちがほとんど固まっているってことを意味しているのよ」
 言い聞かせるようにリディアは言う。
「この人がわたしの相手ですって、親に…… 
 って、この場合は国王陛下だけど、報告しているようなものなんだから」
「う、そ…… 」
「アネットに嘘ついてどうするのよ。
 正直わたしだってアネットじゃなければ、歯軋りして悔しがりたい気分よ。
 それだけならまだしも、ライオネル様とのあのダンス。
 もう、二人で『意気投合してます』って言っているようなものじゃない」
「わたし、そんなつもり、ちっとも! 」
「わかってる。ここに来てからずっとアネットの傍にいるんだもの。
 だけどね、他の人にはそうは見えないのよね。
 アネットは暢気にそんなこと知りませんでしたっていっても、王子様方は本気だったと思うのよね」
「どうしよう…… 」
 いくら知らなかったとはいえ、とんでもないことをしでかしてしまった。
 考えるだけで額から汗が滲んできそうだ。
「知らないわよ、そんなの。
 自分でどうにかしなさいよ。
 ……でも、本当に、きれいだった」
 リディアはほんのりと笑みを浮かべる。
「きれいなわけよ。このドレス、妙にひだやフリルが多いと思ったら、あのダンスのステップのために作ってあったんですって。
 昨日踊りながらライオネル様が教えてくれたの」
「でも、それだけじゃないと思うな。
 いくらダンスが得意でも、あのステップ急にやれって言われたら、わたしじゃ怖くてできないもの。
 それなのにアネットとライオネル様息ぴったりだったし」
「そう、なの、かな? 」
 正直ライオネルのエスコートはお世辞にもうまいとはいえなかった。
 力任せに勝手に振り回されて、ついてゆくのがやっとだ。
 でも、何故かそれが嫌じゃなかった。
 自分を引っ張ってくれる力強い手はとてもアネットを安心させてくれた。
「さ、いいわ」
 アネットのまだわずかにカールの残った髪をいつもどおりにまとめ、リボンで毛先を縛ると、リディアは立ち上がる。
「行きましょう。わたしもおなかぺこぺこ」
 二人は揃ってダイニングへ向かった。
 
 
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