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結婚か婚約か
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「目の前にいるのに、見るなってのは難しいな。それより、その魔女が私との結婚と何の関係があるんだ?」
「……彼女が目撃されている場所は、ノートス辺境伯領とそこに程近い所だ。実際、彼女と会った場所も辺境伯領。だが、その時以降は彼女に会えていない。その……もう一度、会いたいのだが……彼女について……何か知らないか?」
フィオラはどきっとする。
認識阻害魔法を覚える前は、人目につかないように注意を払っていたが、習得して以降は何も気にしていなかった。
そもそも、フィオラの移動手段は徒歩。転移魔法を使うにしても、一度は歩いて行かなければならないのだ。そんなに遠くへは行けなかった。
「し、知らない!まさか、その彼女の情報が知りたくて、わざわざ辺境伯の娘の私と結婚すんのか?」
フィオラは分かりやすく動揺した。
まさか自分を覚えていて、更に調査する人間がいるとは。
調子を取り戻したのかニコライはフィオラをひと睨みすると、フィオラを馬鹿にするように深く息を吐いた。
「まさか……それだけではない。俺自身も相手がいないせいで、縁談が断わりづらくなって来たからだ」
「それにしたって……」
一度会った女に会うのと、縁談を断わるためだけに自分なんかと結婚するのか。
さっき、寄って来る女はいないとか言ってたくせに。と、フィオラは理解に苦しむ。
何のために会いたいんだ??
そこまで考えて、フィオラは、はっと顔を上げる。
「そういうことか!」
「うん?……そういうことだ」
「つまり、あなたはその魔女を見つけて、その人と結婚したいんだろ!」
「……人の話を聞いていたか?」
ニコライは、口をぽかんとさせた。
視界の端では、レイがズッコケていた。
「だって、あんたが好きなのは、その魔女なんだろ?だから私はその魔女を探し出す間の縁談よけって事で……あんたが最初に言ってた確認したい事って、それじゃないのか?」
こんな縁談を受け入れてくれる令嬢などいないだろう。
しかし、もとより普通の縁談は見込めないフィオラならばどうだろう。 たとえ離婚したりして疵物になったとしても誰も困らない。そう考えられているに違いない。
ニコライは険しい表情で一点を見つめ、何やら考え込んでから口を開いた。
「……それは、俺に協力するという理解でいいのか?」
「ああ、いいよ。だから、別に結婚までしなくともいいんじゃないか?」
魔法で彼女になりニコライの前に現れて「あなたとは結婚出来ない」と、ひとこと言えばいい。その後は適当に誤魔化して姿を消してしまえば、ニコライも諦めて相応の女性との縁談を組むだろう。
そしてフィオラは晴れて自由の身となる。ただのフィオラとなって第二の人生を平民として好きに生きて行けばいい。
フィオラはほくそ笑んだ。
ニコライは再び考え込む仕草をしたがすぐに頷いた。
「彼女を探すのを手伝ってくれるのだな?」
「ああ」
「縁談よけにもなって?」
「ああ」
「では、あまり長引かせるのも良くない。期間を決めよう。そうだな、婚約するということにして……婚約期間として一年。というのはどうだ?」
「ああ、それで構わない」
「そうか」
ニコライは頷くと、婚姻契約書を退けて別の書類を取り出した。
「これは?」
「婚約契約書だ。あとの細かい契約が必要であれば別で作る。まずはこちらに署名をしてくれ」
なんと用意周到なのだろうか。フィオラは驚きつつもペンを取る。
「……細かい契約ってのは?」
「そうだな、作るとすれば……あなたが彼女を探す事に協力をするということと、彼女と俺が結婚した場合、あなたに相応の報酬を俺が支払う。という内容になるかな」
「なるほど」
婚約破棄という形になるのだろうから、それはそうかとフィオラは納得した。
「因みに、見つけられなかったり、彼女に……その……断られた場合とかはどうなるんだ?」
フィオラは署名を終えると、すっかり冷めてしまったお茶に口を付けた。
「その場合は、普通にあなたと俺が結婚することになる」
「ぶはっ!」
危うく口に含んだお茶を吹き出すところだった。
「なっ、なんでっ?!」
「そう書いてあるだろう?」
そう言ってニコライは、先程フィオラが署名した書類に指を落とした。
慌てて書類の内容を確認すると、一年の婚約期間を終えたら可及的速やかに婚姻する旨が記されていた。
「あ……あ、あの……別に、本当にしなくても……」
「もう署名してしまったから、それは出来ない」
『フィオラ。契約というのは、しっかりと条件を確認してからするものですよ。詐欺だったらどうするのです?』
レイが今更にそんな事を言う。
「先に、言ってよ~……てか、これはもう、詐欺じゃねぇか?」
「どこが詐欺だ。あなたにはメリットしかないと思うが?それに、なぜ先に条件を確認しなかった?」
ニコライもレイと同じ様な事を言う。 恨めしそうにニコライを見れば、ぎろっと睨まれた。
「俺だって、こんな事はしたくはない……」
ええ、そうでしょうともさ!!
フィオラは思いっきりふくれっ面をしてやった。
「……彼女が目撃されている場所は、ノートス辺境伯領とそこに程近い所だ。実際、彼女と会った場所も辺境伯領。だが、その時以降は彼女に会えていない。その……もう一度、会いたいのだが……彼女について……何か知らないか?」
フィオラはどきっとする。
認識阻害魔法を覚える前は、人目につかないように注意を払っていたが、習得して以降は何も気にしていなかった。
そもそも、フィオラの移動手段は徒歩。転移魔法を使うにしても、一度は歩いて行かなければならないのだ。そんなに遠くへは行けなかった。
「し、知らない!まさか、その彼女の情報が知りたくて、わざわざ辺境伯の娘の私と結婚すんのか?」
フィオラは分かりやすく動揺した。
まさか自分を覚えていて、更に調査する人間がいるとは。
調子を取り戻したのかニコライはフィオラをひと睨みすると、フィオラを馬鹿にするように深く息を吐いた。
「まさか……それだけではない。俺自身も相手がいないせいで、縁談が断わりづらくなって来たからだ」
「それにしたって……」
一度会った女に会うのと、縁談を断わるためだけに自分なんかと結婚するのか。
さっき、寄って来る女はいないとか言ってたくせに。と、フィオラは理解に苦しむ。
何のために会いたいんだ??
そこまで考えて、フィオラは、はっと顔を上げる。
「そういうことか!」
「うん?……そういうことだ」
「つまり、あなたはその魔女を見つけて、その人と結婚したいんだろ!」
「……人の話を聞いていたか?」
ニコライは、口をぽかんとさせた。
視界の端では、レイがズッコケていた。
「だって、あんたが好きなのは、その魔女なんだろ?だから私はその魔女を探し出す間の縁談よけって事で……あんたが最初に言ってた確認したい事って、それじゃないのか?」
こんな縁談を受け入れてくれる令嬢などいないだろう。
しかし、もとより普通の縁談は見込めないフィオラならばどうだろう。 たとえ離婚したりして疵物になったとしても誰も困らない。そう考えられているに違いない。
ニコライは険しい表情で一点を見つめ、何やら考え込んでから口を開いた。
「……それは、俺に協力するという理解でいいのか?」
「ああ、いいよ。だから、別に結婚までしなくともいいんじゃないか?」
魔法で彼女になりニコライの前に現れて「あなたとは結婚出来ない」と、ひとこと言えばいい。その後は適当に誤魔化して姿を消してしまえば、ニコライも諦めて相応の女性との縁談を組むだろう。
そしてフィオラは晴れて自由の身となる。ただのフィオラとなって第二の人生を平民として好きに生きて行けばいい。
フィオラはほくそ笑んだ。
ニコライは再び考え込む仕草をしたがすぐに頷いた。
「彼女を探すのを手伝ってくれるのだな?」
「ああ」
「縁談よけにもなって?」
「ああ」
「では、あまり長引かせるのも良くない。期間を決めよう。そうだな、婚約するということにして……婚約期間として一年。というのはどうだ?」
「ああ、それで構わない」
「そうか」
ニコライは頷くと、婚姻契約書を退けて別の書類を取り出した。
「これは?」
「婚約契約書だ。あとの細かい契約が必要であれば別で作る。まずはこちらに署名をしてくれ」
なんと用意周到なのだろうか。フィオラは驚きつつもペンを取る。
「……細かい契約ってのは?」
「そうだな、作るとすれば……あなたが彼女を探す事に協力をするということと、彼女と俺が結婚した場合、あなたに相応の報酬を俺が支払う。という内容になるかな」
「なるほど」
婚約破棄という形になるのだろうから、それはそうかとフィオラは納得した。
「因みに、見つけられなかったり、彼女に……その……断られた場合とかはどうなるんだ?」
フィオラは署名を終えると、すっかり冷めてしまったお茶に口を付けた。
「その場合は、普通にあなたと俺が結婚することになる」
「ぶはっ!」
危うく口に含んだお茶を吹き出すところだった。
「なっ、なんでっ?!」
「そう書いてあるだろう?」
そう言ってニコライは、先程フィオラが署名した書類に指を落とした。
慌てて書類の内容を確認すると、一年の婚約期間を終えたら可及的速やかに婚姻する旨が記されていた。
「あ……あ、あの……別に、本当にしなくても……」
「もう署名してしまったから、それは出来ない」
『フィオラ。契約というのは、しっかりと条件を確認してからするものですよ。詐欺だったらどうするのです?』
レイが今更にそんな事を言う。
「先に、言ってよ~……てか、これはもう、詐欺じゃねぇか?」
「どこが詐欺だ。あなたにはメリットしかないと思うが?それに、なぜ先に条件を確認しなかった?」
ニコライもレイと同じ様な事を言う。 恨めしそうにニコライを見れば、ぎろっと睨まれた。
「俺だって、こんな事はしたくはない……」
ええ、そうでしょうともさ!!
フィオラは思いっきりふくれっ面をしてやった。
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