喜楽

喜楽 ０ 双子の再会

３

　今は現役を引退しフェルに全てを任せ隠居生活を送っている。龍鬼は、又大きな欠伸をすると、 一際大きい椅子に腰を掛けた。
「ああ、何でも良い。皆おはよう。今日はわしが、一番最後に起きたみたいじゃなぁ」
　仕事の支度をしに、この場を離れていた昂が、タイミング良く戻って来たところだった。
「じいちゃん！　おはよう」
「おじいちゃん、おはようございます」
「じいさん、おはよう」
　テーブルの近くに居た九とアサギ、戻って来た昴がそれぞれに挨拶をする。間も無く風牙が、龍鬼の前に朝食の乗った皿を置く。
「昂。お弁当忘れないように持って行って下さいね。九も……」
　テーブルの上に置いた包みを一つ取ると、九に渡し頭を撫でる。
「そんじゃあ、兄貴行って来る」
　昂は弁当の包みを掴むと、外へ出て行く。
「あ！　昴兄ちゃん待ってよ、九も行く！」
　九も、昂の後を追い掛けるように外へ出た。風牙は、外まで出て二人を見送る。
「今日は学校の近くに届けもんがあるから、九を近くまで送ってく」
　昴は九を抱き上げると、翼を広げ空高く舞い上がった。
「二人とも、気を付けて下さいねぇ」
　二人が出掛けるのを見届け、台所へ戻ると、アサギは食器等を片付け、龍鬼はお茶を啜りくつろいでいた。
「ご隠居、今日はどうしたんですか?　皆より起きて来るのが遅いなんて……」
　風牙は、龍鬼の側の椅子に腰を掛ける。
「何。本を読んどったら夢中になってしまってな」
　龍鬼は苦笑して、又茶を啜った。
「そうだったんですか、今日は私も寝坊しまいました」
　風牙は、穏やかな顔で笑う。鬼は眉間に皺を寄せ、風牙の顔を見下ろす。
「又あの夢を見たんじゃな？　忘れろとは言わんが、もう気に病む事も無かろう」
　風牙は何も答えず、ただ寂しそうに笑った。
　溜息を付き湯飲みを置くと龍鬼は煙管を吹かし始める。