喜楽

喜楽 １ ゴーレムと魔力

７

　ドラゴンは九に一層顔を近付けスンスンと鼻を鳴らしていたが、納得したのか九の顔を嘗めた。
「擽ったいよぉ！」
　九は驚いて、ドラゴンの鼻先を手で押し退けた。


　様子を見ていたフェルは、テーブルに肘を着き大きく溜息を付く。
「この子の親を、急いで捜さないといけなくなったわね」
　親と言う言葉に反応した様でドラゴンの子供は、フェルの方を見たかと思うと大声を上げて泣き出した。
「ソラ、お母さん所帰る！」
　龍鬼は、刻み煙草を煙管に詰め火を付ける。
「ほぉ、もう言葉も喋れるのか」
　天井に顔を向けて吸った煙を吐き出す。満足そうに笑う龍鬼の方を見て、フェルは又溜息を付く。
「もう！　観察してる場合じゃないでしょ」
　フェルは立ち上がりドラゴンの子供の側まで来ると、あやすように頭を優しく撫でる。
「もう泣き止みな、あんたソラって言うのかい」
　ドラゴンの子供は泣くのを止めると、潤んだ目でフェルの方を見て頷く。
「お母さんソラが中にいるとき、そう呼んでた」
　ソラは、又泣きそうな顔をする。
「そうソラって言うの、ちゃんとお母さんの所に返したげるから安心しな」
　フェルは安心させるようにソラの首を優しく抱きしめた。体を離しソラの顔を覗き込むと微笑む。
「お腹空いてるんだろ？」
　フェルは床に目を向け、ソラが捨てたパンを拾うと考え込んでしまう。
「パンはおいしくなかったみたいだね……さて、何が食べれるんだろ」
　フェルは、龍鬼の方を困った顔で見上げる。
「ふむ、ドラゴンの生態は詳しく知られておらん、ましてその子供となると儂にも考え付かんのぉ」