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八つ当たり
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「これが、お前のやり方か……?」
フィオラは目の前で駄々をこねる男を見下ろした。
到底、大人の男とは思えない。
しかし、確かにニコライに何かしらを教えたのはフィオラだった。
私に責任がある……のか??
果たして、本当に自分に責任があるのか。
飲み込みきれないものはあるが、フィオラは観念したようにひとつ息を吐く。
「いいか。一度しか言わないからよく聞け」
ぴたりとキンバリーが暴れるのを止めた。
「お前らは魔法陣に頼り過ぎだ」
「……ぇ」
この国の人間が魔法を使う際、必ず魔法陣を使う。
魔法陣を使う事で発動までの時間を早めたり、自分属性以外のものも使えたりする。特に魔法騎士は自分の武器に予め魔法陣を仕込んでおくようだ。
「だから、力の上限が生まれる」
魔法陣を掛け合わせれば属性の違うものも扱えるのだが、引き出す力の量は本人の持つ量のみ。 レイはこれを、一般魔法とか、新魔法と言っていた。
「……ぇえ?じゃ、どうすれば……」
キンバリーが途方に暮れた顔をした。
「自然の力を理解しろ、自分の細胞を理解しろ、空気に溶け込み自然と一体化しろ」
「はぁあーっ?!なんっㇲかそれっ?意味分かんねぇっすよ。適当な事を言って誤魔化さないで欲しいっす!!」
「それが理解出来なきゃ話になんねぇんだよ」
全てレイからの受け売りだが嘘ではない。もちろん、レイはこんな雑な言い方ではなかったが。
レイから教えて貰ったのは、自然界に存在するエネルギーを自分のエネルギーへと変換し放出するもの。故に無尽蔵。世界が終わるまで力を捻出出来る。
しかしその為には、自然はもとより自分自身の事も細胞レベルで理解しなければならない。 レイはこれを古代魔法と言っていた。
「ずるいっす!!団長には教えて、何で俺には教えてくれないんすかっ!!」
再びキンバリーは「ずるい、ずるい」と、喚き出した。
話になんねぇな。
フィオラは冷めた目でキンバリーを見下ろした。
結局キンバリーは、他人を妬む能力には長けているが、努力する能力は持ち合わせていないようだ。
ニコライが登場するまでは頑張っていたと自負していたのは嘘だったのか。何かを期待していたわけではないが、失望の念は拭えない。
「おいっ!キンバリー、うるさいぞ!!」
その時、留置室の扉が激しく叩かれた。
今夜の警備当番である騎士の内の一人、ウィルだった。 警備を担う人間が少ないこの屋敷では留置室だけを見張る人員を割けない。故にフィオラは簡単に侵入出来たのだが、流石に騒ぎ過ぎた(主にキンバリーが)様子を見に来られても致し方ない。
「むぅ……夢の中なのに」
キンバリーが相変わらず何か言っているが、今の姿を見られるのは不味い。
フィオラはキンバリーが扉に目を向けている隙を突いて自分の部屋に転移した。
『まさか、あの男に教えてあげるとは思いませんでした』
無事に部屋に戻って来て、魔女フィオラがフィオラに戻ったところでレイが言った。
勝手に教えた事を良く思っていないのかと思い、レイを見たら彼は微笑んでいる。
「教えたところで、どうせ何も出来ないだろ?」
『なら、何で親切に教えてあげたのです?』
「何だよ。だって、レイが言ったんだろ?私の所為だって……」
そもそもレイがニコライが強くなったのはフィオラが関係しているなんて事に気付かなければ、フィオラが責任を感じる事もなかったのである。
確かに、責任を感じたからと言ってキンバリーにも教えてあげる義務もないのだが。
「……なに、にやにやしてんだよ!」
『いやぁ~、別に?』
意味深にニヤつくレイを横目に、フィオラは頭に被っていた白いタオルを「もう必要ない」と、ぽいっとベットの上に放り投げた。
目が慣れたとはいえ、世間は暗闇。
その中に白く浮かび上がるタオル。
それををじっと見つめていたフィオラは、何かに気付いた。
「白って、目立つな……」
『そうですね』
レイのにやにやが深まる。これは絶対に気付いていたやつだ。
「何で教えてくれなかったんだよ」
顔を隠す為にほっかむりにしていたのに、目立っていては本末転倒である。
『雰囲気を重んじるとのことだったので』
「はっ?!それに……転移すれば簡単に留置室に入れる事も教えてくれなかっただろ!」
『ですから、それも「雰囲気」の一環なのかと……』
「ふざけんな!」
明らかに態と黙って見ていましたという態度でにやにやを止めないレイに、腹が立ったフィオラはソファーに置かれたクッションを投げ付ける。 当然、クッションはレイの透き通った体をすり抜け、床に転がった。
ほっかむりにしても、転移の件にしても、フィオラ自身で気付けることである。完全な八つ当たりであった。
八つ当たりだと薄っすら気付きながらも全部レイが悪い事にして、フィオラはベッドに飛び込む。
「面倒臭いから、私が魔女だって皆に全部バラしてやる!」
気の利いた事を言い返せず、苦し紛れにそれだけ言うとフィオラは頭から布団を被る。
『何故に今ですか?それに、言ったところで周りを混乱させるだけですよ』
レイの言う通りなのかもしれないが、既に寝息を立てているフィオラにレイの言葉が届いたか否かは定かではない。
布団の中で丸くなっているフィオラを窺ってからレイは顔を上げた。この一瞬で入眠出来るフィオラに感心する。
『これは……釘を刺しておいた方が良さそうですね』
ふぅむ。と、唸ったレイの姿が暗闇に消えて行った。
フィオラは目の前で駄々をこねる男を見下ろした。
到底、大人の男とは思えない。
しかし、確かにニコライに何かしらを教えたのはフィオラだった。
私に責任がある……のか??
果たして、本当に自分に責任があるのか。
飲み込みきれないものはあるが、フィオラは観念したようにひとつ息を吐く。
「いいか。一度しか言わないからよく聞け」
ぴたりとキンバリーが暴れるのを止めた。
「お前らは魔法陣に頼り過ぎだ」
「……ぇ」
この国の人間が魔法を使う際、必ず魔法陣を使う。
魔法陣を使う事で発動までの時間を早めたり、自分属性以外のものも使えたりする。特に魔法騎士は自分の武器に予め魔法陣を仕込んでおくようだ。
「だから、力の上限が生まれる」
魔法陣を掛け合わせれば属性の違うものも扱えるのだが、引き出す力の量は本人の持つ量のみ。 レイはこれを、一般魔法とか、新魔法と言っていた。
「……ぇえ?じゃ、どうすれば……」
キンバリーが途方に暮れた顔をした。
「自然の力を理解しろ、自分の細胞を理解しろ、空気に溶け込み自然と一体化しろ」
「はぁあーっ?!なんっㇲかそれっ?意味分かんねぇっすよ。適当な事を言って誤魔化さないで欲しいっす!!」
「それが理解出来なきゃ話になんねぇんだよ」
全てレイからの受け売りだが嘘ではない。もちろん、レイはこんな雑な言い方ではなかったが。
レイから教えて貰ったのは、自然界に存在するエネルギーを自分のエネルギーへと変換し放出するもの。故に無尽蔵。世界が終わるまで力を捻出出来る。
しかしその為には、自然はもとより自分自身の事も細胞レベルで理解しなければならない。 レイはこれを古代魔法と言っていた。
「ずるいっす!!団長には教えて、何で俺には教えてくれないんすかっ!!」
再びキンバリーは「ずるい、ずるい」と、喚き出した。
話になんねぇな。
フィオラは冷めた目でキンバリーを見下ろした。
結局キンバリーは、他人を妬む能力には長けているが、努力する能力は持ち合わせていないようだ。
ニコライが登場するまでは頑張っていたと自負していたのは嘘だったのか。何かを期待していたわけではないが、失望の念は拭えない。
「おいっ!キンバリー、うるさいぞ!!」
その時、留置室の扉が激しく叩かれた。
今夜の警備当番である騎士の内の一人、ウィルだった。 警備を担う人間が少ないこの屋敷では留置室だけを見張る人員を割けない。故にフィオラは簡単に侵入出来たのだが、流石に騒ぎ過ぎた(主にキンバリーが)様子を見に来られても致し方ない。
「むぅ……夢の中なのに」
キンバリーが相変わらず何か言っているが、今の姿を見られるのは不味い。
フィオラはキンバリーが扉に目を向けている隙を突いて自分の部屋に転移した。
『まさか、あの男に教えてあげるとは思いませんでした』
無事に部屋に戻って来て、魔女フィオラがフィオラに戻ったところでレイが言った。
勝手に教えた事を良く思っていないのかと思い、レイを見たら彼は微笑んでいる。
「教えたところで、どうせ何も出来ないだろ?」
『なら、何で親切に教えてあげたのです?』
「何だよ。だって、レイが言ったんだろ?私の所為だって……」
そもそもレイがニコライが強くなったのはフィオラが関係しているなんて事に気付かなければ、フィオラが責任を感じる事もなかったのである。
確かに、責任を感じたからと言ってキンバリーにも教えてあげる義務もないのだが。
「……なに、にやにやしてんだよ!」
『いやぁ~、別に?』
意味深にニヤつくレイを横目に、フィオラは頭に被っていた白いタオルを「もう必要ない」と、ぽいっとベットの上に放り投げた。
目が慣れたとはいえ、世間は暗闇。
その中に白く浮かび上がるタオル。
それををじっと見つめていたフィオラは、何かに気付いた。
「白って、目立つな……」
『そうですね』
レイのにやにやが深まる。これは絶対に気付いていたやつだ。
「何で教えてくれなかったんだよ」
顔を隠す為にほっかむりにしていたのに、目立っていては本末転倒である。
『雰囲気を重んじるとのことだったので』
「はっ?!それに……転移すれば簡単に留置室に入れる事も教えてくれなかっただろ!」
『ですから、それも「雰囲気」の一環なのかと……』
「ふざけんな!」
明らかに態と黙って見ていましたという態度でにやにやを止めないレイに、腹が立ったフィオラはソファーに置かれたクッションを投げ付ける。 当然、クッションはレイの透き通った体をすり抜け、床に転がった。
ほっかむりにしても、転移の件にしても、フィオラ自身で気付けることである。完全な八つ当たりであった。
八つ当たりだと薄っすら気付きながらも全部レイが悪い事にして、フィオラはベッドに飛び込む。
「面倒臭いから、私が魔女だって皆に全部バラしてやる!」
気の利いた事を言い返せず、苦し紛れにそれだけ言うとフィオラは頭から布団を被る。
『何故に今ですか?それに、言ったところで周りを混乱させるだけですよ』
レイの言う通りなのかもしれないが、既に寝息を立てているフィオラにレイの言葉が届いたか否かは定かではない。
布団の中で丸くなっているフィオラを窺ってからレイは顔を上げた。この一瞬で入眠出来るフィオラに感心する。
『これは……釘を刺しておいた方が良さそうですね』
ふぅむ。と、唸ったレイの姿が暗闇に消えて行った。
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