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番外編:リギィ談「オレはこうして察しました」
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ある夜の出来事その①
その日は野宿だった。
リギィはところ構わずごろ寝をして、ユアンはリギィの隣で膝を抱えるようにして座ったまま眠りについた。ブラムはいつもながら火の番をするために起きていると言っていた。
普段のリギィは一度寝たら滅多なことでは目覚めない自信がある。朝になり、ユアンに揺さぶられても起きずにいて業を煮やしたブラムに蹴り起こされるのが常だ。
だからそれは本当にたまたまのことだった。
鼻の中に虫が飛び込んで来たらしく、あまりのくすぐったさにもがいて目が覚めた。“もがっ”とか“ふがっ”とか、声を上げなかったのが幸いだった。
おぼろげに目を開けると、リギィの隣で眠っていたはずのユアンの背中が見えた。物音を立てないように、息すら潜めてそーっとそーっと移動している。
どこかに行ってしまうのだろうかとリギィが不安に感じたのも束の間、ユアンの行き先は何のことはない、ブラムの隣だった。
ユアンはうたた寝をしているブラムに自分の被っていたガウンを掛けてやり、自分もまたその傍らに入る。一つのガウンを分け合うため、ぴったりと身を寄せて寄り添っている。
ゆっくりとブラムの肩に頭を預けるユアンの表情は、薄目で盗み見ているリギィにもはっきりと見て取れた。
なんて幸せそうな顔なんだろうか。
(やっぱ・・・ユアンってそうなんだよな。ブラムのこと・・・そっか。そっか・・・)
それ以上見ているとこっちが恥ずかしくなってしまいそうなので、リギィはギュッと目を閉じた。
淡い失恋気分のはずなのだが、事実を知ってしまった事へのドキドキの方が強かった。
ある夜の出来事その②
その日は宿に泊まった。
ブラムは情報収集という名目で酒場に繰り出してしまったので、リギィとユアン二人だけで就寝した。
ライラックでトイパル座と出会って以降・・・つまりはユアンとブラムの雰囲気がなんだか今までとは変わってからは、パッタリと朝帰りをしなくなったブラムだったが、この晩は久しぶりに帰りが遅かった。
ユアンが何処となく寂しそうに“もうそろそろ寝ましょうか”と言った時は、リギィは心の中でブラムを罵倒したものだ。
(なんだよブラムのヤツ、結局浮気者なんじゃんか・・・)
酒場で知り合った女の家にでもしけ込んでいるのではないか、そんなことを考えていたらムカムカして目が冴えた。当のユアンはすっかり眠ってしまったらしく、実に穏やかな寝息を立てているのだが・・・。
リギィが一人悶々としていると、まもなくしてブラムが帰ってきた。朝帰りではなかったようだ。
「あー・・・流石にもう寝ちまったか」
誰に当てるともなく溜息と共に呟いている。
リギィは寝たふりをしつつ鼻を効かせた。酒と煙草の臭いはするものの、女の匂いは無さそうなのでひとまずホッとする。いや、何もリギィがホッとする必要もないのだが。
ブラムはシャワーでも浴びに行くのかと思いきや、ユアンの眠っているベッドに近付いて足を止めた。
(何してんだろ・・・?)
ブラムに動く気配がないので、リギィはこっそりと目を開けてみる。ブラムはユアンの寝顔を愛おしそうに眺めていた。
目尻は下がり、頬は緩んで、“メロメロ”とか“骨抜き”とかいうイメージを絵に描いたらきっとこんな顔だ。
普段のブラムも十分ユアンにデレデレだと思っていたが、序の口だったらしい。ここまで締まりのない表情は見たのは初めてだった。
ブラムはユアンの頬に触れる。髪を梳くように撫で、今度はその額に触れる。労るような手つきは優しく、ユアンの眠りを妨げることもない。
ブラムはふっと微笑み、ユアンの額にキスを落とした。
「愛してるよ」
ほとんど声にならない囁きだったが、人の数倍も聴力の優れているリギィにはバッチリ聞こえた。心臓がバクバクしている。
(寝顔に向かって“愛してる”って・・・うわーうわー、ブラムってやっぱたらしだ)
リギィは悶絶しそうなのを必死に堪えた。
ある夜の出来事その③
この日もまた宿で三人部屋だった。
リギィはこれまた奇跡的に夜中に起きた。普段なら絶対に起きない自信があるのだが、この晩はなぜか微かな物音で目が覚めたのだ。音というよりは声で、だが。
「ブラム・・・ゃ・・・」
それは聞き慣れているはずのユアンの声。けれど妙に上擦っていて、いつもと様子が違うのはすぐに分かった。
「それ・・・だめ・・・」
ユアンが泣きそうな声で言い、ベッドが軋む音がする。
「ん? なんで駄目なんだ?」
次に聞こえて来たのはブラムの声だ。甘ったるい囁きは、少しばかりの意地悪さを含んでいる。
「だって、くすぐった・・・い・・から。耳・・っ・・・舐めるの、や・・・ぁ」
ユアンの言葉がリギィに衝撃を与えた。
(え? え? え? な、な、な、な、な、何!? 二人何してんの!? 耳? 舐め? えぇ!?)
もう大混乱だ。
思わず叫び出しそうになったので、手で口を塞ぎながらそーっと目を開ける。するとベッドの端でシーツにしがみつくようにしているユアンと、それを後ろから抱きしめているブラムの姿が見えた。隣のベッドには確かユアンだけが眠っていたはずだが、今はユアンとブラムが二人一緒の布団にいる。
「くすぐったいだけ、か? 」
「ひゃっ・・・」
ブラムがユアンの耳を食みながら吐息と共に囁く。ユアンはびくんと震えた。
「なぁ、ユアン?」
「あっ・・・ぁん・・・」
「くすぐったいだけ?」
「・・・や・・・ぁ」
息と、舌と、唇で耳殻をなぞり、愛撫する。その度にユアンの甘い声が漏れ、徐々に息遣いも乱れ始めた。
(な、なんか・・・ユアンの声じゃないみたいだ)
リギィは思わず生唾を飲み込む。心臓は爆発しそうだし、極度の興奮の所為で自然と息も上がっている。これ以上見てはいけないとは思うのだが、初めての刺激的な光景に目が離せない。
「やっ、ブラム・・・」
ユアンがまた大きく身を捩った。
今度はどうしたのだろうと目を凝らしてみれば、ユアンの胸元の辺りで布団がもぞもぞと動いている。中でブラムが手を動かしているのだろう。
「そこ・・ダメ・・っ・・・」
ユアンが泣きそうな顔で首を振る。既にベッドの端に追い詰められている所為で逃げるに逃げられないようだ。
「ここも? なんで?」
「あっ・・・ゃあ・・」
ブラムがまたわざとらしく問いかける。手を動かしながら耳への愛撫も再開されて、ユアンは一際甲高い声を上げた。
(ど、どこをどんな風にされてんだろ・・・)
リギィは息を飲む。布団で見えないことにもどかしさを感じた。
「だ、だって・・ぁ・・なんか、変な声・・・っ・・が、出ちゃ・・ぅ・・・から・・・」
布団が揺れる度に、ユアンはビクビクと身体を振るわせている。嬌声で紡がれた初々しい言葉に、ブラムは満足そうに笑った。
「じゃあ、声出せないようにしてやる」
腰に響くような色気のある声で囁く。
(こ、今度は何すんだ・・・?)
期待と興奮にリギィの鼻息も荒くなる。
「ユアン・・・」
ブラムはユアンを自分の方に向けさせ、しっとりと唇を塞いだ。
(うわ! き、き、き、キスした!!!!!)
リギィはまたも心の中で悶絶。
初めて間近で見るキスシーン。しかも、初めこそ唇の柔らかさを確かめ合うような軽い口付けだったものの、すぐに角度を付け、舌が絡み、濡れた音が響き始めた。
(ど、ど、ど、どうしようどうしよう!? もうオレ無理だよ!! こんなのエロすぎ・・・)
このまま一部始終を見せつけられてしまうのだろうかと、途端に戸惑い始める。お子様のリギィには刺激が強すぎて、もはや許容範囲を超えている。そう思いながらも目を逸らせないほど夢中になっているのだが。
「あ、あの・・・ブラム・・・」
不意に、ユアンが身を捩ってキスを逃れた。すっかり涙の浮かんだ熱っぽい瞳がブラムを捉える。
まるでこの先の行為を促すような表情だとリギィは思ったが、それに反してブラムは苦い顔をした。
「・・・・・・・・・分かった。今日はここまで、な」
深い溜息をつきながら頷き、ユアンの首筋に顔を埋める。ユアンをきつく抱きしめながら、自分の欲望を必死に抑え込んでいるように見えた。
(え!? ここまでって・・・え!? えぇっ!?)
拍子抜けしたのはリギィである。
「ごめん・・・なさい」
ユアンが消え去りそうな声で謝る。当然、リギィに対してではなくブラムに対してだ。
「謝んなって。ユアンがホントに嫌なことはしない」
ブラムはユアンの髪を撫でる。先程までの意地悪さはたち消えて、いつも通りの・・・いや、いつも以上に優しい笑みを浮かべている。
(ブラムって・・・なんか、もっと、こう、ケダモノなのかと思ってた・・・)
リギィはそんな失礼なことを考える。
リギィはまだ子供だが、男だ。最大限まで高まった欲望を抑えるのがどれだけツラいかは流石に分かる。というか、今まさにそんな状態だ。しかもブラムはあと一歩で欲望を果たせるというのに・・・
(ユアンのこと、すげー大事にしてるんだ・・・)
ブラムのユアンへの想いを感じ、リギィはまたドキドキした。
「あ、あの・・・嫌じゃ・・ないです」
ポツリとユアンが呟く。顔を真っ赤にして、未だユアンにのし掛かるような体勢でいるブラムの服をキュッと握りしめている。そして続けた。
「ただ・・・その、心の準備が・・・まだ・・あの・・・」
出来てなくて、と最後の方は殆ど声になってない。羞恥からか、視線も少し泳いでいる。
「お前・・・俺のこと萌え死にさせる気か? 」
ブラムが脱力したようにぼやく。せっかくおさまりかけてたのに、という何とも切ない呟きも聞こえてきた。
「え? え? 」
へたり込んだブラムにひたすら戸惑うユアン。
(ユアンそれ反則だ・・・)
リギィもまた完全ノックアウトされていた。
そんなこんなの夜を越えて、
「なぁ、オレ別に一人部屋でも良いんだけど・・・(二人っきりになりたいだろーし)」
宿屋に着く度、リギィはそんな提案をしてみる。
が、
「はぁ? 何言ってんだ、そんなもん金の無駄だろ(キッパリ)」
「みんな一緒が楽しいですよ(ニッコリ)」
ブラムもユアンもなぜか反対する。
リギィの気遣いは全く察してもらえないのだ。
最近の二人を見ていてよく思う。
(こういうのってなんだっけ・・・えっと・・・あ、そうだ)
「バカップル・・・」
リギィはぼそりと呟いた。
その日は野宿だった。
リギィはところ構わずごろ寝をして、ユアンはリギィの隣で膝を抱えるようにして座ったまま眠りについた。ブラムはいつもながら火の番をするために起きていると言っていた。
普段のリギィは一度寝たら滅多なことでは目覚めない自信がある。朝になり、ユアンに揺さぶられても起きずにいて業を煮やしたブラムに蹴り起こされるのが常だ。
だからそれは本当にたまたまのことだった。
鼻の中に虫が飛び込んで来たらしく、あまりのくすぐったさにもがいて目が覚めた。“もがっ”とか“ふがっ”とか、声を上げなかったのが幸いだった。
おぼろげに目を開けると、リギィの隣で眠っていたはずのユアンの背中が見えた。物音を立てないように、息すら潜めてそーっとそーっと移動している。
どこかに行ってしまうのだろうかとリギィが不安に感じたのも束の間、ユアンの行き先は何のことはない、ブラムの隣だった。
ユアンはうたた寝をしているブラムに自分の被っていたガウンを掛けてやり、自分もまたその傍らに入る。一つのガウンを分け合うため、ぴったりと身を寄せて寄り添っている。
ゆっくりとブラムの肩に頭を預けるユアンの表情は、薄目で盗み見ているリギィにもはっきりと見て取れた。
なんて幸せそうな顔なんだろうか。
(やっぱ・・・ユアンってそうなんだよな。ブラムのこと・・・そっか。そっか・・・)
それ以上見ているとこっちが恥ずかしくなってしまいそうなので、リギィはギュッと目を閉じた。
淡い失恋気分のはずなのだが、事実を知ってしまった事へのドキドキの方が強かった。
ある夜の出来事その②
その日は宿に泊まった。
ブラムは情報収集という名目で酒場に繰り出してしまったので、リギィとユアン二人だけで就寝した。
ライラックでトイパル座と出会って以降・・・つまりはユアンとブラムの雰囲気がなんだか今までとは変わってからは、パッタリと朝帰りをしなくなったブラムだったが、この晩は久しぶりに帰りが遅かった。
ユアンが何処となく寂しそうに“もうそろそろ寝ましょうか”と言った時は、リギィは心の中でブラムを罵倒したものだ。
(なんだよブラムのヤツ、結局浮気者なんじゃんか・・・)
酒場で知り合った女の家にでもしけ込んでいるのではないか、そんなことを考えていたらムカムカして目が冴えた。当のユアンはすっかり眠ってしまったらしく、実に穏やかな寝息を立てているのだが・・・。
リギィが一人悶々としていると、まもなくしてブラムが帰ってきた。朝帰りではなかったようだ。
「あー・・・流石にもう寝ちまったか」
誰に当てるともなく溜息と共に呟いている。
リギィは寝たふりをしつつ鼻を効かせた。酒と煙草の臭いはするものの、女の匂いは無さそうなのでひとまずホッとする。いや、何もリギィがホッとする必要もないのだが。
ブラムはシャワーでも浴びに行くのかと思いきや、ユアンの眠っているベッドに近付いて足を止めた。
(何してんだろ・・・?)
ブラムに動く気配がないので、リギィはこっそりと目を開けてみる。ブラムはユアンの寝顔を愛おしそうに眺めていた。
目尻は下がり、頬は緩んで、“メロメロ”とか“骨抜き”とかいうイメージを絵に描いたらきっとこんな顔だ。
普段のブラムも十分ユアンにデレデレだと思っていたが、序の口だったらしい。ここまで締まりのない表情は見たのは初めてだった。
ブラムはユアンの頬に触れる。髪を梳くように撫で、今度はその額に触れる。労るような手つきは優しく、ユアンの眠りを妨げることもない。
ブラムはふっと微笑み、ユアンの額にキスを落とした。
「愛してるよ」
ほとんど声にならない囁きだったが、人の数倍も聴力の優れているリギィにはバッチリ聞こえた。心臓がバクバクしている。
(寝顔に向かって“愛してる”って・・・うわーうわー、ブラムってやっぱたらしだ)
リギィは悶絶しそうなのを必死に堪えた。
ある夜の出来事その③
この日もまた宿で三人部屋だった。
リギィはこれまた奇跡的に夜中に起きた。普段なら絶対に起きない自信があるのだが、この晩はなぜか微かな物音で目が覚めたのだ。音というよりは声で、だが。
「ブラム・・・ゃ・・・」
それは聞き慣れているはずのユアンの声。けれど妙に上擦っていて、いつもと様子が違うのはすぐに分かった。
「それ・・・だめ・・・」
ユアンが泣きそうな声で言い、ベッドが軋む音がする。
「ん? なんで駄目なんだ?」
次に聞こえて来たのはブラムの声だ。甘ったるい囁きは、少しばかりの意地悪さを含んでいる。
「だって、くすぐった・・・い・・から。耳・・っ・・・舐めるの、や・・・ぁ」
ユアンの言葉がリギィに衝撃を与えた。
(え? え? え? な、な、な、な、な、何!? 二人何してんの!? 耳? 舐め? えぇ!?)
もう大混乱だ。
思わず叫び出しそうになったので、手で口を塞ぎながらそーっと目を開ける。するとベッドの端でシーツにしがみつくようにしているユアンと、それを後ろから抱きしめているブラムの姿が見えた。隣のベッドには確かユアンだけが眠っていたはずだが、今はユアンとブラムが二人一緒の布団にいる。
「くすぐったいだけ、か? 」
「ひゃっ・・・」
ブラムがユアンの耳を食みながら吐息と共に囁く。ユアンはびくんと震えた。
「なぁ、ユアン?」
「あっ・・・ぁん・・・」
「くすぐったいだけ?」
「・・・や・・・ぁ」
息と、舌と、唇で耳殻をなぞり、愛撫する。その度にユアンの甘い声が漏れ、徐々に息遣いも乱れ始めた。
(な、なんか・・・ユアンの声じゃないみたいだ)
リギィは思わず生唾を飲み込む。心臓は爆発しそうだし、極度の興奮の所為で自然と息も上がっている。これ以上見てはいけないとは思うのだが、初めての刺激的な光景に目が離せない。
「やっ、ブラム・・・」
ユアンがまた大きく身を捩った。
今度はどうしたのだろうと目を凝らしてみれば、ユアンの胸元の辺りで布団がもぞもぞと動いている。中でブラムが手を動かしているのだろう。
「そこ・・ダメ・・っ・・・」
ユアンが泣きそうな顔で首を振る。既にベッドの端に追い詰められている所為で逃げるに逃げられないようだ。
「ここも? なんで?」
「あっ・・・ゃあ・・」
ブラムがまたわざとらしく問いかける。手を動かしながら耳への愛撫も再開されて、ユアンは一際甲高い声を上げた。
(ど、どこをどんな風にされてんだろ・・・)
リギィは息を飲む。布団で見えないことにもどかしさを感じた。
「だ、だって・・ぁ・・なんか、変な声・・・っ・・が、出ちゃ・・ぅ・・・から・・・」
布団が揺れる度に、ユアンはビクビクと身体を振るわせている。嬌声で紡がれた初々しい言葉に、ブラムは満足そうに笑った。
「じゃあ、声出せないようにしてやる」
腰に響くような色気のある声で囁く。
(こ、今度は何すんだ・・・?)
期待と興奮にリギィの鼻息も荒くなる。
「ユアン・・・」
ブラムはユアンを自分の方に向けさせ、しっとりと唇を塞いだ。
(うわ! き、き、き、キスした!!!!!)
リギィはまたも心の中で悶絶。
初めて間近で見るキスシーン。しかも、初めこそ唇の柔らかさを確かめ合うような軽い口付けだったものの、すぐに角度を付け、舌が絡み、濡れた音が響き始めた。
(ど、ど、ど、どうしようどうしよう!? もうオレ無理だよ!! こんなのエロすぎ・・・)
このまま一部始終を見せつけられてしまうのだろうかと、途端に戸惑い始める。お子様のリギィには刺激が強すぎて、もはや許容範囲を超えている。そう思いながらも目を逸らせないほど夢中になっているのだが。
「あ、あの・・・ブラム・・・」
不意に、ユアンが身を捩ってキスを逃れた。すっかり涙の浮かんだ熱っぽい瞳がブラムを捉える。
まるでこの先の行為を促すような表情だとリギィは思ったが、それに反してブラムは苦い顔をした。
「・・・・・・・・・分かった。今日はここまで、な」
深い溜息をつきながら頷き、ユアンの首筋に顔を埋める。ユアンをきつく抱きしめながら、自分の欲望を必死に抑え込んでいるように見えた。
(え!? ここまでって・・・え!? えぇっ!?)
拍子抜けしたのはリギィである。
「ごめん・・・なさい」
ユアンが消え去りそうな声で謝る。当然、リギィに対してではなくブラムに対してだ。
「謝んなって。ユアンがホントに嫌なことはしない」
ブラムはユアンの髪を撫でる。先程までの意地悪さはたち消えて、いつも通りの・・・いや、いつも以上に優しい笑みを浮かべている。
(ブラムって・・・なんか、もっと、こう、ケダモノなのかと思ってた・・・)
リギィはそんな失礼なことを考える。
リギィはまだ子供だが、男だ。最大限まで高まった欲望を抑えるのがどれだけツラいかは流石に分かる。というか、今まさにそんな状態だ。しかもブラムはあと一歩で欲望を果たせるというのに・・・
(ユアンのこと、すげー大事にしてるんだ・・・)
ブラムのユアンへの想いを感じ、リギィはまたドキドキした。
「あ、あの・・・嫌じゃ・・ないです」
ポツリとユアンが呟く。顔を真っ赤にして、未だユアンにのし掛かるような体勢でいるブラムの服をキュッと握りしめている。そして続けた。
「ただ・・・その、心の準備が・・・まだ・・あの・・・」
出来てなくて、と最後の方は殆ど声になってない。羞恥からか、視線も少し泳いでいる。
「お前・・・俺のこと萌え死にさせる気か? 」
ブラムが脱力したようにぼやく。せっかくおさまりかけてたのに、という何とも切ない呟きも聞こえてきた。
「え? え? 」
へたり込んだブラムにひたすら戸惑うユアン。
(ユアンそれ反則だ・・・)
リギィもまた完全ノックアウトされていた。
そんなこんなの夜を越えて、
「なぁ、オレ別に一人部屋でも良いんだけど・・・(二人っきりになりたいだろーし)」
宿屋に着く度、リギィはそんな提案をしてみる。
が、
「はぁ? 何言ってんだ、そんなもん金の無駄だろ(キッパリ)」
「みんな一緒が楽しいですよ(ニッコリ)」
ブラムもユアンもなぜか反対する。
リギィの気遣いは全く察してもらえないのだ。
最近の二人を見ていてよく思う。
(こういうのってなんだっけ・・・えっと・・・あ、そうだ)
「バカップル・・・」
リギィはぼそりと呟いた。
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