奴隷落ちを免れた令嬢は生きるために奮闘する。~いつかまた、アネモネの咲く丘で会いましょう〜

珠音

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祭りの儀式

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「何で花なの?」 

『言ったでしょう?フィオラには花がないって。だからわざわざ買って来てくれたのではないですか』 

「え、そういう意味だったのか……じゃなくて、なんでわざわざ買ってまで頭に飾る必要があるんだよ」 

 ニコライがフィオラから離れなければ絡まれることもなかった。そしてニコライから責められることもなかったのに。 
 フィオラは頬を膨らませた。 

「なんでって、君が周りから注目されてるから……」 

「は?」 

 フィオラはレイに文句を言ったわけだが、当然の如くニコライが反応する。 
 フィオラが覗き込むようにニコライを見上げると、不自然なほど激しく視線を反らされた。 

「あとはミーシャにでも聞いてくれ!……それはそうと、フィオラは何か欲しいものないのか?」 

 ニコライは何かを誤魔化すかのように宝飾店のドアを開けた。 

「欲しいものなんて……」 

 ニコライに言われて店内を見渡すと、年頃の女の子が好むであろうアクセサリーが所狭しと並んでいた。 
 フィオラの返事を待たず、ニコライはずんずんと店の奥へと入って行く。 

「ミーシャに聞け。だって」 

 知っているなら教えてくれたらいいのに。どうしてわざわざミーシャに聞かなくてはいけないのか。 

 ―これはお嬢様ので、こちらが旦那様のです。 

「……あ?」 

 その時、出掛けに言われたミーシャの言葉がフィオラの脳裏に蘇る。 

「そういえぱ、ミーシャから花を渡されたんだっけ」 

 慌てて記憶を呼び起こす。 

「えーと、あの時……あっ、そうだ芋虫を見つけて……」 

 ミーシャから花を渡されたフィオラは、玄関を出たところで芝生の上を這う芋虫に出会した。
 そして、踏まれないように近くの葉っぱの上に乗せてあげようとして、持っていた花は地面に置いた。 

 その後、どうしたっけ…… 

「……地面に置いて……そのまま、忘れた」 

『虫に気を取られて忘れるなんて……子供ですか』 

「どうせ、レイは気付いてたんだろ?どうして言ってくれなかったんだよ?!」 

『私の時代と勝手が違うかもしれなかったので……まあ、いいかな?と……』 

「何だそれ。花に何か意味あんの?祭りの儀式とか?」 

『赤い花をつけていると「婚約者がいます」白い花は「恋人募集中」という意味です。お祭りの期間中の方が相手を見つけやすいみたいですからね。儀式と言えば儀式なのでしょうね』 

「へぇー……じゃあ、ピンクとか黄色は?」 

 思い返せば道行く人達のほとんどが花をつけていたような気がする。その中には赤や白だけでなく、ピンクや黄色もあった。 

『それは知りません。私の時代はありませんでした。ミーシャさんに聞いてみて下さい』 

「……またミーシャかよ。そもそも私の時代って、そんな変わんないだろ」 

『そうですねぇ……千年くらいしか変わらないですかねぇ』 

「ははっ!んなワケねーだろ!じゃあ、レイは何歳なんだって話になるじゃねーか」 

 レイの面白くもない冗談をフィオラは鼻で笑った。 
 しかし、ニコライにしてもレイにしても、少しミーシャに頼り過ぎではなかろうか。 

 いや。それとも、私に常識がないのか?? 

 このままでは不味いのかもしれない。 フィオラは初めて世間とのズレに焦り始めていた。






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