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一般魔法
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お風呂から上がると、ミーシャが待ち受けていた。
フィオラは着替えを持ち合わせていなかったが、何故かフィオラのサイズに近い服が何枚も用意されていたのでその中の一枚を借りる事にした。
「サイズはもう少し詰めた方がいいみたいですね。申し訳ありませんが、今日のところはこちらでご容赦願います」
フィオラとしては十分だ。だがしかし、公爵家としてはそうもいかないのか、ミーシャはフィオラを全体的に眺め「うーむ」と、唸る。
「ちょっとタオルを貸してくれる?」
服のサイズなど、どうでもいい。フィオラが髪を乾かそうとタオルに手を伸ばすと、先にミーシャに取り上げられた。
「え、ちょっと……」
急に虐めが始まったのか。と、フィオラが戸惑っていると、ミーシャは無言のまま笑顔でフィオラの髪を乾かし始めた。
楽しそうだから、まあ、いっか。
ミーシャはお喋りが好きなのか、フィオラがまともに返事もしていないのにぺらぺらと話し掛けてくる。
「やっぱり!お嬢様はお肌が白いと思っていたんですよね~。思った通りでした!」
恥ずかしい話だが、フィオラの肌は垢で黒くなっていた。
ここに来る前に洗ったはずなんだけどな……
湯船には1cmくらいの垢の膜が出来上がっていた。
確かに洗濯物のように洗われたが、それは二週間以上前の話。それでもこんなに汚れているとは思っていなかった。
湯船に浮いた垢をミーシャに見られると思うと恥ずかしくなる。
「あの……もう自分でやるから」
恥ずかしさもあって、もう何度目かの主張をしたが、ミーシャに笑顔で躱された。
「そろそろ大丈夫でしょうか。お嬢様、もう少し待って下さいね」
そう言うとミーシャは、タオルで全体的に水分を拭き取ったフィオラの頭に両手を翳した。そして、ぶつぶつと何事か呟いている。
「ミーシャ?……わっ?!」
何をしているのだろう。と、ミーシャを振り返ると、同時にミーシャの両手から温風が吹き出した。 よく見ると、ミーシャの両手とフィオラの間に小さな魔法陣が浮かび上がっている。
「あ、お嬢様。正面を向いていて下さい。顔がかぴかぴになってしまいます」
慌てて正面を向いたお陰で顔はかぴかぴにならなかったが、髪はあっという間に乾いた。
「へー。これが魔法か」
「はい。でも、私はあまり風量が作れないので、少し水気を拭き取らないと時間が掛かってしまうのです」
ミーシャは魔法四元素の内の、火と風の要素を持っているのだという。どちらも魔力としては弱いが、二つの要素が使えるのは珍しい。と、いうことで公爵家のメイドに採用された経緯がある。
実は、お風呂のお湯もミーシャが魔法で沸かしてくれたものだった。
フィオラの使う魔法は、一般的な魔法とは違い魔法陣を使わない。まともに魔法を見たのは、小さな頃に母親が見せてくれた以来だった。
「お風呂に入りたい時は、いつでも言って下さい!」
ミーシャはフィオラの事情を知っているのか、魔法に感心していることに何の違和感もないようだ。それどころか、無邪気にドヤ顔で「むんっ」と、力こぶを作って見せた。 これが他の者であったら、魔力無しのフィオラを蔑むところなのかもしれない。
無邪気なミーシャに、フィオラの顔は綻んだ。
これからは、黒い顔にならずに済みそうだ。
フィオラの支度が整っても、ミーシャのお喋りは続いていた。 よく考えたら、ミーシャの他の使用人は男性だけ。同年代のフィオラが屋敷に来た事が嬉しいのだろう。
まあ、他はおっさんだもんなぁ~……
ふわぁ。と、フィオラは人目も憚らず大きな欠伸をする。
中途半端な時間に湯に入ったせいか、ぽかぽかとした眠気がフィオラを襲って来た。
「夕食まで、少しお休みになりますか?」
メイドとしては優秀らしいミーシャが、フィオラをベッドへ促した。
「ぅわっ?!なんだこのベッド!沈むぞ?!」
フィオラはベッドに潜り込んだ途端、その柔らかさに目が覚めた。今までの板のような布団とは違い、その包み込まれるような柔らかさ。
「こんな布団じゃ、どきどきして、眠れな……すぅー……」
目が覚めたのは一瞬で、フィオラはその気持ちよさに瞬く間に眠りに落ちていった。
フィオラは着替えを持ち合わせていなかったが、何故かフィオラのサイズに近い服が何枚も用意されていたのでその中の一枚を借りる事にした。
「サイズはもう少し詰めた方がいいみたいですね。申し訳ありませんが、今日のところはこちらでご容赦願います」
フィオラとしては十分だ。だがしかし、公爵家としてはそうもいかないのか、ミーシャはフィオラを全体的に眺め「うーむ」と、唸る。
「ちょっとタオルを貸してくれる?」
服のサイズなど、どうでもいい。フィオラが髪を乾かそうとタオルに手を伸ばすと、先にミーシャに取り上げられた。
「え、ちょっと……」
急に虐めが始まったのか。と、フィオラが戸惑っていると、ミーシャは無言のまま笑顔でフィオラの髪を乾かし始めた。
楽しそうだから、まあ、いっか。
ミーシャはお喋りが好きなのか、フィオラがまともに返事もしていないのにぺらぺらと話し掛けてくる。
「やっぱり!お嬢様はお肌が白いと思っていたんですよね~。思った通りでした!」
恥ずかしい話だが、フィオラの肌は垢で黒くなっていた。
ここに来る前に洗ったはずなんだけどな……
湯船には1cmくらいの垢の膜が出来上がっていた。
確かに洗濯物のように洗われたが、それは二週間以上前の話。それでもこんなに汚れているとは思っていなかった。
湯船に浮いた垢をミーシャに見られると思うと恥ずかしくなる。
「あの……もう自分でやるから」
恥ずかしさもあって、もう何度目かの主張をしたが、ミーシャに笑顔で躱された。
「そろそろ大丈夫でしょうか。お嬢様、もう少し待って下さいね」
そう言うとミーシャは、タオルで全体的に水分を拭き取ったフィオラの頭に両手を翳した。そして、ぶつぶつと何事か呟いている。
「ミーシャ?……わっ?!」
何をしているのだろう。と、ミーシャを振り返ると、同時にミーシャの両手から温風が吹き出した。 よく見ると、ミーシャの両手とフィオラの間に小さな魔法陣が浮かび上がっている。
「あ、お嬢様。正面を向いていて下さい。顔がかぴかぴになってしまいます」
慌てて正面を向いたお陰で顔はかぴかぴにならなかったが、髪はあっという間に乾いた。
「へー。これが魔法か」
「はい。でも、私はあまり風量が作れないので、少し水気を拭き取らないと時間が掛かってしまうのです」
ミーシャは魔法四元素の内の、火と風の要素を持っているのだという。どちらも魔力としては弱いが、二つの要素が使えるのは珍しい。と、いうことで公爵家のメイドに採用された経緯がある。
実は、お風呂のお湯もミーシャが魔法で沸かしてくれたものだった。
フィオラの使う魔法は、一般的な魔法とは違い魔法陣を使わない。まともに魔法を見たのは、小さな頃に母親が見せてくれた以来だった。
「お風呂に入りたい時は、いつでも言って下さい!」
ミーシャはフィオラの事情を知っているのか、魔法に感心していることに何の違和感もないようだ。それどころか、無邪気にドヤ顔で「むんっ」と、力こぶを作って見せた。 これが他の者であったら、魔力無しのフィオラを蔑むところなのかもしれない。
無邪気なミーシャに、フィオラの顔は綻んだ。
これからは、黒い顔にならずに済みそうだ。
フィオラの支度が整っても、ミーシャのお喋りは続いていた。 よく考えたら、ミーシャの他の使用人は男性だけ。同年代のフィオラが屋敷に来た事が嬉しいのだろう。
まあ、他はおっさんだもんなぁ~……
ふわぁ。と、フィオラは人目も憚らず大きな欠伸をする。
中途半端な時間に湯に入ったせいか、ぽかぽかとした眠気がフィオラを襲って来た。
「夕食まで、少しお休みになりますか?」
メイドとしては優秀らしいミーシャが、フィオラをベッドへ促した。
「ぅわっ?!なんだこのベッド!沈むぞ?!」
フィオラはベッドに潜り込んだ途端、その柔らかさに目が覚めた。今までの板のような布団とは違い、その包み込まれるような柔らかさ。
「こんな布団じゃ、どきどきして、眠れな……すぅー……」
目が覚めたのは一瞬で、フィオラはその気持ちよさに瞬く間に眠りに落ちていった。
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