喜楽

紋目

文字の大きさ
27 / 29
喜楽 1 ゴーレムと魔力

13

しおりを挟む
 さっきまで昼寝でもしていたのか、大きな欠伸をしながら龍鬼が家から出て来た。地べたに腰を降ろすと、煙管を吸い始める。
「あら、龍人がこんな所にいるなんて」
「で、あんたらは何しに来たんじゃ」
 龍鬼は驚いている照果と困惑している様子のエステルを見ると、また大きな欠伸をした。
「私は照果、彼女はエステルと言います。そこにいるソラちゃんを迎えに来たんですが、お騒がせしちゃってすいません」
 照果は困った顔で、頭を下げる。 龍鬼はまだ泣いているソラの方を見て、又照果とエステルの顔を見ると溜息を吐く。 
「連れて帰るのは勝手じゃが、こんなに脅えさせてどうするんじゃ?」
 照果とエステルはお互いの顔を見合わせ困った顔をする。
「ごめんなさい……子供が見つかって興奮してしまって……」
 エステルは恥ずかしそうにそう言うと、ソラの方を見て悲しそうに笑った。
「ただいまぁっと。ソラの親見つかったのかぁ? 良かったなぁソラ」
 頭の上の方からまたまた、緊張感のない声が聞こえてくる。
 見上げるとのんびりした調子で、昂が郵便物が入っていたのだろう大きな鞄を抱えて降りてきた。 フェルは噴き出したかと思うと、大声で笑い始める。
「まぁ、そんないきり立たなくても良いじゃない、ソラはちゃんと返すつもりだったんだし……しかし、良くここに居るって解ったわね。こっちは捜すの大変だったのに」
 フェルは穏やかに微笑みと、ソラの頭を優しく撫でる。
「ここに石像を持ってきた商人から聞いたのよ」
 照果は不機嫌な顔をすると、経緯を話し始めた。
「卵を盗んだ魔道師を捜しだしたら、ドラゴンの魔力を使って実験がしたくて抵抗しない卵を盗んだって言うじゃない!! ちょっと、信じられないと思わない?」
 照果は思い出して、興奮してしまっている。
「実験が成功して必要無くなったって商人に売ったて言うのよ!  それでその商人の所に行ったわよ。 そしたらエステルが石像を捜していることを知って恐くなったからって、この家に持っていったって言うから……」
 そこまで捲くし立てるように話した照果は、我に返ると恥ずかしそうに小さな咳払いをした。
「えぇっとそれで、ここに来たんだけどぉ。人間の勝手には、いつも困るわ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

それは思い出せない思い出

あんど もあ
ファンタジー
俺には、食べた事の無いケーキの記憶がある。 丸くて白くて赤いのが載ってて、切ると三角になる、甘いケーキ。自分であのケーキを作れるようになろうとケーキ屋で働くことにした俺は、無意識に周りの人を幸せにしていく。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...