奴隷落ちを免れた令嬢は生きるために奮闘する。~いつかまた、アネモネの咲く丘で会いましょう〜

珠音

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似ている二人

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 フィオラが食堂で昼食を終えると、待ってましたとばかりにヒューゴが迎えに来た。 

「まあ、昨日の今日ですから?寝坊は良しとしましょう。えぇ、えぇ、「今日だけは」ですけれどもね?それはそうと、フィオラ嬢。食事をほとんど残されたと聞きましたが?」 

「……そんな事まで文句言われなきゃいけないのかよ?」 

 どこかに向かって廊下を歩きながら、ぐちぐちと始まった。 
 フィオラは食が細いのだ。外見を見たら分かるだろう。と、言ってやりたくなる。 しかも食事の最中、ずっとミーシャと料理長が横に立っていたのだ。食べにくいったらなかった。 

「文句ではありません。口に合わなかったのか。と、お聞きしているのです」 

「そんな聞き方してなかったじゃん!私は……胃が、小さいんだよ……」 

 今更ではあるが、満足に食事を与えられてこなかったと言っているのと同義。
 言いながら情けなくなってきたフィオラの声は尻窄みになり、口を尖らせた。 
 ヒューゴがため息を吐く。 

「分かりました。では、食事は問題なかったのですね?」 

「……うん。大丈夫」 

 ヒューゴのため息に、むっ、としたフィオラだったが、見ると予想外にヒューゴが優しい目をしていた。 
 母親やレイ以外の人間から、そんな目を向けられた記憶がないフィオラは思わず俯く。 

 び、びっくりした…… 

 どうしてかは分からないが、何故だかフィオラの顔は熱くなっていく。 何となくそんな顔を見られたくなくて、フィオラはずっと下を向いたままヒューゴの後ろをついて行った。 
 ヒューゴに連れて来られたのは広間。 

「では、先ずは初歩的なところから……フィオラ嬢、ここからあちらの壁まで歩いてもらえますか?」 

「え、歩く?……いいけど」 

 急に何だと思いながら、フィオラはとことこと広間を縦断する。
 途端に背後から盛大なため息が聞こえた。 

「な、何だよ?!」 

「ぜんっ……ぜん、駄目です!」 

 フィオラが振り返ると、肩を竦めて天を仰いだヒューゴが頭を横に振っていた。

  「背中を丸めないで胸を張って!脚もそんなガニ股に開かないで!」 

「はぁっ?!何だよ、いきなり!」 

「いいから、それを踏まえてもう一度!」 

 渋々とフィオラはもう一度、広間を歩く。 

「違います!ゴリラですか、あなたはっ?!」 

「ぁあ”っ?!」 

 唐突に始まったヒューゴのウォーキング教室は、三時間に及んだ。
 ひたすらに歩くこと、数十往復……いや、数百往復。 フィオラが体力の限界を迎えたところで、やっと休憩をもらえた。 

「フィオラ嬢は、やはり体力が必要ですね。暫くは食事マナーの講義にいたしますか……」 

 立っていることもままならなくなったフィオラを見て、ヒューゴが言う。 

「……やはりって何だよ。そんなこと、最初から分かってたはずだろ……」 

「いえ、フィオラ嬢がどの程度なのか把握しておく必要がありましたから」 

 ぜいぜいと肩で息をしているフィオラに、ヒューゴが嘯く。 

「昨日の事、根に持ってんな……」 

「明日からは、食事マナーと言葉遣いの講義にいたします」 

「なっ、何だよ!食事マナーだけって言ったじゃん」 

「「だけ」とは言っていません」 

 確かに。 「うぐぐっ」と唸るフィオラの横でレイが声を出して笑っている。その姿もフィオラには癪に障った。

  なんか……この二人、似てないか? 

 マナーを強要してくる人間は似ているのか。 レイと違って、実体のあるヒューゴからは逃げられそうになかった。





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