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喜楽 0 双子の再会
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部屋と呼ぶには余りにも粗末な、薄暗い部屋。 人間の男が入ってくる。逆光で顔は判らない。
「おい、仕事だ」
褐色の肌に虎族特有の模様が全身にある獣人虎族の青年。何故か左手にのみ黒い手袋をはめて いる。渡された写真を無表情に見つめる。白い毛並みの虎族の青年が写っていた。
彼は子供の頃、増水した河で溺れここの人間に拾われた。青年には双子の兄がいたが、川に一緒に落ち死んだ。死体を見たわけではない。あの濁流の中、生きている訳がないのだ。自分は運が良かったのだと青年は思っている。拾われた時には、怪我で右目を無くしていた。人として育てら れる事無く物として扱われ、闇に紛れ人を殺すことを教えられる。
青年は写真の裏に書かれた、標的の居場所を確認すと、写真を破り捨て部屋を出ていく。彼が標的の名を知るはずはない。標的の名は風牙と言う……。
フェルの帰りを皆で待っていたが、帰りが遅く なりそうだったので先に食事を済ませる。夜も遅 く晩御飯も終わり、風牙は一人食器の片付けをし ていた。
風牙の後ろに影が近寄る。静かに左手の手袋を外す影。
「昂、何か用ですか?」
他人が居るとは思っていなかったので、昂か誰かだと思っていた。風牙はふと、後ろに人の気配を感じ、片付け掛けの皿を持ったまま振り向く。
褐色の肌、虎族の男が立っていた。風牙も驚いたが、気付かれるとは思っていなかったらしい、 男の方も一瞬躊躇した。
「蒼牙!」
皿が手元から落ち、床へ落ちる。
風牙は叫び、一歩前に出る。男は反応を示し、心臓を狙っていたのだろう、男の左手は心を外れ右肩を掠めた。
音に驚いたアサギと龍鬼が、台所へ入って来る。 男は進入した窓から、飛び出していく。
「待つて下さい! そう……が……?」
風牙は男を追い掛けようと、前に出るが膝が落ち足に力が入らない。
「風牙兄さん! 血が……」
アサギの、声が聞こえる。風牙は倒れると、そのまま意識を失ってしまった。
龍鬼が、風牙の体を静かに起こす。
「呪手じゃ……」
アサギの叫び声に驚き昂と九が、慌てた様子で入ってくる。
「おい、仕事だ」
褐色の肌に虎族特有の模様が全身にある獣人虎族の青年。何故か左手にのみ黒い手袋をはめて いる。渡された写真を無表情に見つめる。白い毛並みの虎族の青年が写っていた。
彼は子供の頃、増水した河で溺れここの人間に拾われた。青年には双子の兄がいたが、川に一緒に落ち死んだ。死体を見たわけではない。あの濁流の中、生きている訳がないのだ。自分は運が良かったのだと青年は思っている。拾われた時には、怪我で右目を無くしていた。人として育てら れる事無く物として扱われ、闇に紛れ人を殺すことを教えられる。
青年は写真の裏に書かれた、標的の居場所を確認すと、写真を破り捨て部屋を出ていく。彼が標的の名を知るはずはない。標的の名は風牙と言う……。
フェルの帰りを皆で待っていたが、帰りが遅く なりそうだったので先に食事を済ませる。夜も遅 く晩御飯も終わり、風牙は一人食器の片付けをし ていた。
風牙の後ろに影が近寄る。静かに左手の手袋を外す影。
「昂、何か用ですか?」
他人が居るとは思っていなかったので、昂か誰かだと思っていた。風牙はふと、後ろに人の気配を感じ、片付け掛けの皿を持ったまま振り向く。
褐色の肌、虎族の男が立っていた。風牙も驚いたが、気付かれるとは思っていなかったらしい、 男の方も一瞬躊躇した。
「蒼牙!」
皿が手元から落ち、床へ落ちる。
風牙は叫び、一歩前に出る。男は反応を示し、心臓を狙っていたのだろう、男の左手は心を外れ右肩を掠めた。
音に驚いたアサギと龍鬼が、台所へ入って来る。 男は進入した窓から、飛び出していく。
「待つて下さい! そう……が……?」
風牙は男を追い掛けようと、前に出るが膝が落ち足に力が入らない。
「風牙兄さん! 血が……」
アサギの、声が聞こえる。風牙は倒れると、そのまま意識を失ってしまった。
龍鬼が、風牙の体を静かに起こす。
「呪手じゃ……」
アサギの叫び声に驚き昂と九が、慌てた様子で入ってくる。
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