奴隷落ちを免れた令嬢は生きるために奮闘する。~いつかまた、アネモネの咲く丘で会いましょう〜

珠音

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ニコライの心配

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 この日の夕食は、珍しくニコライと一緒だった。明日の予定の確認も兼ねているのだろう。 
 ニコライは忙しいらしく、一度帰って来てからこの短期間に王都と屋敷を何度か行き来していた。 

「……明日はいつも通りの起床時間でいいだろう」 

 予定の確認とはいっても、大したことはない。フィオラは大人しく馬車に乗るだけだ。要は、朝起きられるかどうか。 
 だというのに、言葉を終えたニコライが何か言いたそうにフィオラを見ている。 

「何?まだ何かあんの?」 

 顔に食べかすでもついているのか。 
 フィオラはさり気なく口元にナプキンを当てたが、特に汚れてはいなかった。 

「いや……何でもない」 

 ニコライは、すっと視線を落とし、何事もない素振りでスープを口に運んだ。 

 何だよ、気になるなぁ…… 

 その後も、食事中ニコライの視線に気付きフィオラが視線を向けると、ニコライが視線を逸らす。というやり取りは続いた。 
 そして、それは翌日の馬車の中でも行われた。 

「ちょっと、いい加減にして!言いたい事があるなら、はっきり言ってくれよ!気持ち悪いな!」 

 何度目が合っても「何でもない」を繰り返され、とうとうフィオラの我慢にも限界が来た。 
 なにしろ同じ馬車で対面で座っているのだ。目的地までこれが続くかと思ったらうんざりする。 
 流石に自覚があるのか、ニコライも苦笑した。 

「いや、すまん。そうだよな……」 

 ニコライはそう言って、言いにくそうにまた視線を泳がせる。 

「何だよ。何か私に悪い事でも隠してんのか?」 

「そうじゃない!ただ……悪いかどうかは分からないんだ……」 

「いいから、早く言えよ」 

「あー……建国祭が終わったら、そのまま調査に向かうことになる」 

「へー、いってらっしゃい」 

 ニコライの深刻そうな雰囲気に何事かと思ったが、なんてことはない、仕事で行くのだろう魔物調査の話だった。 

「……フィオラも一緒にな」 

「……は?」 

 と、思ったら何か違った。 
 魔法騎士団の魔物調査には違いないが、どうしてかそこにフィオラも同行するらしい。 

「別に、いいけど……」 

 持て余す時間がなくなることは、フィオラにとって悪い事ではない。寧ろありがたい。 
 それにしても建国祭の参加は有無を言わせなかったくせに、今回は何でそんなに言いにくそうに言うんだろう。 

「その……危険な場所は極力避けるつもりだが……」 

 もしかして、心配してくれているのだろうか。 
 曲がりなりにも婚約者であるフィオラを、魔物のいる場所に連れて行くのだから当然と言えば、当然だった。 

「団員たちもなるべく君に近づけさせないようにするが……出来れば、君は外に出ないでくれ」 

 と、思ったら何か違った。 

 ……つまり、問題を起こすなってことか。 
 あれは私の所為じゃないんだけどなぁ…… 

 フィオラのことを心配しているのではない。キンバリーの時のような問題が起きることをニコライは心配しているのだ。 
 そう考えると、フィオラは釈然としない。 

「……分かったよ」 

 それでも、一人で暇を持て余しているよりかはマシか。 
 フィオラは渋々でも納得するしかなかった。









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