奴隷落ちを免れた令嬢は生きるために奮闘する。~いつかまた、アネモネの咲く丘で会いましょう〜

珠音

文字の大きさ
12 / 88

城塞

しおりを挟む
「キン○○蹴り上げて、蹲ったところを顎を蹴り上げて、からの踵落とし……って、どう?」 

『今、淑女らしからぬ言葉が聞こえた気がしましたが?……どう?とは??』 

 レイは開いた口が塞がらないとは、こういう顔だ。と、いうお手本の様な顔で、フィオラをまじまじと見つめた。 

「だからさ、公爵を倒しちゃおうかなって」 

『……どうしたら、そのような発想になるのか分かりかねますが、そんな事をしたら捨てられる以前に処罰をされますよ。そもそも魔法ならともかく、フィオラの体格では物理攻撃は効かないと思います』 

「あっ!そうか。魔法で倒せばいいのか。でも、人に攻撃した事ないから……死なせちゃうと、やっぱ不味いよね」 

『何を不穏な事を言っいるのです?そんなにお尋ね者になりたいのですか』 

「やっぱ無理か……そうなると、平民になって生活するのも難しそうだもんな」 

 フィオラは至極真面目に考えていた。考えた結果がコレでは、考えない方がマシのような気もしてくる。 

『もう観念して、普通に輿入れするしかないのではないですかねぇ』 

 レイの言う通りかもしれない。 もう既に、馬車の窓から公爵邸が見えているのだ。今更策を練ったところで遅いだろう。 

「まあ、それもそうなんだけどさ……いざとなったら屋敷をぶっ壊してでも逃げればいいしね」 

『あの屋敷だと、壊すのも大変そうですねぇ』 

 レイは茶化すように言ったが、確かに一理ある。 公爵邸は遠目からでも大きく頑丈そうな事が窺えた。 


 まるで、城塞だな。 


 辺境伯邸も大きいと思っていたが、それ以上な気がする。 




 そして、それは間違っていなかった。 

 フィオラは高く聳え立つ門を、あんぐりと口を開けて見上げてそう思った。 

「嬢ちゃん。それじゃ、達者でな。守衛には話は通してあっから」 

 ジミーは公爵邸に到着するなり、あっさりとフィオラを置いて、逃げるようにしてもと来た道を帰って行く。 

「薄情者だなぁ……」 

『仕方ありませんよ。彼の仕事はここまでなのですから』 

 分かってはいるが、この前の別れを惜しむ感じは何だったんだ。と、思わなくもない。 

「でも、それもそうか……逃げ出したくもなるか」 

 改めて門を見上げる。
 何しろ威圧感のある門構えなのだ。ただの平民であれば恐れ慄いてしまうのかもしれない。 

「フィオラ•ノートス様でしょうか」 

 不意に声を掛けられ、フィオラはびくっと肩を揺らす。 

「びっくりした……はい。そうです」 

 見るといつの間にいたのか、執事のような雰囲気の若い男性が立っていた。 

「驚かせてしまい、申し訳ございません。私はボレアス公爵家の執事、ヒューゴと申します。フィオラ・ノートス様、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」 

 そう言うと、ヒューゴは門ではない方向へと歩き出す。 

「あ、あれ?門から入るんじゃないの??」 

 てっきりこの大きな門から入るのだと思っていたフィオラは拍子抜けする。 
 ヒューゴが微かに訝しげな視線をフィオラに向けた。 

「……馬車や馬以外はこちらから出入りします」

 そう言ってヒューゴが手の平を向けたのは門の横にある勝手口。ヒューゴもここから出て来たのだろう。 

「なぁんだ。そういうのがあるんだ」 

 ヒューゴは何か言いたそうに片眉を上げたが、何も言わずにフィオラを屋敷の中へと案内した。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

底無しポーターは端倪すべからざる

さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。 ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。 攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。 そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。 ※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。 ※ごくまれに残酷描写を含みます。 ※【小説家になろう】様にも掲載しています。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...