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01.『FS-000』
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爽やかな風の流れる、緑の美しい森。
咲き誇る花々は歌い、小川のせせらぎは清らかな音楽を奏でています。
妖精とは、こういった森にいるのです。
「わあ! もしかしてあなた……人間さん?」
こちらに気付いた妖精が、羽をぱたぱた動かしながらやってきました。一見、十歳にも満たない幼い人間の女の子にも見えます。しかし人間よりも小柄で、背中にはガラスのような羽二対があります。
薄いピンク色のボブヘア。左右に突き出すのは尖った耳。身に纏うは花で飾られたシルクのドレス。彼女は宙で興奮気味に裸足をぱたぱた動かし、水色の目を丸くさせました。
「人間さんって、初めて見たわ! 私はペルペル! 人間さんのお名前は……?」
* * *
妖精。
それは世界に漂う生命エネルギーが形をなし、意思を持ったもの。
彼ら自身で何かに使うことはないものの、その秘めた力は莫大。
また世界と繋がった存在であり、いわばエネルギーの特異点的存在と言えた。
――妖精が発見されて以来、人類はこの存在が持つ莫大なエネルギーを、どうにかして得ようとしていた。
しかし未だにうまくはいっていなかった。妖精を捕まえ、どうにかその秘めた力、エネルギーを抽出しようにも、失敗に終わる。
何故なのか、と考えた者が一人。
「人間には扱えない形の力なのではないか?」
雛鳥は、親が食べるものを食べることはできない。そのための身体や力、技術がないからだ。雛にとって、親鳥の食べるものとは、扱えないものである。
では雛はどうやって食べ物を得ているのか。
親鳥が一度食べたものを吐き出すことによって、雛は食事ができる。親鳥によって食べやすい形にされたものを、雛は食べるのだ。
「では妖精にどうにか、秘めた力を『人間が取り扱える形』にしてもらい、我々が得る、というのはどうか」
とある研究所で進められた研究は、やがて妖精の子宮を使っての「エネルギー源となる物質の生成方法」にたどり着く。
ただしそれは理論上。ただしそれは考察。
実験が必要だった。
――妖精の捕獲計画の成果は、一体のみという結果に終わった。人間がまだ立ち入っていないような、つまり人間に対して警戒心の薄い妖精がいる場所を選んだが、一体を捕まえたところで、騒ぎに気付いた他の妖精は逃げてしまった。
けれども、人間に興味を持って近づいてきた最初の一体だけは捕獲できた。実験体として使うには複数体欲しかった、というのが研究者達の本音であったが、無事に一体だけでも捕まえられたことに感謝した。
「――放して! 放してよぉ!」
薄暗い部屋の中、台の上、仰向けにさせられ四肢を拘束された妖精が声を上げている。人間の幼女に似た姿の彼女は、台に縛り付けられるように拘束されているため、羽があっても役には立たない。
「なんでこんなことするの! ねえ!」
台の傍らに立つ男が、妖精の声を無視して、その服を掴む。力任せに引っ張る。
次の瞬間、服はもろく破れ散り、妖精の裸体が現れた。まだ膨らんでいない胸。小さな乳首。恐怖のためかひくひく動いている腹。毛の生えていない恥部はぴっちりと閉じている。
「ひいぃぃっ!?」
妖精の水色の瞳が恐怖に見開かれる。目の前に出されたものを見て、その瞳はさらに大きく開かれた。
「なに……それ……なんかやだ……」
ゆっくりと迫り来ていたのは、熱され真っ赤に燃え上がる鉄――焼き鏝だった。
「あっ、あっ、それやだ! こないで、こないでっ……!」
妖精は涙を流しながら頭を振り身じろぎする。しかし拘束から逃げ出すことはできない。灼熱は彼女の臍の下に近づいていく。
じゅぅぅううぅぅぅ……、と焼け焦げる音がする。
「がぁああぁぁぁあああぁああっ!?!?」
喉が裂けそうなほどの悲鳴をあげ、妖精が身体を跳ね上げる。焼き鏝を押しつけられた腹は、そのまま押しつけられ続ける。
「がぁぁぁっ……あぁぁ……」
まもなくして妖精が脱力した。目を開けたまま、気絶していた。
焼き鏝が離れる。
『FS-000』
臍の下には新しい名前が刻まれていた。
咲き誇る花々は歌い、小川のせせらぎは清らかな音楽を奏でています。
妖精とは、こういった森にいるのです。
「わあ! もしかしてあなた……人間さん?」
こちらに気付いた妖精が、羽をぱたぱた動かしながらやってきました。一見、十歳にも満たない幼い人間の女の子にも見えます。しかし人間よりも小柄で、背中にはガラスのような羽二対があります。
薄いピンク色のボブヘア。左右に突き出すのは尖った耳。身に纏うは花で飾られたシルクのドレス。彼女は宙で興奮気味に裸足をぱたぱた動かし、水色の目を丸くさせました。
「人間さんって、初めて見たわ! 私はペルペル! 人間さんのお名前は……?」
* * *
妖精。
それは世界に漂う生命エネルギーが形をなし、意思を持ったもの。
彼ら自身で何かに使うことはないものの、その秘めた力は莫大。
また世界と繋がった存在であり、いわばエネルギーの特異点的存在と言えた。
――妖精が発見されて以来、人類はこの存在が持つ莫大なエネルギーを、どうにかして得ようとしていた。
しかし未だにうまくはいっていなかった。妖精を捕まえ、どうにかその秘めた力、エネルギーを抽出しようにも、失敗に終わる。
何故なのか、と考えた者が一人。
「人間には扱えない形の力なのではないか?」
雛鳥は、親が食べるものを食べることはできない。そのための身体や力、技術がないからだ。雛にとって、親鳥の食べるものとは、扱えないものである。
では雛はどうやって食べ物を得ているのか。
親鳥が一度食べたものを吐き出すことによって、雛は食事ができる。親鳥によって食べやすい形にされたものを、雛は食べるのだ。
「では妖精にどうにか、秘めた力を『人間が取り扱える形』にしてもらい、我々が得る、というのはどうか」
とある研究所で進められた研究は、やがて妖精の子宮を使っての「エネルギー源となる物質の生成方法」にたどり着く。
ただしそれは理論上。ただしそれは考察。
実験が必要だった。
――妖精の捕獲計画の成果は、一体のみという結果に終わった。人間がまだ立ち入っていないような、つまり人間に対して警戒心の薄い妖精がいる場所を選んだが、一体を捕まえたところで、騒ぎに気付いた他の妖精は逃げてしまった。
けれども、人間に興味を持って近づいてきた最初の一体だけは捕獲できた。実験体として使うには複数体欲しかった、というのが研究者達の本音であったが、無事に一体だけでも捕まえられたことに感謝した。
「――放して! 放してよぉ!」
薄暗い部屋の中、台の上、仰向けにさせられ四肢を拘束された妖精が声を上げている。人間の幼女に似た姿の彼女は、台に縛り付けられるように拘束されているため、羽があっても役には立たない。
「なんでこんなことするの! ねえ!」
台の傍らに立つ男が、妖精の声を無視して、その服を掴む。力任せに引っ張る。
次の瞬間、服はもろく破れ散り、妖精の裸体が現れた。まだ膨らんでいない胸。小さな乳首。恐怖のためかひくひく動いている腹。毛の生えていない恥部はぴっちりと閉じている。
「ひいぃぃっ!?」
妖精の水色の瞳が恐怖に見開かれる。目の前に出されたものを見て、その瞳はさらに大きく開かれた。
「なに……それ……なんかやだ……」
ゆっくりと迫り来ていたのは、熱され真っ赤に燃え上がる鉄――焼き鏝だった。
「あっ、あっ、それやだ! こないで、こないでっ……!」
妖精は涙を流しながら頭を振り身じろぎする。しかし拘束から逃げ出すことはできない。灼熱は彼女の臍の下に近づいていく。
じゅぅぅううぅぅぅ……、と焼け焦げる音がする。
「がぁああぁぁぁあああぁああっ!?!?」
喉が裂けそうなほどの悲鳴をあげ、妖精が身体を跳ね上げる。焼き鏝を押しつけられた腹は、そのまま押しつけられ続ける。
「がぁぁぁっ……あぁぁ……」
まもなくして妖精が脱力した。目を開けたまま、気絶していた。
焼き鏝が離れる。
『FS-000』
臍の下には新しい名前が刻まれていた。
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