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第三章 過去に蠢くもの
第二話 勇者の矜持#5
しおりを挟む「まずは一旦状況を整理しましょう」
ホーンド・ウルフ達の襲撃地点から十数分ほど離れた場所。新たに開けた場所を見つけた、わたし達は一息つく。
「仕組みはわからないけれど、どうやらわたし達は何組かに分けられた上で、どこともわからない場所に飛ばされたみたいですね」
一人一人バラバラにしようとしたなら、三人一緒の場所に送られたことの説明がつかない。偶然だと思うには確率的に低すぎる。最初から狙っていたと考えた方が合理的。
「んで、犯人は、最後に聞こえた少年声の持ち主ってことか」
クリスさんがため息混じりに言う。
「なにを企んでいるのか知らないけれど、随分と手の込んだ悪戯を仕掛けてきたものじゃない」
あの最後に聞こえた少年の声が何を狙っていたのかわからないけど、わたし達を離れ離れにして見も知らぬ場所へと転移させたのは確か。
もちろんそこにはなにか意図があるのだろうけど、それを推理できるだけの材料はない。
「アチラがなにか良からぬことを考えているにせよ、今の我々にできることは多くないだろう?」
レンさんが軽く首を振る。
「奴の企みなど知ったことではない。我々はここから脱出を目指すだけだ。妨害してくるというなら力づくで排除するのみ」
そう言いながら軽く剣の柄を叩いている。うむ。なんとも頼もしい。ホント最初の頃と随分印象が変わったけど、緊急時に本領発揮するタイプだったのか。
「ただ、ちょっと不思議なのだが」
レンさんが軽く首を傾げる。
「この鎧。修理した覚えはないのだが、いつの間にか使える状態になっていた。どうなっているんだ?」
言われてみれば、レンさんの鎧はパーツ単位でバラバラになっていた筈。器用に結合部だけを外している状態だったから、逆に言えば結合さえすれば元に戻せる状態だったワケだけど、そう簡単にできることじゃない。
「はん。転移するときに、サービスしてくれたんじゃない」
クリスさんが自棄気味に言う。
「さっきの狼といい、危険はたっぷりとあるみたいだし。簡単に死なれたら困るのかもね」
「死なれたら困るって……」
なんと答えて良いのやら困惑した表情を浮かべるレンさん。
(案外それが正解なのかも)
先程まで阻害されていたスキルが、今では自由に使うことができる。つまり、全力を発揮することができるということ。
今まで妨害していたモノをここに来て開放するということは、阻害する必要がなくなったのかあるいは阻害出来なくなったのか。
後者である可能性は低いと思うから前者であると思うんだけど、必要がなくなるということはつまり――。
「………!」
不意に周囲へ気配が集まる。招いた覚えもないお客様のご来場だ。
「まったく。アチラは逃がすつもりなんて無さそうね」
盾と剣を構えなおしつつクリスさんが漏らす。
「招かざるお客様を捌くのは慣れっこだけど、連続されると面倒なんだよねぇ」
「戦いを厭うつもりはないが、名誉も価値もないそれを強いられるのは、騎士として不本意極まる」
レンさんも自分の剣を構え直す。状況によって片手と両手を使い分けのできるナイト・ソードって奴。盾を使わないレンさんは、これを両手で構えていることが多いみたい。
「どうやら右手の方から、一直線に押しかけてくるみたいです――数は二十ぐらい!」
周囲の状況を感知した限り相手は結構な大人数。全員が一団となって一方向から近づいてくる。周囲を囲むとか数の優位を活かすつもりはまったく無いらしい。
「前衛は私が請け負う。勇者殿は防御と討ち漏らしの処理を」
わたしの警告に、レンさんが一歩前に出ながら言う。
「私は盾を持たないからな。エリザ殿を守りながら戦うのは任せる」
「請け負ったわ。ただ勇者って呼ばれるのは好きじゃないから、クリスでお願い」
合理的な提案にクリスさんが頷きつつ、注文をつける。
「了解した、クリス殿」
「殿……まぁ、いいけど」
イマイチ話が通じないレンさんだけど、わたしが知っている範囲でも騎士さんって人は話を聞いているようで自分の意見を曲げない人が多いので、気にするだけ負けというか無駄というか。
「正体はわかる?」
クリスさんの問にわたしは感知した相手を更に調べてみる。
大きさは子供か少し大きいぐらい。足の速さも子供ぐらい。ただ詳細はわからないけど武装はしているみたい。
こんな場所に子供の大群が、それも武装してやってくるなんて考えづらい。だとすれば該当するのは。
「多分、ゴブリンです!」
一番ありそうなのはゴブリン。小柄で徒党を組み、武装した集団となればもっとも可能性が高い。コボルトって可能性もあるけど、連中はもっと小柄だし、数ももっと揃えてくることが普通。
「どちらにせよ、ホーンド・ウルフよりは強敵ってことだな」
レンさんが好戦的な笑みを浮かべる。
「相手にとって不足はない」
「はぁ……騎士様は好戦的だねぇ」
一方のクリスさんは面倒くさそうなため息。
「僕としては簡単に追い払える雑魚の方が相手したいけどね……」
まぁ、ここでゴブリンの大軍と戦ったところで得られるものはないし。クリスさんの気が進まないのもわかる。
一方レンさんにとっては騎士の本領って奴だからテンションがあがるのもわかる。
わたし? もちろんクリスさん寄り。戦いなんて避けられるなら避けたい。とはいえ、避けようはないのだからわたしも弓を展開して敵に備える。
「ん?」
近づきつつある連中の動きが変化したことに気がつく。
だいたい半数ぐらいにわかれ一方は更に前進を、もう一方はその場に留まっている。この動きは――。
「……っ! 遠距離攻撃が来ます!」
「アンチミサイル・バリア!」
わたしの言葉と同時にクリスさんが右手を掲げ上げながら叫ぶ。彼女のペンダント――魔力結晶の輝きが鈍くなり魔力が消費されていることがわかる。
その一瞬後、空気を切り裂く音と同時に十個ほどの小石がわたし達目掛けて飛んできた。相手の半数がスリングを使い遠距離攻撃を仕掛けてきたのだ。単なる小石とはいえ、勢いがあれば充分な殺傷力を持っている。
そしてそれに合わせて目前の茂みから、錆びた小剣や歪んだ手斧を振りかざしたゴブリン達が飛び出してきた。
「遠距離攻撃で気を引いて、その隙に接近戦を挑んでくるとは……」
一番先頭を走って来たゴブリンを両断にしつつレンさんが言う。
「なかなか手の込んだマネを!」
作戦としては悪くない手だったけど、如何せんクリスさんの範囲防御魔法でその目論見は見事御破算に。守りに関して本当に隙がなくて、流石は盾の勇者。
これは負けていられない。わたしも弓を放ち別の一匹を串刺しにする。仕留めることは出来なかったけど、右足を射抜かれたそのゴブリンは地面に倒れてもがいている。アレはしばらく動けないだろう。
「ガーッ!」
自分達の目論見が破られたことに怒りを隠そうともせず、残りのゴブリン達が襲いかかってくる。わずか一瞬の間に距離を詰められ、瞬く間に乱戦になってしまった。
「って、こいつら何か違う!」
三匹のゴブリンを相手取るレンさんの言葉に、僅かな焦りが混ざる。
ゴブリンはあまり足の早い魔物じゃなくて、必要に応じてケイブ・ウルフに騎乗して速さを稼いでいる。だのに、この目前にいるゴブリン達はケイブ・ウルフに騎乗したゴブリンに匹敵する速度で走っていた。
「こんな足の速いゴブリンがいるわけ……っ!」
クリスさんも焦りを隠せない。半数どころか三分の二のゴブリンがこちらに迫って来ており、流石のクリスさんも手に余りそう。
わたしも至近距離から矢を撃ち込んで一匹を仕留めたけど、それが限界。だけどラッキーなことに矢を受けたゴブリンは走ってきた勢いとの相乗効果でゴロゴロと派手に地面を転がった挙げ句、後ろに続いていた一匹を巻き込んでしまう。
その隙にわたしも一歩後ろに下がり、更に矢を射掛けて転んだゴブリンを撃つ。流石に狙いが甘く仕留めるのは無理だったけど、右肩を大きく抉られていたから治療されない限り戦力にはならない。
(それにしても、コイツら……)
ゴブリンの分際で――あれ? よく見たら白色の肌……って、白?! ゴブリンの肌って多少の差はあるにしても、緑色な筈。砂漠の方には黄色っぽい肌を、高山には灰色っぽい肌を持つ種族もいるって聞いたことがあるけど、白い肌ってのは聞いたことがない。
「本当にゴブリンなのか、コイツら!」
えっと、肌の色以外の見た目はまんまゴブリンだし……ゴブリン? ゴブリンなんだと思うんだけど、先程のホーンド・ウルフと同じく『何かが違う』ゴブリンなのかしら?
「今はそんなことどうでもいいよ!」
レンさんの言葉に、クリスさんが叫び返す。
「少しばかり足は速いみたいだけど、斬れば死ぬんだ。細かいことは後でッ!」
「細かくはないけどな!」
二匹のゴブリンと激しく斬り結びながらレンさんが苛立たしげに答える。
「くっ! ちょこまかと……っ!」
腕前の差は明らかだったけど、なにしろ相手は動きが速く数も多い。簡単にあしらうのは難しい。
わたしも援護しようとして、更に奥へと視線を向ける。
「………」
つい目前の戦いに注意を奪われそうになるけれど、ここにいるのは半分。残り半分は小石――スリングでこちらを狙っているのを忘れてはいけない。
茂みの更に奥へと視線を向け目を凝らす。
(いる)
草むらの影、木の幹の影。そういった視線の届きにくい場所から放たれている殺気。つまりこちらを狙うのを諦めていないということ。
「ちょっと乱暴にやるしかないか」
クリスさんとレンさんには悪いけど、前衛はもう少し頑張ってもらうことにしてと……。
「パワーショット!」
魔力結晶の残りが心もとないけど、ここでケチって余計な怪我を負っても後が怖い。
「ギャッ!」
魔力を帯びて放たれた矢は茂みに隠れている一匹を射抜き、そのまま貫通して木陰に隠れているもう一匹を貫いた。
その威力に恐れをなしたのか、スリングを放つことも忘れて呆然とした気配が漂ってくる。
「チャンスだな!」
その隙をレンさんは見逃さない。
「ブレード・インパクト!」
トドメとばかりに大技が炸裂し、大半のゴブリンが吹き飛ばされる。流石に分が悪いと思ったのか、残りはそのまま逃走していった。
「探索者としては、大漁大漁と喜ぶべきことだと思うんだけどね」
クリスさんが盛大にため息を漏らす。先程のホーンド・ウルフもそうだったけど、地面に落ちた死骸は瞬く間に痕跡一つ残さず消滅してしまい、得るものは何一つ無い。文字通りの骨折り損のくたびれ儲け。
「正直言えば、このまま合流できる目処が立つまでじっとしておきたいところだけど」
周囲を見回しながらクリスさんが続ける。
「ここは理想的な場所とは言えないけれど、さっきよりは広めの平野になっているし、樹木も茂みも少なめで見通しも良い。周囲を包囲されたとしても対応しやすい」
ふむ。この短時間で良く観察している。この場所なら射的武器の射線を確保するのも容易だし、これならわたしの弓も存分に発揮できる。
クリスさん、最初のウェイトレス姿がインパクト強すぎて引っ張られるけど、探索者としても一流みたい。
「ふむ……意外と消極的なんだな」
レンさんが不思議そうに言う。
「クリス殿の腕前なら、もっと積極的に行動しても問題無いと思うが?」
「継戦能力の問題さ」
レンさんの疑問に、クリスさんは短く答えた。
「ボクもそうだけど、キミも結構な大技を連発してるよね。魔力結晶の残りは充分なのかな?」
「う……っ」
「体力や気力だって無限じゃないし、いずれ疲労が溜まって限界になる」
クリスさんの指摘に、レンさんが顔色を変える。
「いや、確かに残り豊富とは言えないが……節約すればあと二~三戦ぐらいならまだなんとかなるぞ。疲労もまだそこまでじゃないし」
「はぁ~」
盛大なクリスさんのため息。
「その二~三戦で、状況が好転するって保証は? ホーンド・ウルフを退けて移動した先ではゴブリン。ここから移動したら、その先でより強い敵が現れないという保証は?」
「ぬぬぬ……」
まぁ、この辺の意識差は仕方ないと思う。探索者と騎士さんでは、戦いの意味もやり方もぜんぜん違うし。
特に護衛騎士さんなら優先されるは目前の脅威を排除することだろうし、連続戦闘なんてあまり考慮してないだろうしなぁ。
「とはいえ、ここで大人しくしているという選択肢が、許されるとは限らないのが問題なんだよね」
その言葉の意味を問いただす必要は無かった。
ここに逃げ込むのに使った道が、いつの間にか生えた木や植物で完全に塞がれていた。それどころかジリジリと広場も埋め尽くそうとしているように見える。
「これって……やっぱり?」
「あの例の少年声の仕業だろうね」
もう大抵のことは驚かないぐらい慣れてきた。とはいえ、ものには限度ってモノがあると思う。
自然環境まで自在に変化させるなんて、もうなんでもあり。これだけの力で、わたし達を一体どうしたいのだろう?
「さて。ここに留まるという選択肢が消えた以上は」
なんとも騎士らしい割り切りでレンさんが言う。
「考えるだけ無駄なら、もう進むしかあるまいよ」
「……まぁ、そうだね」
これにはクリスさんも同意するしかない。このままでは周囲一帯が草木で覆われ、ロクに身動きもどれない状況に追い込まれるだけ。
「掌の上で弄ばれている感がスゴくてなんとも気に入らないけど、今は手札が足りないし」
真剣な表情で呟くクリスさん。
「忌々しいけど、この状況を打開するにはあの魔王の力が必要だし……なんとか合流する手立てを考えないと……」
どうやらクリスさんも、アイカさん達との早めな合流を目指す方向で考えているみたい。実際のところ、わたし達三人だけではジリ貧だし、この先どうするにせよメンバーが揃わないと話が進まない。
実のところ、魔王と勇者では相性が悪いんじゃないかと心配していたけど、少なくともクリスさんはそういうのはあまり気にしていないようで助かった。それはそれとして個人的なソリは合わないみたいだけど。
ま、まぁ、言ってみれば商売敵みたいな関係だし、そこは仕方ないということで。
* * *
この状況を生み出している『少年声』の持ち主は、わたし達を退屈させない、実にサービス精神にあふれる人物のようだった。
ゴブリンと遭遇した場所から一時間ほど歩いた所で突如としてなにかの轟音が響き、ついで激しい剣戟の音が響いてきた。この先で誰かが戦っているのは間違いない状況。
「どうやら誰ぞ知らぬが、戦っているみたいだな」
レンさんが音の方を指差す。
「状況から考えると、お前たちの知り合いである可能性が高いと思うが……助太刀が必要か?」
「考えるまでもないよ」
クリスさんの答えは決まっていた。
「誰だかわからないけど助太刀は決まり。メンバーだったらラッキーだし、仮に知らない相手だったとしても情報源にはなるから。どちらにしても損にはならない話だよ」
この先で戦っているのがアイカさん達ならベストだけど、そうでないにしてもわたし達が知らない情報を持っているかもしれない。
ともかく状況を改善できる可能性があるのだから、ここは手助けしない理由はない。
「ま、そう言うと思っていたぞ」
剣を抜き放ち、猛然と走り出すレンさん。
「それでは一番槍は、私に任せておけ!」
「あ、ちょっと!」
うん。頼りにはなる。頼りにはなるんだけど、こう後先考えな――ごほん。ドラマチックな行動を好むのはちょっと困るというかなんというか。しかも、相応に実力の持ち主だからタチが悪いというかなんというか。
「……もぅ!」
髪の毛をガシガシと掻きながらレンさんの後を追うクリスさん。
「少しぐらい様子を見たり、打ち合わせをだね!」
もちろんレンさんはクリスさんの言葉に耳を貸さずそのまま走っていった。
「この先の状況、わかる?!」
諦めたような表情を浮かべつつ、クリスさんが今度はわたしに尋ねてくる。
「えーっと、ですね」
少しでも情報を得ようと意識を前方に集中する。感じられる気配は多数。一人を中心にその周囲を包囲している状況。結構なピンチだと思う。
「誰かが単身で戦っているみたいです、恐らく押され気味なんじゃないかと」
「オッケー!」
わたしの答えにクリスさんが頷く。
「あの突撃騎士が話をややこしくする前に、なんとかしないとね!」
……レンさん。信用があるような無いような。まぁ、こればかりは自業自得と思ってもらうしかないか。
「ブレード・ショットォッ!」
わたし達がレンさんに追いついた時、なんとも絶好調に彼女は暴れていた。
目につく相手に斬りかかり、距離が開いてる相手には剣先から衝撃波のようなモノを撃ち出して攻撃を加える。
まるで物語に唄われる英雄のような暴れっぷり。ホント、ノリノリで戦ってる。
「……ちょっとマズイな、コレ」
クリスさんが呟く。
「えぇ。これはちょっと」
わたしも頷く。
「楽観視しないように気をつけていたつもりでしたけど、流石にこれは予想外というか、なんていうか……」
うん。決して油断していたつもりはなかったし、最悪の事態にも備えているつもりだった。
だけど、現実はわたし達の想定を簡単に上回る。
「……いったい、どうしろと?」
その一帯にいたのは、その全てがオークだった。そう、全員が。
今の所レンさんの攻撃は勢いに任せて主導権を握っているけど、人族とオーク族には素の能力にかなりの差があるので、体勢を立て直されたら瞬く間に不利になっちゃう。
しかもざっと数えて相手は十人以上。うん。勝負にならない。相手が本格的に反撃してこないうちに全力で逃げるのが賢い。
賢いんだけど――。
「見捨てるワケにもゆかないよね」
大勢のオークをを相手に一人立ち回っていたのは、あのオークさん。ゼム氏だった。
負傷しているのか重そうなグレートソードを左手で振り回し、人数差をものともせずに戦っている。
他オークがレンさんへの対応に手間取っているのは、ゼム氏をなんとかするのを優先しているからで、申し訳ないのだけどレンさんに恐れをなしているワケじゃなく。
「ここを切り抜けるには、助け合わないとね!」
そう言いつつクリスさんが盾を構えてオークに突進。この状況でわたしがすべきは援護。いっしょに突撃しても邪魔にしかならない。
まだ若干距離があるので、今なら弓が使える。レンさんとクリスさんがオークの注意を引いてるうちに撃てるだけの矢を打ち込むべし!
「パワーショット!」
魔力結晶から魔力を引き出しつがえた矢に込める。狙いをゼム氏を背後から狙うオークに定めて放った。
矢は狙い違わずオークに当たり、左肩を抉り取る。だけど結構なダメージを受けた筈のそのオークはわずかに表情を歪めただけで構わずゼム氏への攻撃を継続しようとしていた。
「ザムド!」
だけどゼム氏はその一瞬の隙を見逃さない。相手の顔面に手をかざすと同時に呪文のような言葉を発し、同時に相手の顔が弾け飛んだ。
うわー。えげつない。
(……なにか違う?)
ここでわたしは違和感を覚え、オーク達を改めて見直す。
肌の色は一般的な薄緑。髪は白くて短くまとめている。それに薄い黄色の瞳。
(白色の髪? それに――)
オークの髪はその社会的地位をもっとも端的に示すもの。白に近ければ近いほど上位階級で、真っ白ともなれば王族クラスだと言われてる。
つまり、王族クラスのオークが十人も集まってゼム氏を襲っている――って、そんな馬鹿な。
それにこのオーク、大きさが尋常じゃない。ゼム氏が大柄だったので見落としていたけど、このオーク達全員がゼム氏よりも頭一つ大きい。
通常のオーク族と比べて、明らかに巨大だ。
(このオーク、見覚えがある!)
そう、わたしは以前にもこんなオークを見た。あの『オリジン・ギア』が置いてあった遺跡で。
「マキナ・オーク……?」
確かそんな名前が記されていた筈。それが個体名なのか種族名なのかまではわからないけど。
あそこで物言わぬ姿になっていたオークが、今目の前で動いている。
「そんなことより、次!」
いや、今は考えている場合じゃない。目前の敵を打ち倒し、ゼム氏と合流するべき。オークの正体なんて今はどうでも良い。
「エア・プレッシャー!」
クリスさんが叫ぶと同時にネックレスが砕け散る。その瞬間、周囲に物凄い力場が発生し、彼女を中心として周囲のオーク達を吹き飛ばしてしまう。
こちらが魔法を使う可能性を全く考えていなかったのか、普通なら少しは抵抗されるモノだけど、ホントに見事に決まった。まさか範囲内の全員が倒れるなんて。
あ、レンさんが巻き添えを受けて一緒に転がされてる。と思ったらそのまま器用に前転し、勢いを生かして立ち上がっちゃった。うーん。お見事な体術。
「味方のことも少しは考えてだな!」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないよ!」
レンさんの抗議にクリスさんが叫び返す。
「ここで少しでも頭数を減らさないと、ジリ貧だから!」
そう。今がチャンス! 転んでいる相手を狙うのは実に簡単。続けざまに三本の矢を放ち、二人の頭を射抜く。
レンさんとクリスさんは倒れているオークに容赦なく剣を突き立て、四人を仕留めた。これで残りは三人。
「負けてられませんね!」
わたし達の活躍を目にしたゼム氏が目前のオークを横薙ぎにする。突如の魔法に注意を逸らされた二人のオークは、咄嗟の反応が遅れまとめて胴体を両断されてしまった。
……これが片手でできるって、オークの筋力って凄いナァ。
「モジョ・ドス!」
残り一人に向かって呪文を口にするが、何も起こらず表情を歪める。
どうやらゼム氏の魔法は不発だ。
そのゼム氏に向かって最後のオークは両手で斧を構え、頭上から振り下ろそうとする。
「シャープ・ピアシング!」
その背後をレンさんが取り、背中から思いっきり剣を突き刺した。最後の一人は苦悶の表情を浮かべながらレンさんの方向を振り向き攻撃を加えようとする動きを見せたけど、そのままゼム氏に袈裟斬りにされてしまった。
「いや、本当に助かりました」
オーク達が片付いたのを見て、ゼム氏がわたし達に謝意を示す。
「詳しい仕組みはわかりませんが、どうやらここら一帯は、私のようなオークの力だけを弱める結界のようなモノが用意されているようでして」
そう話すゼム氏の右肩はだらりと垂れたままで、力が感じられない。
「今の私はスキルは使えても魔法は使えず、半分も実力を出せない――そんな情けない有り様なんです」
つまり、先程の魔法不発も結界の妨害によるもの。それにゼム氏の実力なら十人のオークと言えども、全力さえ出せればこれほど苦戦はしなかったと思う。
「一対多数での大立ち回りなんて、ちょっと感心しないな」
手持ちのポーションと包帯でゼム氏の手当をしているところに、クリスさんが顰めた表情で口を開いた。
「ましてや自分の力が封じられているっていうのならなおさら。正面から立ち向かうより、他にやりようがあったと思うけど?」
「いや、手厳しい……仰られるとおりではあるのですが」
クリスさんの苦情に、ゼム氏は苦笑いを浮かべて頭を掻く。
「私、これでもオーク族の『勇者』の称号を持っていますので、他ならともかく同族相手に醜態を晒すわけにもゆきませんでした」
オーク・ヒーロー! オーク族の中でも最強の戦士に与えられる称号。その厳しさから場合によっては王族すら越える地位を持つと言われてる。
髪の色といい強さといい、結構な上位者だとは思っていたけど、まさかそんな大物だったなんて!
「勇者が軽視されては沽券に関わるとはいえ、その挙げ句がこの体たらくでお恥ずかしい限りです」
うん? ゼム氏の表情から漂う軽い違和感。
言葉こそ謝意を示しているのだけど、雰囲気というか言葉選びに、その、なんだか微妙な悪意を感じるんですけど?
「クリスさん、人族の『勇者』殿に情けないところをお見せし、誠に申し訳ない」
勇者の部分にことさら力を込めた会話。間違いない。理由はわからないけどゼム氏はクリスさんを挑発している。
「………」
案の定、ゼム氏の言葉にクリスさんはわずかに苛ついたような表情を浮かべていた。
「おわかり頂けると思いますが、勇者が勇者としての努めを果たせぬというのは矜持にも関わる重大な問題。何のために存在するのかという話ですからね」
カチンという音が聞こえた気がする。これは、クリスさん……お怒りモード?
「勇者の努めって、矜持ってなにかな?」
それでも怒気を抑えながらクリスさんがゆっくりと口を開く。
「勇者って、どういう存在なのかな?」
それはなんとも哲学的な問いかけ。勇者の存在意義――そんなこと、考えてみたことも無かった。
わたし達一般人から見れば、人族の為に戦う強い戦士ぐらいの感覚だけど。
「勇者というのは、その種族の期待を背負った存在です。外敵からコミュニティを守るためのね」
一方、ゼム氏の返事は明確だ。
「あなたの先祖も、そのために魔王と戦ったのでは?」
「それはそうかも知れない」
クリスさんがどこか苛ついたような仕草で言葉を続ける。
「だけど、当時はそうするしか無かったというだけ。ボクも望んで力を得たわけじゃない」
「それは卑怯な言い方ですね。誰もが望んだ通りに生きることは出来ません」
一方のゼム氏は、どこか諭すように言葉を続ける。
「仮に不本意であっても、無責任が肯定される理由にはなりませんよ」
「無責任と言うなら、『勇者だから戦わなければならない』という考えそのものが無責任だ!」
苛立たしげに右足で地面を蹴り飛ばす。
「勇者が人族の為に魔族と戦わなきゃ仕方なかった苦難の時代。それを……ご先祖が力を尽くしてそんな世界を終わらせたんだ!」
百年前、当時の勇者は反論も異論も恐れずに魔王との和平を断行した。その結果、今の平和な時代がある。
わたし個人としては良いことだと思っているけれど、勇者としてそれはどうなのかという議論は今でもあった。
だから『勇者』という存在が、腫れ物に触るような扱いになっている。
「勇者は二度と歴史の表舞台に立っちゃいけない。だから、ボクはボクの為だけに力を振るう!」
勇者が立ち上がるのは、つまりまた世界に危機が迫っている時。逆に言えば勇者がひっそりと生きている間は大きな問題が起きてないといえる。
つまり、クリスさんがウェイトレスを続けられるのは、平和の証とも言えるワケで。
「それが『勇者』を継ぐ者としての、ボクの矜持だ!」
はぁはぁと荒く肩で息を吐くクリスさん。
「なんとも嫌な気配をお持ちでしたので、失礼を承知で少々突かせてもらいましたが……なるほど。それが貴女の抱えていた鬱屈ですか」
感情を爆発させたクリスさんに、ゼム氏は強く頷く。どうやらクリスさんの本心を引き出すために、敢えて挑発してみたってことみたい。
「嫌な気配、ですか?」
「私、こう見えて聖職者の心得もあり、人の精神に巣食う汚れのようなモノを感じ取れます。ですので年長者の嗜みとしてお節介を焼かせて頂こうかと」
わたしの疑問に、ゼム氏が軽く頷く。
「例えば、ほとんど場合において『勇者』とは『先頭に立って戦う者』として定義され期待されるものです。それを是としなかった貴女は、さぞかし窮屈で報われぬ思いをしてきたのでしょう」
和平から百年。『勇者』が活躍したって話は聞かないし、また活躍する機会も無かったと思う。
『戦わない勇者』に対する人族の視線は、決して好意的なモノではなかった。
クリスさんは、どんな思いでそれを受け入れて来たのだろう? わたしなんかには分からない多くの葛藤があったのかもしれない。
「あくまでも私は『戦う勇者』としての生き方を貫きますが、あなたがそれを受け入れる必要はありませんよ」
「………?」
ゼム氏の言葉に、意外そうな視線を向けるクリスさん。多分反論されると思っていたところを肯定されて、戸惑っているのだと思う。
「私はあなたの考えを尊重します。名誉を求めない生き方もまた、勇者として誇るべきことです。あなたはまだ若い。これからも色々と考えると良いでしょう」
クリスさんに気づかれないように、こっそりわたしにウィンクしてみせるゼム氏。
「それに、あなたにはまだ頼れる相手がいるはずですから」
くそー、行動が一々イケメンな人だな!
「……そうする」
落ち着きを取り戻したクリスさんが軽く頷いた。言いたいことを言い切ったせいか、表情から毒気が抜けている。
亀の甲より年の功。ゼム氏って勇者はもとより年長者としても立派な人だなぁ。
というか、オーク・ヒーローって、戦士として百年、神官として百年、さらには魔術師として百年の修行が必要だって聞いたことあるけど、一体何歳なんだろう? オークの寿命は信じられないほど長いのは知っているけど、想像を絶するレベル。
それにしても、クリスさんも色々と抱え込んでいたんだなぁ……今度、わたしの奢りで話でも聞いてあげよう。
年長者も大事だけど、同じ年頃の話し相手だって大切だろうから。
そう心に決めつつ、突如として始まった問答について行けずに見えない蝶々を追いかけ始めたレンさんを現実へと引き戻しに行くのでした。
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「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
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かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
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迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
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リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
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筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
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周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
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