喜楽

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喜楽 1 ゴーレムと魔力

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 ソラも九の笑顔に釣られるように笑うと、エステルの側に行く。
 照果がエステルの背に乗ると、エステルはソラを包み込むように優しく抱き込む。
 ソラは顔を出し、九の方を見ると手を振る。
「必ず又ソラを連れてきます」
 エステルはフェルに向かって、又大きく頭を下げると、翼を広げ羽ばたき始めた。
 立っているのも大変な風の中、風牙に抱き上げられながら九は目に涙を一杯溜めて両手を大きく振っている。
 エステルが来た時のように、突風を巻き上げ飛び立ち、ソラ達の姿が見えなくなるまで九は手を振り続けた。
 フェルが風牙に降ろされ空を見上げたままの九の後ろに立ち頭を撫でると、九は大声を上げ泣き始め、フェルは何も言わずに優しく抱きしめた。
「あっ! ご飯忘れてました!! 昂、アサギ手伝った下さい!」
 風牙が慌てた様子で、家の中に入って行く。
「嘘だろ! 全く冗談じゃないぜ!」
 昂が面倒臭そうに頭を掻き、アサギと一緒に風牙の後に続く。
 龍鬼は又煙管を吹かせ始めると、フェルと九を見て穏やかに笑い、静かにその場を後にする。



 どれぐらいの時間が経ったのか、九は泣き止み鼻をすすりながらフェルから離れると、日の暮れ始めた空を見上げる。
「来てくれるかなぁ……」
 空を見上げたまま九は、独り言のようにぽつりと呟く。
 フェルは、九の頭を優しく撫でると微笑む。
「九がいい子にしてたら、直ぐ会えるよ」
 九は満面の笑みで、フェルの方を振り向く。
「ご飯冷めますよぉ」
 風牙アサギが窓から顔を出し、フェルと九の方をやきもきした様子で見ている。いつの間にか、家の方 からいい匂いがし始めていた。
「お腹空いちゃったわね」
「九もお腹空いたぁ」
 フェルがお腹をさする仕草をして笑うと、九は玄関に向かって走り始めた。 フェルは九が元気になったのを見て、安心すると溜息を付く。
「全く、心配させんじゃないわよ……」
 独り言を呟くと、玄関の所でフェルを呼ぶ九に向かって歩き始めた。

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