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「お前、鳥かごを持って付いて来い! 」
「何? ちょっと、待って…… こんな格好じゃ」
侍女に言いつけて、大またで部屋を出ようとする男の肩の上でリュシエンヌは戸惑った声をあげた。
担ぎ上げられているとはいえ、下着とほぼ同様のナイトドレス一枚の姿で部屋を出るのはさすがに恥ずかしい。
もしも誰かに見られたらと思うと、顔から火が出る思いだ。
王はすれ違い様に侍女の持っていた毛布に手を伸ばすと片手で器用に広げてリュシエンヌの背中に巻きつける。
「これでいいだろう」
これ以上の文句は聞かないとばかりに、王はリュシエンヌを担ぎ上げたまま歩き出した。
「お待ちください陛下!
姫君は荷物ではありませんわ」
言いつけどおり部屋の奥へ駆け込んで戻ってきた様子の侍女が慌てて追いかけてくる。
「何処へ行くの? 」
「いいから黙っていろ」
日が落ちてしまったせいでほとんど真っ暗な廊下を、あとを追う侍女の様子は全く気遣わずに男は迷わず城の奥へと進んで行く。
「降ろして、あの……
自分で歩きます! 」
男の肩に身を預けたままリュシエンヌは小さく訴える。
「おとなしくしていろ、そこまでだ」
言い終わらないうちに男の足は止り、壁際にあるドアを押し開く。
「灯りを」
男が一声かけると後を追ってきていた侍女が手にした燭台の炎を部屋のあちこちにおかれた蝋燭へ移してゆく。
程なく室内は蝋燭の揺れる炎にぼんやりと浮かび上がる。
今まで居た部屋の三倍は面積のありそうな大きな空間。
ガラスの入った大きな窓。
この城中の部屋や廊下と同じ煉瓦色の壁は華やかなタペストリーで彩られ、おかれた家具も華やかだ。
「城の中で一番日の入る部屋だ。
あの部屋よりは暖かい。
すぐに暖炉に火も入れさせよう」
天蓋のついた大きなベッドにふわりと下ろされると、少し得意げに微笑まれた。
男の言葉どおり、部屋の中にはまだかすかに温もりが残っていた。
誰かの使っていた形跡はない無人の部屋なのに、ほんのりと暖かい。
男の言葉を受け、侍女が手早く暖炉の周辺を片付けると、薪か火種を持ちに部屋を出て行ってしまう。
その後ろ姿を目にリュシエンヌは泣きたい気持ちになった。
この男と二人で部屋に残されるのは非常に不味い。
もっとも、この男の言葉一つで侍女は姿を消してしまうのだから、あまり効果はないが、少なくとも時間稼ぎはできる。
「それでもまだ寒いようなら遠慮なく言え。
毛布でも薪でも豊富に用意させよう」
案の定、そう言った唇が寄せられる。
リュシエンヌは思わず唇を噛み硬く目を瞑る。
直後触れそうなほど近くにきていた男の顔が遠ざかる。
その気配に瞼に入れていた力を緩めそっと目を開けると諦めたような男の顔があった。
「また、そのような顔をして」
頤を掴んでいた指が優しく顔の輪郭を這い、温かな掌が頬を包み込んだ。
「期待させて悪いが、今夜はまだ仕事が残っている」
頬を包み込んだ掌がリュシエンヌの皮膚の感触を確かめるように撫で、引かれた。
「期待なんか、していません」
「そうか? 俺にはそう言う反応にしか見えなかったがな」
言いながら男はベッドを離れる。
「お休み、姫君。
良い夢を」
呟くように優しく言うと、男は立ち去っていった。
その夜の睡眠は久しぶりに心地よかった。
今まで自分が暮らしていた祖母の館の部屋よりは少しだけましとは言え、部屋全体から忍び込んできた冷気が毛布を通してじんわりとベッドの中にまで染みてくる。
気温の下がる明け方にはどうしても目が覚め、日が昇るまで暫くの間を躯を丸くして凌ぐしかない。
だけど、昨夜はその心配は全くなかった。
ゆっくりと手足を伸ばして眠れたのは夏以来だ。
少し柔らかすぎるけど、ベッドが違うだけでこんなに暖かいなんて……
リュシエンヌはその心地いい温もりに幸せを感じながらまどろみ、ゆっくりと目を開く。
途端に妙なものが視界に広がり、幸せな寝起きの余韻が一気に吹っ飛んだ。
頭を預けていたのは男の腕で鼻先はその男の厚い胸板に寄せられている。
慌てて飛び起きて距離を取ろうとしたところ、ナイトドレスの裾を押さえられた。
「な…… 」
動転しながらも身につけていたものが乱れていないことに少しだけ安堵する。
「おはよう、姫君」
まだ眠たそうに僅かに目を開いた顔を国王はこちらに向ける。
「何? どうして…… 」
わなわなと唇を震わせながらリュシエンヌは男を見つめた。
「どうしてって、一人よりこうして二人で寝るほうが暖かいだろ? 」
悪びれた様子もなく言いながら男は身を起こした。
「お部屋を用意してくれたことには感謝します。
けど、それ以上は大丈夫ですからっ! 」
声を震わせながらベッドを下りた。
「おはようございます、姫君。
お目覚めになられましたか? 」
部屋の中の様子を探っていたかのように侍女がドアを開いた。
「……いい加減に、機嫌を直してくれないか? 姫」
暖かな湯気の上がるお茶のカップの置かれたテーブルを挟んで男はリュシエンヌの顔を覗き込んだ。
窓際の日のあたる場所に置かれたテーブルでの、今朝の食事にはなぜか国王の顔があった。
「自業自得だと思います」
覗き込まれた視線からわざと顔を隠すようにリュシエンヌは顔を背ける。
「せめて食事くらいきちんと食わないか? 」
テーブルの上に広げられた皿を目に男は困惑気味に眉根を寄せた。
肉料理に魚料理、スープに、卵にベーコン、大ぶりに切ったパンの片隅にはバターとたっぷりのクリームにジャム。
この国独特のものだろうかなんだかわからない煮込み料理の皿。
国王が共にすることを前提に用意されたと思われる食卓は、質量ともに異常な程豪華だ。
寝起きの体では見ているだけで思わず胸がむかむかしてくる。
軽い吐き気を覚えつつ、リュシエンヌは食卓から視線を外す。
「姫君なら、いつもそうですよ。
朝は食欲があまりないみたいで、お茶とスコーンをひとかけくらいしかお口になさいませんよ」
お茶を注ぎながら侍女が言う。
「そうか、ならこれならどうだ? 」
ずいっと口元にフォークが突きつけられ、驚いて無意識に開いた口に何かが押し込まれる。
蜂蜜とバターの香りにリュシエンヌの顔が思わず綻ぶ。
料理人が腕を上げたのか、今日のケーキは国の物とほとんど変わらない食感だ。
「いい顔だ。
わざわざ姫の国から菓子職人を雇った甲斐があったな」
「今、なんて? 」
腰を上げはじめた男の顔をリュシエンヌは慌てて見上げる。
「こんな薬臭いものの、何処がいいんだか解らぬが」
立ち上がり際に一切れ口に含みながら呟く。
「では、姫。
また今夜」
いやな予感しかしない挨拶を残して、男は立ち去った。
夕方になんかならなければいいのに。
そう願っていたのに、気が付くと日は西に傾いていた。
さっきまで華やかな声で囀っていた小鳥も、鳴き疲れたように口を閉ざし目を閉じている。
揺れる蝋燭の炎の下で、鳥かごを毛布で包んでいると、背後で薪のはぜる音がした。
「姫君、お寒くはありませんか?
薪をもう少し足しておきましょうか? 」
すすで汚れた手を拭いながら暖炉の前にしゃがみこんでいた侍女が立ち上がる。
「ううん。大丈夫。ありがとう。
もういいわ、下がって」
ため息をつきながら答えると、リュシエンヌはのろのろとベッドに向かった。
ここでの自分のことは全てこの侍女にはわかっているのは承知だが、この時間に国王が部屋に来るところを見られるのはなんとなく気恥ずかしくて、リュシエンヌは女を下がらせる。
閉じた目を開いたら、夜が明けていればいいのに。
毛布を肩口まで引き寄せて何度となく願う。
せめて昨夜のように、添い寝だけですんで欲しい。
そう思いながら寝返りを打った時、ゆっくりとドアの開く音がした。
程なく、重くしっかりとした足音が部屋を横切り、ベッドの側に近付いてくる。
足音を耳に、毛布の下で身動きを止め目を閉じていると、ため息と共に毛布が持ち上げられる。
無言のまま、ベッドに入ってきたと思ったら肩を引き寄せ抱きしめられた。
「抱いていいか? 」
胸の中のリュシエンヌに囁くように問い掛ける。
「……駄目って、言ったらやめてくれる? 」
少しむくれて見せて、リュシエンヌは訊き返す。
「いやなら、そんな可愛い反応はせずに本気で拒否すればいい」
言いながら耳朶を甘く食まれる。
かすかな刺激にリュシエンヌは男の腕から逃れようと身じろぎした。
その動きに抱きしめられた男の腕の力が強まる。
まるで、「逃がさない」といわれているようだ。
「拒否すればいい」と言われても、言葉でも態度でも逃げる術などない。
男の大きな手足で四肢を押さえ込まれ身動きできず、諦め半分で躯の力が抜ける。
「素直だな」
額や頬、項へと何度となくキスを落としながら男は耳もとで囁く。
芽生え始めた疼きが耳朶に掛かる息だけで高まって行く。
呼吸が乱れる様に男が満足そうに笑みをこぼした。
妙な罪悪感に苛まれながらリュシエンヌは知らずに男の愛撫に応えて行く。
……これが、ジュリアスだったら、どんなに楽だっただろう。
何度も、そう思いながらやがて絶頂を迎える。
「何? ちょっと、待って…… こんな格好じゃ」
侍女に言いつけて、大またで部屋を出ようとする男の肩の上でリュシエンヌは戸惑った声をあげた。
担ぎ上げられているとはいえ、下着とほぼ同様のナイトドレス一枚の姿で部屋を出るのはさすがに恥ずかしい。
もしも誰かに見られたらと思うと、顔から火が出る思いだ。
王はすれ違い様に侍女の持っていた毛布に手を伸ばすと片手で器用に広げてリュシエンヌの背中に巻きつける。
「これでいいだろう」
これ以上の文句は聞かないとばかりに、王はリュシエンヌを担ぎ上げたまま歩き出した。
「お待ちください陛下!
姫君は荷物ではありませんわ」
言いつけどおり部屋の奥へ駆け込んで戻ってきた様子の侍女が慌てて追いかけてくる。
「何処へ行くの? 」
「いいから黙っていろ」
日が落ちてしまったせいでほとんど真っ暗な廊下を、あとを追う侍女の様子は全く気遣わずに男は迷わず城の奥へと進んで行く。
「降ろして、あの……
自分で歩きます! 」
男の肩に身を預けたままリュシエンヌは小さく訴える。
「おとなしくしていろ、そこまでだ」
言い終わらないうちに男の足は止り、壁際にあるドアを押し開く。
「灯りを」
男が一声かけると後を追ってきていた侍女が手にした燭台の炎を部屋のあちこちにおかれた蝋燭へ移してゆく。
程なく室内は蝋燭の揺れる炎にぼんやりと浮かび上がる。
今まで居た部屋の三倍は面積のありそうな大きな空間。
ガラスの入った大きな窓。
この城中の部屋や廊下と同じ煉瓦色の壁は華やかなタペストリーで彩られ、おかれた家具も華やかだ。
「城の中で一番日の入る部屋だ。
あの部屋よりは暖かい。
すぐに暖炉に火も入れさせよう」
天蓋のついた大きなベッドにふわりと下ろされると、少し得意げに微笑まれた。
男の言葉どおり、部屋の中にはまだかすかに温もりが残っていた。
誰かの使っていた形跡はない無人の部屋なのに、ほんのりと暖かい。
男の言葉を受け、侍女が手早く暖炉の周辺を片付けると、薪か火種を持ちに部屋を出て行ってしまう。
その後ろ姿を目にリュシエンヌは泣きたい気持ちになった。
この男と二人で部屋に残されるのは非常に不味い。
もっとも、この男の言葉一つで侍女は姿を消してしまうのだから、あまり効果はないが、少なくとも時間稼ぎはできる。
「それでもまだ寒いようなら遠慮なく言え。
毛布でも薪でも豊富に用意させよう」
案の定、そう言った唇が寄せられる。
リュシエンヌは思わず唇を噛み硬く目を瞑る。
直後触れそうなほど近くにきていた男の顔が遠ざかる。
その気配に瞼に入れていた力を緩めそっと目を開けると諦めたような男の顔があった。
「また、そのような顔をして」
頤を掴んでいた指が優しく顔の輪郭を這い、温かな掌が頬を包み込んだ。
「期待させて悪いが、今夜はまだ仕事が残っている」
頬を包み込んだ掌がリュシエンヌの皮膚の感触を確かめるように撫で、引かれた。
「期待なんか、していません」
「そうか? 俺にはそう言う反応にしか見えなかったがな」
言いながら男はベッドを離れる。
「お休み、姫君。
良い夢を」
呟くように優しく言うと、男は立ち去っていった。
その夜の睡眠は久しぶりに心地よかった。
今まで自分が暮らしていた祖母の館の部屋よりは少しだけましとは言え、部屋全体から忍び込んできた冷気が毛布を通してじんわりとベッドの中にまで染みてくる。
気温の下がる明け方にはどうしても目が覚め、日が昇るまで暫くの間を躯を丸くして凌ぐしかない。
だけど、昨夜はその心配は全くなかった。
ゆっくりと手足を伸ばして眠れたのは夏以来だ。
少し柔らかすぎるけど、ベッドが違うだけでこんなに暖かいなんて……
リュシエンヌはその心地いい温もりに幸せを感じながらまどろみ、ゆっくりと目を開く。
途端に妙なものが視界に広がり、幸せな寝起きの余韻が一気に吹っ飛んだ。
頭を預けていたのは男の腕で鼻先はその男の厚い胸板に寄せられている。
慌てて飛び起きて距離を取ろうとしたところ、ナイトドレスの裾を押さえられた。
「な…… 」
動転しながらも身につけていたものが乱れていないことに少しだけ安堵する。
「おはよう、姫君」
まだ眠たそうに僅かに目を開いた顔を国王はこちらに向ける。
「何? どうして…… 」
わなわなと唇を震わせながらリュシエンヌは男を見つめた。
「どうしてって、一人よりこうして二人で寝るほうが暖かいだろ? 」
悪びれた様子もなく言いながら男は身を起こした。
「お部屋を用意してくれたことには感謝します。
けど、それ以上は大丈夫ですからっ! 」
声を震わせながらベッドを下りた。
「おはようございます、姫君。
お目覚めになられましたか? 」
部屋の中の様子を探っていたかのように侍女がドアを開いた。
「……いい加減に、機嫌を直してくれないか? 姫」
暖かな湯気の上がるお茶のカップの置かれたテーブルを挟んで男はリュシエンヌの顔を覗き込んだ。
窓際の日のあたる場所に置かれたテーブルでの、今朝の食事にはなぜか国王の顔があった。
「自業自得だと思います」
覗き込まれた視線からわざと顔を隠すようにリュシエンヌは顔を背ける。
「せめて食事くらいきちんと食わないか? 」
テーブルの上に広げられた皿を目に男は困惑気味に眉根を寄せた。
肉料理に魚料理、スープに、卵にベーコン、大ぶりに切ったパンの片隅にはバターとたっぷりのクリームにジャム。
この国独特のものだろうかなんだかわからない煮込み料理の皿。
国王が共にすることを前提に用意されたと思われる食卓は、質量ともに異常な程豪華だ。
寝起きの体では見ているだけで思わず胸がむかむかしてくる。
軽い吐き気を覚えつつ、リュシエンヌは食卓から視線を外す。
「姫君なら、いつもそうですよ。
朝は食欲があまりないみたいで、お茶とスコーンをひとかけくらいしかお口になさいませんよ」
お茶を注ぎながら侍女が言う。
「そうか、ならこれならどうだ? 」
ずいっと口元にフォークが突きつけられ、驚いて無意識に開いた口に何かが押し込まれる。
蜂蜜とバターの香りにリュシエンヌの顔が思わず綻ぶ。
料理人が腕を上げたのか、今日のケーキは国の物とほとんど変わらない食感だ。
「いい顔だ。
わざわざ姫の国から菓子職人を雇った甲斐があったな」
「今、なんて? 」
腰を上げはじめた男の顔をリュシエンヌは慌てて見上げる。
「こんな薬臭いものの、何処がいいんだか解らぬが」
立ち上がり際に一切れ口に含みながら呟く。
「では、姫。
また今夜」
いやな予感しかしない挨拶を残して、男は立ち去った。
夕方になんかならなければいいのに。
そう願っていたのに、気が付くと日は西に傾いていた。
さっきまで華やかな声で囀っていた小鳥も、鳴き疲れたように口を閉ざし目を閉じている。
揺れる蝋燭の炎の下で、鳥かごを毛布で包んでいると、背後で薪のはぜる音がした。
「姫君、お寒くはありませんか?
薪をもう少し足しておきましょうか? 」
すすで汚れた手を拭いながら暖炉の前にしゃがみこんでいた侍女が立ち上がる。
「ううん。大丈夫。ありがとう。
もういいわ、下がって」
ため息をつきながら答えると、リュシエンヌはのろのろとベッドに向かった。
ここでの自分のことは全てこの侍女にはわかっているのは承知だが、この時間に国王が部屋に来るところを見られるのはなんとなく気恥ずかしくて、リュシエンヌは女を下がらせる。
閉じた目を開いたら、夜が明けていればいいのに。
毛布を肩口まで引き寄せて何度となく願う。
せめて昨夜のように、添い寝だけですんで欲しい。
そう思いながら寝返りを打った時、ゆっくりとドアの開く音がした。
程なく、重くしっかりとした足音が部屋を横切り、ベッドの側に近付いてくる。
足音を耳に、毛布の下で身動きを止め目を閉じていると、ため息と共に毛布が持ち上げられる。
無言のまま、ベッドに入ってきたと思ったら肩を引き寄せ抱きしめられた。
「抱いていいか? 」
胸の中のリュシエンヌに囁くように問い掛ける。
「……駄目って、言ったらやめてくれる? 」
少しむくれて見せて、リュシエンヌは訊き返す。
「いやなら、そんな可愛い反応はせずに本気で拒否すればいい」
言いながら耳朶を甘く食まれる。
かすかな刺激にリュシエンヌは男の腕から逃れようと身じろぎした。
その動きに抱きしめられた男の腕の力が強まる。
まるで、「逃がさない」といわれているようだ。
「拒否すればいい」と言われても、言葉でも態度でも逃げる術などない。
男の大きな手足で四肢を押さえ込まれ身動きできず、諦め半分で躯の力が抜ける。
「素直だな」
額や頬、項へと何度となくキスを落としながら男は耳もとで囁く。
芽生え始めた疼きが耳朶に掛かる息だけで高まって行く。
呼吸が乱れる様に男が満足そうに笑みをこぼした。
妙な罪悪感に苛まれながらリュシエンヌは知らずに男の愛撫に応えて行く。
……これが、ジュリアスだったら、どんなに楽だっただろう。
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