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舞台裏の夜啼鳥(ナイチンゲール)
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窓の外でする雨音は部屋の中のかすかな物音をかき消してくれる。
今夜はあの嫌いな月の光はここには届かない。
ベッドから身を起すと、ヴァイオレットは掛かっていた毛布を肩から羽織りなおし、その躯を被う。
傍らに視線を向けるとセオドアの寝顔がある。
ベッドサイドに置かれたフェアリーランプのかすかな炎が、その整った横顔を僅かに浮かび上がらせていた。
暫くその顔を見つめたあと、その頬にそっと手を伸ばし、ヴァイオレットは身をかがめて軽いキスを落とす。
次いでベッドを下りようと男に背を向けた途端、ふいに眠っているはずの男の手が伸び捕らえられた。
むき出しの腕がヴァイオレットの白い腕に、次いで腰に絡まり、そのままリネンのシーツの上に引き戻される。
「また、『これで終わり』なんて言うんじゃないだろうね」
逃すまいとするかのようにヴァイオレットのその細い腰に腕を絡みつかせたまま、男は呟くように訊いた。
「言ったでしょ?
わたくし、あなたの遊び相手にはなれても、あなたの伴侶にはなれなくてよ」
ヴァイオレットは絡みついている男の腕を拒絶するかのように解きほぐすと押しやる。
「そのことなら、気にする必要はないと言った筈だよ」
セオドアは言い聞かせるようにヴァイオレットに言って、再びその腕を絡みつかせてきた。
「知って、いたの? 」
茫然と男の顔を見てヴァイオレットは呟く。
「一応、調べたからね」
男は僅かに睫を伏せると言う。
「今回、ここに集まっているのは、仮にも近い将来王妃になる可能性のある娘達ばかりだから。
一応王族の血を引く伯爵家以上の娘と言うことにはなっているが、その辺りはきちんと線引きをしないと。
王族との血縁がある家系の少しでも欲のある貴族は、皆こぞってどこからか容姿の整った娘を連れてきて養女にしかねない」
男はそれがおかしくて仕方のないように笑みを浮かべる。
「確かに君はボナローティ侯爵家の養女だし、生まれた場所もここでおおっぴらにできるものじゃない。
だけど、その血は確かだよ。
君の父親は籍こそ抜かれてしまっているがエルグラン伯爵家の三男。ブライアン・エルグランだよ。
エルグラン家には僅かだが王族の血が入っている。
舞台ではライアン・フィッシャーと名乗っていたようだけどね。
母親は間違えなく先代ボナローティ侯爵令嬢だよ。
知ってのとおりボナローティ侯爵と君の母上の母親は王族の出だし」
セオドアはヴァイオレットを真直ぐに見つめる。
「父が? 伯爵家の? 」
初めての言葉にヴァイオレットは耳を疑う。
「知らなかったのか? 」
セオドアの問いにヴァイオレットは頷く。
「そんなこと、誰の口からもでなかったもの」
物心ついた時にはあの劇場の楽屋の隅に、脱ぎ捨てられた舞台衣装のように置かれていた。
母はすでに亡く、父親は酒びたりで、いつも一人震えていた。
そんな時、あの養父が迎えにきた。
男は自分を産んでくれた母の兄だと名乗ったから、少なくとも養父とは血縁があるとは思っていたけれど。
そのとき別れた父のことを教えてくれる人も噂する人も、ヴァイオレットの周りには誰もいなかった。
社交界に出て、エルグランという伯爵家があることは知っていた。だけどそれが実の父の生家だとは思わなかった。
「……昔話をしようか? 」
仰向けになりヴァイオレットの細い腰を更に抱き寄せ、片方の肩を引き寄せると自分の胸にもたせかけその顔を覗き込んで、ふいにセオドアが言う。
「昔、とある国に不器用な侯爵がいた。
侯爵には歳の離れた妹姫がいて、とても可愛がっていた。
妹が可愛くて仕方のない侯爵は、現国王の妃にするべく姫君を手塩に掛けて育てたんだ。
ところが、姫君はその直前に別の男と恋におちた。
相手は顔がきれいなだけのしがない伯爵家の三男で、伯爵家を継ぐどころか爵位を貰えるかさえも怪しい身分だったからったから、侯爵は怒り狂う。
侯爵の怒りに恐怖を覚えた二人は、手に手を取って駆け落ちしたんだ」
男は一つ息をつくと何時の間にか窓の外に移していた視線を元に戻すと目を細めた。
腰に絡んでいた手が、闇に浮かび上がったヴァイオレットの白い肩に移動しそっと動く。
「そして、その二人の間に産まれたのが君だ。
君の母上との仲を裂かれるのを恐れて、二人は常時住まいを変えていた。
それには、劇場の雇われ歌手というのは都合が良かったんだろう。
一月、長くて三月の契約公演が終われば、次の劇場に移動できる。
幸か不幸か君の父上は芸術的センスに優れていたと見えて、どこへいっても花形だったって話だ。
君のこの恵まれた容姿と声は父親譲りなんだそうだよ」
肩に廻っているのと反対の手がそっと伸び、ヴァイオレットの頬に優しく触れた。
「赤ん坊の君を抱えた若夫婦は、どこの劇場にいても幸せそうだったって話だ。
君がよく口にするあの子守唄は、赤子の君に君の母上がよく歌って聴かせていたものだったんだよ」
「そう、なの? 」
セオドアの最後の言葉は信じられない。
憶えているのは、客から贈られた花の香りでむせ返る楽屋の寒い暗い隅。
背後で繰り返される、誰かの歌うオペラのアリア。
舞台が跳ねて戻ってくる父親を待ちながら膝を抱えて震えていた。
母の顔は記憶にない。
唯一まだ娘だった頃の肖像画が侯爵邸に残されてはいたが、それが母親だと言われても実感が持てなかった。
「どうし…… て? 」
そこまでして逃げておいて、両親はどうして自分を養父の手に託したんだろう?
湧き上がる疑問。
「君の母上が亡くなった時に…… 」
ヴァイオレットの言葉にならない問いを受けたように男は話を続ける。
「君の父上はもう貴族社会に戻る気はなかったようだ。
それでも愛した女の忘れ形見をあの世界に置いてはおけないと思ったそうだ。
馴れない環境と、一つ所に長期居られない移動生活のストレスに君の母親の身体は耐えられなかった。その上腕のいい医者も周囲に居ない環境の中で最終的には命を落とした。
その姿を目に、まだ小さな君を男手一つで育てる自信がなかったと言っていたよ」
「父に、会ったの? 」
「ああ……
普通は血筋だけ調べて結論が出ればそこまではしないんだけど…… 」
男は視線を泳がせる。
「何故、そこまでする必要があって? 」
「それは…… 」
男は僅かに顔を赤く染める。
肩に回されていた手に力が篭ると、囲い込むように肩と頭部に回された両腕で抱きよせられた。
「選定会、開催前から決まっていると思っていたから。
だけど、君にはデビュタント前からその出生について妙な噂が時々流れていたから、誰にも反対できないように裏付けが欲しかった。
まさか逃げられるなんて思っていなかったし…… 」
頭の後ろに回りこんだ手が優しい仕草で髪を撫でながら、男は視界に入らない位置まで顔を寄せると照れくさそうに耳もとで囁いてくる。
「どうして、わたくしでしたの? 」
その腕のなかに頭を埋めたままヴァイオレットは訊く。
この人にはきっともっとふさわしい人間が何人も居たはずだ。
「憶えているかい?
君がデビュタントの直後初めて出席した我が家の夜会。
気難しいことで有名な侯爵が手塩に掛けて育てたと注目の姫君。
君はその噂どおり堂々として、はじめての夜会だときいていたのに全く動じていないように見えた。
そんな君が控え室の窓辺で震えた声で歌ってた。
歌うことで強引に勇気を搾り出しているように。
恐らく私はあの時に君に恋をしたんだ。
君のその声に…… 」
囁いた後、男はヴァイオレットの額にそっとキスを落とし、その躯に絡ませた腕に力を込めてもう一度引き寄せる。
まわされる腕から伝わってくるぬくもりを確かめるようにヴァイオレットは頬を寄せた。
思えばずっとこの腕に守られていた。
この人の行動だけじゃなくて言葉や笑顔にさえ。
セオドアだけが呼んでくれる愛称で呼ばれるのがとても心地よかった。
きっと、この人が笑いかけてくれなければ、自分はもっとあの養父に憎しみを募らせて押しつぶされそうになっていたのかも知れない。
この人の優しい笑顔がそれを引き止めていてくれた。
何故そのことに気が付かなかったのだろう。
「「ごめんなさい」とか「ありがとう」とか、言わなければいけない言葉がたくさんありそうですわね」
ヴァイオレットがため息混じりに言うと、ふいに男は抱きしめたまま体勢を変えその華奢な躯を組み敷いた。
「それならば…… 」
触れるほど近くから、じっとヴァイオレットの顔を見下げてセオドアは呟く。
「他に言って欲しい言葉があるんだけどな」
とろけそうなほどに優しい笑顔を浮かべると、答えを待たずにセオドアはヴァイオレットの唇に深いキスを何度となく繰り返す。
息が止まるほどのキスに次第に躯が熱を帯びてゆく。
窓の外の雨音が強さを増し、室内の物音全てを包み込みかき消していった。
◆◇◆ 言い訳 ◆◇◆
ここまでお付き合い下さいましてありがとうございます。
『小夜啼鳥』は正確には御伽噺ではなく童話です。
このお話の場合、各章のお話が仕上がった時点でそれに似通った御伽噺のお姫様の名前を冠してサブタイトルをつけていたのですが、内容のあった御伽噺がわたしの記憶の中になく、ない記憶情報をひっくり返した結果出てきたのがアンデルセン童話の「小夜啼鳥」でした。
余談ですが「2137…… 」はタイトルありきで突っ走りました。
正直お嬢様言葉は大変でした。
普段この言葉を使うのはちょい役の女の子が多いので何とかしのげるのですが、今回主人公なので台詞の数多くて…… 読んで下さる方も大変だったと思います。ごめんなさい。
今夜はあの嫌いな月の光はここには届かない。
ベッドから身を起すと、ヴァイオレットは掛かっていた毛布を肩から羽織りなおし、その躯を被う。
傍らに視線を向けるとセオドアの寝顔がある。
ベッドサイドに置かれたフェアリーランプのかすかな炎が、その整った横顔を僅かに浮かび上がらせていた。
暫くその顔を見つめたあと、その頬にそっと手を伸ばし、ヴァイオレットは身をかがめて軽いキスを落とす。
次いでベッドを下りようと男に背を向けた途端、ふいに眠っているはずの男の手が伸び捕らえられた。
むき出しの腕がヴァイオレットの白い腕に、次いで腰に絡まり、そのままリネンのシーツの上に引き戻される。
「また、『これで終わり』なんて言うんじゃないだろうね」
逃すまいとするかのようにヴァイオレットのその細い腰に腕を絡みつかせたまま、男は呟くように訊いた。
「言ったでしょ?
わたくし、あなたの遊び相手にはなれても、あなたの伴侶にはなれなくてよ」
ヴァイオレットは絡みついている男の腕を拒絶するかのように解きほぐすと押しやる。
「そのことなら、気にする必要はないと言った筈だよ」
セオドアは言い聞かせるようにヴァイオレットに言って、再びその腕を絡みつかせてきた。
「知って、いたの? 」
茫然と男の顔を見てヴァイオレットは呟く。
「一応、調べたからね」
男は僅かに睫を伏せると言う。
「今回、ここに集まっているのは、仮にも近い将来王妃になる可能性のある娘達ばかりだから。
一応王族の血を引く伯爵家以上の娘と言うことにはなっているが、その辺りはきちんと線引きをしないと。
王族との血縁がある家系の少しでも欲のある貴族は、皆こぞってどこからか容姿の整った娘を連れてきて養女にしかねない」
男はそれがおかしくて仕方のないように笑みを浮かべる。
「確かに君はボナローティ侯爵家の養女だし、生まれた場所もここでおおっぴらにできるものじゃない。
だけど、その血は確かだよ。
君の父親は籍こそ抜かれてしまっているがエルグラン伯爵家の三男。ブライアン・エルグランだよ。
エルグラン家には僅かだが王族の血が入っている。
舞台ではライアン・フィッシャーと名乗っていたようだけどね。
母親は間違えなく先代ボナローティ侯爵令嬢だよ。
知ってのとおりボナローティ侯爵と君の母上の母親は王族の出だし」
セオドアはヴァイオレットを真直ぐに見つめる。
「父が? 伯爵家の? 」
初めての言葉にヴァイオレットは耳を疑う。
「知らなかったのか? 」
セオドアの問いにヴァイオレットは頷く。
「そんなこと、誰の口からもでなかったもの」
物心ついた時にはあの劇場の楽屋の隅に、脱ぎ捨てられた舞台衣装のように置かれていた。
母はすでに亡く、父親は酒びたりで、いつも一人震えていた。
そんな時、あの養父が迎えにきた。
男は自分を産んでくれた母の兄だと名乗ったから、少なくとも養父とは血縁があるとは思っていたけれど。
そのとき別れた父のことを教えてくれる人も噂する人も、ヴァイオレットの周りには誰もいなかった。
社交界に出て、エルグランという伯爵家があることは知っていた。だけどそれが実の父の生家だとは思わなかった。
「……昔話をしようか? 」
仰向けになりヴァイオレットの細い腰を更に抱き寄せ、片方の肩を引き寄せると自分の胸にもたせかけその顔を覗き込んで、ふいにセオドアが言う。
「昔、とある国に不器用な侯爵がいた。
侯爵には歳の離れた妹姫がいて、とても可愛がっていた。
妹が可愛くて仕方のない侯爵は、現国王の妃にするべく姫君を手塩に掛けて育てたんだ。
ところが、姫君はその直前に別の男と恋におちた。
相手は顔がきれいなだけのしがない伯爵家の三男で、伯爵家を継ぐどころか爵位を貰えるかさえも怪しい身分だったからったから、侯爵は怒り狂う。
侯爵の怒りに恐怖を覚えた二人は、手に手を取って駆け落ちしたんだ」
男は一つ息をつくと何時の間にか窓の外に移していた視線を元に戻すと目を細めた。
腰に絡んでいた手が、闇に浮かび上がったヴァイオレットの白い肩に移動しそっと動く。
「そして、その二人の間に産まれたのが君だ。
君の母上との仲を裂かれるのを恐れて、二人は常時住まいを変えていた。
それには、劇場の雇われ歌手というのは都合が良かったんだろう。
一月、長くて三月の契約公演が終われば、次の劇場に移動できる。
幸か不幸か君の父上は芸術的センスに優れていたと見えて、どこへいっても花形だったって話だ。
君のこの恵まれた容姿と声は父親譲りなんだそうだよ」
肩に廻っているのと反対の手がそっと伸び、ヴァイオレットの頬に優しく触れた。
「赤ん坊の君を抱えた若夫婦は、どこの劇場にいても幸せそうだったって話だ。
君がよく口にするあの子守唄は、赤子の君に君の母上がよく歌って聴かせていたものだったんだよ」
「そう、なの? 」
セオドアの最後の言葉は信じられない。
憶えているのは、客から贈られた花の香りでむせ返る楽屋の寒い暗い隅。
背後で繰り返される、誰かの歌うオペラのアリア。
舞台が跳ねて戻ってくる父親を待ちながら膝を抱えて震えていた。
母の顔は記憶にない。
唯一まだ娘だった頃の肖像画が侯爵邸に残されてはいたが、それが母親だと言われても実感が持てなかった。
「どうし…… て? 」
そこまでして逃げておいて、両親はどうして自分を養父の手に託したんだろう?
湧き上がる疑問。
「君の母上が亡くなった時に…… 」
ヴァイオレットの言葉にならない問いを受けたように男は話を続ける。
「君の父上はもう貴族社会に戻る気はなかったようだ。
それでも愛した女の忘れ形見をあの世界に置いてはおけないと思ったそうだ。
馴れない環境と、一つ所に長期居られない移動生活のストレスに君の母親の身体は耐えられなかった。その上腕のいい医者も周囲に居ない環境の中で最終的には命を落とした。
その姿を目に、まだ小さな君を男手一つで育てる自信がなかったと言っていたよ」
「父に、会ったの? 」
「ああ……
普通は血筋だけ調べて結論が出ればそこまではしないんだけど…… 」
男は視線を泳がせる。
「何故、そこまでする必要があって? 」
「それは…… 」
男は僅かに顔を赤く染める。
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だけど、君にはデビュタント前からその出生について妙な噂が時々流れていたから、誰にも反対できないように裏付けが欲しかった。
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「どうして、わたくしでしたの? 」
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「憶えているかい?
君がデビュタントの直後初めて出席した我が家の夜会。
気難しいことで有名な侯爵が手塩に掛けて育てたと注目の姫君。
君はその噂どおり堂々として、はじめての夜会だときいていたのに全く動じていないように見えた。
そんな君が控え室の窓辺で震えた声で歌ってた。
歌うことで強引に勇気を搾り出しているように。
恐らく私はあの時に君に恋をしたんだ。
君のその声に…… 」
囁いた後、男はヴァイオレットの額にそっとキスを落とし、その躯に絡ませた腕に力を込めてもう一度引き寄せる。
まわされる腕から伝わってくるぬくもりを確かめるようにヴァイオレットは頬を寄せた。
思えばずっとこの腕に守られていた。
この人の行動だけじゃなくて言葉や笑顔にさえ。
セオドアだけが呼んでくれる愛称で呼ばれるのがとても心地よかった。
きっと、この人が笑いかけてくれなければ、自分はもっとあの養父に憎しみを募らせて押しつぶされそうになっていたのかも知れない。
この人の優しい笑顔がそれを引き止めていてくれた。
何故そのことに気が付かなかったのだろう。
「「ごめんなさい」とか「ありがとう」とか、言わなければいけない言葉がたくさんありそうですわね」
ヴァイオレットがため息混じりに言うと、ふいに男は抱きしめたまま体勢を変えその華奢な躯を組み敷いた。
「それならば…… 」
触れるほど近くから、じっとヴァイオレットの顔を見下げてセオドアは呟く。
「他に言って欲しい言葉があるんだけどな」
とろけそうなほどに優しい笑顔を浮かべると、答えを待たずにセオドアはヴァイオレットの唇に深いキスを何度となく繰り返す。
息が止まるほどのキスに次第に躯が熱を帯びてゆく。
窓の外の雨音が強さを増し、室内の物音全てを包み込みかき消していった。
◆◇◆ 言い訳 ◆◇◆
ここまでお付き合い下さいましてありがとうございます。
『小夜啼鳥』は正確には御伽噺ではなく童話です。
このお話の場合、各章のお話が仕上がった時点でそれに似通った御伽噺のお姫様の名前を冠してサブタイトルをつけていたのですが、内容のあった御伽噺がわたしの記憶の中になく、ない記憶情報をひっくり返した結果出てきたのがアンデルセン童話の「小夜啼鳥」でした。
余談ですが「2137…… 」はタイトルありきで突っ走りました。
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