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薔薇園のラプンツェル
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「お姉ちゃん。これ、返すね」
その日の午後、アネットは花ではなく昨夜のドレスを抱えて姉の部屋を訪れると同時に言った。
抱えてきたドレスをまっすぐに差し出す。
「どうして? お気に召さなかったのかしら。あんなに喜んでくれていたのに、やっぱりわたくしのお下がりじゃいけなかった? 」
王妃は目を丸くした。
「ごめんなさい、昨日サシャ様に聞いたの。このドレス、お姉さまのとても大切なドレスだったって。そんな大切なものもらえないないわ」
勢いをつけて一気にしゃべる。
サシャだけではないライオネルもそういっていた。
このドレスは陛下が王妃のために、王妃が一番きれいに見えるようにと作った特別なもの、そんな大事なものをもらうわけにはいかない。
「いいのよ。実はね、言い出したのは陛下の方なの。
本当はあなたが恥をかかないように充分なお支度をしてあげたいんだけれど、今回のことはどのお家のご令嬢も公平に扱わなくてはいけないから、それができないって。
それでもせめてドレスくらいは角が立たないように用意してあげたいって。
わたくしからの下賜って形なら、どのご令嬢にも大きな顔していられるでしょう。このドレスならあなたにとてもよく似合うんじゃないかって」
「でも…… 」
「もっていらっしゃい。
舞踏会は昨日だけじゃないわ。まだ何度もあるそうよ。伯爵様が用意してくださっただけでは心もとないわ。
それに…… わたくしにはもう着られそうにないから」
王妃はそっと瞳を伏せる。
わかっているのだろうか、自分の命がもう長くないことを。
「お姉ちゃん…… 」
呼びかけてみるがその先が続かない。なんと返していいのか言葉にならない。
「特に腰と胸、そんなに直してしまったら、わたくしに着られるわけないでしょう。
大丈夫、心配しないでもわたくしはまた陛下にあつらえていただきますもの」
不意に顔を上げると笑顔をこぼした。
その笑顔が痛々しくて、アネットはもうそれ以上何もいえない。
「また、来るね」
いたたまれなくなって病室をでる。
このまま居たらきっと知らずに涙をこぼしてしまいそうだ。
でなくても、とんでもない顔になっている。
部屋のドアを閉めると、アネットはとぼとぼと廊下を歩き出す。
気を抜くとこぼれそうになる涙をこらえる為に床に敷かれたじゅうたんの幾何学模様の数を数えながら。
「……つ、ごめんなさい」
突然何かにぶつかり、アネットは打ち付けた鼻を押さえながら顔を上げた。
「こんなところにいたんですか? 」
目の前には少しふくよかな、流行おくれの質素なドレスにエプロン姿の女。
両腕を腕の前で組んですごい形相でアネットを見下ろしている。
アイリスの乳母だ。
「姫様が、どうしてもあなたとお話がしたいとおっしゃるんで、探していたんですよ。
来てください」
突然アネットの腕をつかむと引っ張ってゆく。
「あの、どうして、わたし…… 」
事情を聞きたくて声をあげるが、乳母は耳を貸してくれる様子はなかった。
「まったく、何だってあたしがこんな…… 」
口の中で不平の言葉を繰り返すが、アネットの顔を見ようともしなかった。
「姫様、お連れしました」
アイリスの部屋につくと女は放り込むようにして手荒にアネットを部屋の中に押し込んだ。
「アイリスさ…… 」
静まり返った部屋の中でベッドの中で動く塊に、アネットはそっと声をかけた。
途端、
「アネットなんか大嫌いよ! 」
大きな声と共に枕がアネットめがけて飛んできた。
「どう、し、…… 」
驚いて、差し出しかけた手を伸ばすことを躊躇する。
「あの…… 」
戸惑って自分を連れてきた乳母に視線を送る。
「ご覧の通りです」
乳母は表情を崩さず、固く口を引き結ぶ。
……これは呼んでいるというのだろうか?
むしろ避けられているというほうがいいような……
もう一度乳母に視線を送ってみるが乳母はやはり口を閉じたままだ。
普通、こういう時乳母というものはとりなしたりあやしたりするものだと思うのだが。
どう対応していいのかわからなくてアネットはあからさまにひとつため息をついた。
「マーサはでてって」
アネットのため息に呼応して、毛布の下からポツリとアイリスの声がした。
乳母はアネットをひと睨みすると、言われたままに退室する。
部屋に響くドアの閉まる音を聞いて、ようやくアイリスは毛布を頭からかぶったまま起き上がった。
「サシャ様と、ファーストダンス踊ったんですって? 」
どこかうらみの篭ったような声でアイリスはつぶやくと毛布から這い出す。
その目は真っ赤に染まりまぶたがはれている。きっと夜どうし泣き通したのだろう。
「あ…… 」
アネットはこの時初めてアイリスがここにいる理由を悟る。
「アイリス様、もしかして…… 」
「そうよ…… 」
まだふてくされたままアイリスはアネットを睨みつける。
「だって、だって…… サシャ様誰にもとられたくなかったんだもの。
小さな頃からずっと一緒だったのに、もう一緒に居られなくなるなって、考えるのも嫌だったのですもの。
わかってるの、従兄弟ですもの。
ずっと一緒には居られないって……
だけどね。もう少し、もう少しだけ…… そう思っただけなのに……
みんなしてわたしの邪魔をするんですもの」
アイリスの目から涙がこぼれる。
「みんな、みんな大嫌いよ……
お父様も、おかあさまも、乳母も、アネットも! 」
そして声をあげてしゃくりあげ始めた。
もしかして舞踏会に出られなかったのって体調のせいじゃなくて?
アネットはベッドの端にかけると、そっとアイリスの頭に手を伸ばす。
何を言ってあげればいいのかわからない。
「ねぇ、どうして? どうして、サシャ様の申し込み受けたりしたの?
その気もないくせに、どうしてサシャ様の手をとったりなさったの? 」
「…… 」
怒りをそのままぶつけてくるアイリスの言葉にアネットは何も返せない。
リディアに聞くまで、まさか夕べの舞踏会がそんな重要な意味を持っていたなんて知らなかった。
なんて事実が、通るわけもない。
言い訳だと思われて更に相手の怒りを買うだけだ。
何にも知らずにうかつにもサシャ様とダンスを踊ってしまった自分が悪い。
「わかってるの、わたしの髪が黒いから、御伽噺の王女様になれないから、だからサシャ様はわたしをみて下さらないんだって。
どうして、わたしのじゃなくて、アネットの髪が金色なの? 」
ゆらり……
アイリスの躯がゆれ、ゆっくりと顔が上がる。
「ねぇ? どうして? 」
少しずつ間合いを詰めながらつぶやく。
「アネットの髪なんて無くなっちゃえばいいのよ! 」
その目に嫌なものを感じてアネットは反射的に身を引いた。
しかしひとつに編まれた髪だけはわずかに遅れ、アイリスの手に捕らえられる。
「アネットの髪、なんて…… 」
髪の束を握る手に力がこもり、引き寄せられる。
アイリスのこの小さな体のどこにそんな力があるのかと思うほどの強い力。
形相の変ったアイリスを前に恐怖に縛られアネットはその場を動くことができない。
「いらないのよ、こんな髪…… 」
どこかに隠し持っていたのだろう。
その手には銀色に鋭い光を放つナイフが握られていた。
「な…… 」
危険を悟りアネットの顔から血の気が引く。
誰かに助けを呼ぼうにも、恐怖に支配された躯は思うように動かず、悲鳴一つあげられない。
アイリスの表情が厳しくなり、ついで握り締めたアネットの髪にその刃先が当てられた。
「や…… 」
逃げなくちゃ、今すぐここから。
でないととんでもないことになる。
空白の頭の片隅でその本能だけが働いた。
わずかに自由になった身体で後ずさる。
握り締められ強く引かれた髪のせいでそれが精一杯だった。
傍らのテーブルに躓く。
バランスを崩し倒れる身体と共にテーブルが大きな音を立てて倒れた。
同時に髪を引き寄せられた力がふっと消えた。
「お嬢様! 」
「どうなさったのですか! 」
部屋の中で起こった大きな物音に形相を変え、ドアの向こう側に控えていた人影が飛び込んでくる。
部屋の中には、片手にナイフともう片手にアネットの髪の束を手に呆然と虚空を見つめるアイリスと、その傍らにテーブルと一緒に床に転がるアネットの姿。
何が起こったのかは一目瞭然だった。
その日の午後、アネットは花ではなく昨夜のドレスを抱えて姉の部屋を訪れると同時に言った。
抱えてきたドレスをまっすぐに差し出す。
「どうして? お気に召さなかったのかしら。あんなに喜んでくれていたのに、やっぱりわたくしのお下がりじゃいけなかった? 」
王妃は目を丸くした。
「ごめんなさい、昨日サシャ様に聞いたの。このドレス、お姉さまのとても大切なドレスだったって。そんな大切なものもらえないないわ」
勢いをつけて一気にしゃべる。
サシャだけではないライオネルもそういっていた。
このドレスは陛下が王妃のために、王妃が一番きれいに見えるようにと作った特別なもの、そんな大事なものをもらうわけにはいかない。
「いいのよ。実はね、言い出したのは陛下の方なの。
本当はあなたが恥をかかないように充分なお支度をしてあげたいんだけれど、今回のことはどのお家のご令嬢も公平に扱わなくてはいけないから、それができないって。
それでもせめてドレスくらいは角が立たないように用意してあげたいって。
わたくしからの下賜って形なら、どのご令嬢にも大きな顔していられるでしょう。このドレスならあなたにとてもよく似合うんじゃないかって」
「でも…… 」
「もっていらっしゃい。
舞踏会は昨日だけじゃないわ。まだ何度もあるそうよ。伯爵様が用意してくださっただけでは心もとないわ。
それに…… わたくしにはもう着られそうにないから」
王妃はそっと瞳を伏せる。
わかっているのだろうか、自分の命がもう長くないことを。
「お姉ちゃん…… 」
呼びかけてみるがその先が続かない。なんと返していいのか言葉にならない。
「特に腰と胸、そんなに直してしまったら、わたくしに着られるわけないでしょう。
大丈夫、心配しないでもわたくしはまた陛下にあつらえていただきますもの」
不意に顔を上げると笑顔をこぼした。
その笑顔が痛々しくて、アネットはもうそれ以上何もいえない。
「また、来るね」
いたたまれなくなって病室をでる。
このまま居たらきっと知らずに涙をこぼしてしまいそうだ。
でなくても、とんでもない顔になっている。
部屋のドアを閉めると、アネットはとぼとぼと廊下を歩き出す。
気を抜くとこぼれそうになる涙をこらえる為に床に敷かれたじゅうたんの幾何学模様の数を数えながら。
「……つ、ごめんなさい」
突然何かにぶつかり、アネットは打ち付けた鼻を押さえながら顔を上げた。
「こんなところにいたんですか? 」
目の前には少しふくよかな、流行おくれの質素なドレスにエプロン姿の女。
両腕を腕の前で組んですごい形相でアネットを見下ろしている。
アイリスの乳母だ。
「姫様が、どうしてもあなたとお話がしたいとおっしゃるんで、探していたんですよ。
来てください」
突然アネットの腕をつかむと引っ張ってゆく。
「あの、どうして、わたし…… 」
事情を聞きたくて声をあげるが、乳母は耳を貸してくれる様子はなかった。
「まったく、何だってあたしがこんな…… 」
口の中で不平の言葉を繰り返すが、アネットの顔を見ようともしなかった。
「姫様、お連れしました」
アイリスの部屋につくと女は放り込むようにして手荒にアネットを部屋の中に押し込んだ。
「アイリスさ…… 」
静まり返った部屋の中でベッドの中で動く塊に、アネットはそっと声をかけた。
途端、
「アネットなんか大嫌いよ! 」
大きな声と共に枕がアネットめがけて飛んできた。
「どう、し、…… 」
驚いて、差し出しかけた手を伸ばすことを躊躇する。
「あの…… 」
戸惑って自分を連れてきた乳母に視線を送る。
「ご覧の通りです」
乳母は表情を崩さず、固く口を引き結ぶ。
……これは呼んでいるというのだろうか?
むしろ避けられているというほうがいいような……
もう一度乳母に視線を送ってみるが乳母はやはり口を閉じたままだ。
普通、こういう時乳母というものはとりなしたりあやしたりするものだと思うのだが。
どう対応していいのかわからなくてアネットはあからさまにひとつため息をついた。
「マーサはでてって」
アネットのため息に呼応して、毛布の下からポツリとアイリスの声がした。
乳母はアネットをひと睨みすると、言われたままに退室する。
部屋に響くドアの閉まる音を聞いて、ようやくアイリスは毛布を頭からかぶったまま起き上がった。
「サシャ様と、ファーストダンス踊ったんですって? 」
どこかうらみの篭ったような声でアイリスはつぶやくと毛布から這い出す。
その目は真っ赤に染まりまぶたがはれている。きっと夜どうし泣き通したのだろう。
「あ…… 」
アネットはこの時初めてアイリスがここにいる理由を悟る。
「アイリス様、もしかして…… 」
「そうよ…… 」
まだふてくされたままアイリスはアネットを睨みつける。
「だって、だって…… サシャ様誰にもとられたくなかったんだもの。
小さな頃からずっと一緒だったのに、もう一緒に居られなくなるなって、考えるのも嫌だったのですもの。
わかってるの、従兄弟ですもの。
ずっと一緒には居られないって……
だけどね。もう少し、もう少しだけ…… そう思っただけなのに……
みんなしてわたしの邪魔をするんですもの」
アイリスの目から涙がこぼれる。
「みんな、みんな大嫌いよ……
お父様も、おかあさまも、乳母も、アネットも! 」
そして声をあげてしゃくりあげ始めた。
もしかして舞踏会に出られなかったのって体調のせいじゃなくて?
アネットはベッドの端にかけると、そっとアイリスの頭に手を伸ばす。
何を言ってあげればいいのかわからない。
「ねぇ、どうして? どうして、サシャ様の申し込み受けたりしたの?
その気もないくせに、どうしてサシャ様の手をとったりなさったの? 」
「…… 」
怒りをそのままぶつけてくるアイリスの言葉にアネットは何も返せない。
リディアに聞くまで、まさか夕べの舞踏会がそんな重要な意味を持っていたなんて知らなかった。
なんて事実が、通るわけもない。
言い訳だと思われて更に相手の怒りを買うだけだ。
何にも知らずにうかつにもサシャ様とダンスを踊ってしまった自分が悪い。
「わかってるの、わたしの髪が黒いから、御伽噺の王女様になれないから、だからサシャ様はわたしをみて下さらないんだって。
どうして、わたしのじゃなくて、アネットの髪が金色なの? 」
ゆらり……
アイリスの躯がゆれ、ゆっくりと顔が上がる。
「ねぇ? どうして? 」
少しずつ間合いを詰めながらつぶやく。
「アネットの髪なんて無くなっちゃえばいいのよ! 」
その目に嫌なものを感じてアネットは反射的に身を引いた。
しかしひとつに編まれた髪だけはわずかに遅れ、アイリスの手に捕らえられる。
「アネットの髪、なんて…… 」
髪の束を握る手に力がこもり、引き寄せられる。
アイリスのこの小さな体のどこにそんな力があるのかと思うほどの強い力。
形相の変ったアイリスを前に恐怖に縛られアネットはその場を動くことができない。
「いらないのよ、こんな髪…… 」
どこかに隠し持っていたのだろう。
その手には銀色に鋭い光を放つナイフが握られていた。
「な…… 」
危険を悟りアネットの顔から血の気が引く。
誰かに助けを呼ぼうにも、恐怖に支配された躯は思うように動かず、悲鳴一つあげられない。
アイリスの表情が厳しくなり、ついで握り締めたアネットの髪にその刃先が当てられた。
「や…… 」
逃げなくちゃ、今すぐここから。
でないととんでもないことになる。
空白の頭の片隅でその本能だけが働いた。
わずかに自由になった身体で後ずさる。
握り締められ強く引かれた髪のせいでそれが精一杯だった。
傍らのテーブルに躓く。
バランスを崩し倒れる身体と共にテーブルが大きな音を立てて倒れた。
同時に髪を引き寄せられた力がふっと消えた。
「お嬢様! 」
「どうなさったのですか! 」
部屋の中で起こった大きな物音に形相を変え、ドアの向こう側に控えていた人影が飛び込んでくる。
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