奴隷落ちを免れた令嬢は生きるために奮闘する。~いつかまた、アネモネの咲く丘で会いましょう〜

珠音

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ほっかむり

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 夜も更けた公爵邸。 
 その一室では、暗がりの中ふよふよと白い物が蠢いていた。 

『フィオラ……こんな時間に、何をしているのです?』 

 その蠢く白い物に呆れた声を掛けたのは、呆れた顔をしたレイだ。 部屋を出ようとしていた白い物が振り返る。 

「何って、その……野暮用だよ」 

 白いタオルをほっかむりにしていたフィオラが、そのタオルの隙間から目を覗かせた。 

『あなたにそのような付き合いがあるとは存じませんでしたが……一応お聞きします。こんな夜更けに、どちらへ?』 

 暗がりに白い物は、逆によく目立つ。 レイは敢えてそのことには触れずに問い掛けた。 

「どこって……キンバリーのとこ?」 

『あっさり白状しましたね。それにしても、あの男のところへとは……どうしてまた』 

「言っても言わなくても、レイはどうせついて来るんでしょ?それより、今日はいたんだね。出掛けなかったんだ?」 

『……何を言っているんですか。いつも、いますよ……』 

 誤魔化すように言ったレイの目が『それより……』と、じっと細められた。 
 夜更けに人目を忍ぶようにして男性に会いに行くなど、まるで夜這いのようではないか。 そう言っているようだった。 
 レイの責めるような視線を受けて、急に恥ずかしくなったフィオラはタオルを頭から外し、もじもじとおヘソの辺りでタオルを揉んだ。 

「ち、違うよ。これはさ、あいつに会ってるのを誰かに見られたらさ……だから、バレないように……でも!別に、やましいことはなくてさ……」 

 つまり、もう一度キンバリーと面会しようとしただけだったが、悲しいかな説明すればするほど、フィオラの顔は熱を持っていく。 

『何で、こんな夜更けに……でも、きっと何を言っても行くのでしょうね』 

 反対されると思ったから、何も言わずに行ってこようとしていたのだ。 
 諦めを含んだレイの言葉にフィオラは顔を上げると、何度も勢い良く頷いた。 

「ほらっ。何でか、あいつってば、魔女を連れて来ようとしてんじゃん?!だから、いっそのこと、こっちから行って先に拒否ってやろうと思ってさ!」 

『え、まさか、魔法を使った姿で彼に会うつもりですか』 

 フィオラはムカつく態度のキンバリーをぎゃふんと言わせてやりたかった。そして、考えついたのがコレなのだ。 
 だから、屋敷にいる人間が寝静まってから行動するしかなかったというわけだ。レイはフィオラの行動について、賛成はしないが納得はした。 

『因みに。何で、ほっかむりをする必要が?』 

「レイは分かってないなぁ。雰囲気だよ、雰囲気!」 

 果たして、分かってないのは誰なのか。 
 フィオラはタオルを頭に被り直して意気揚々と部屋を出た。

 レイは最後まで白いタオルや、その他諸々について言及はしなかったという。 

 白いタオルはさておき。この時のフィオラは、まさかこの後、面倒臭いことになるとは夢にも思っていなかった。








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