夢中で悪いか! ハムⅠレース

友浦乙歌@『雨の庭』続編執筆中

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プロローグ

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 君はハムワンレースを知っているかい?

 

 名前のとおり、ハムスターのレースの……あ、いや正しくは、人間とハムスターが協力してゴールを目指すレースだね。まあ、知らないならいいんだけどさ。



 うん? ハムⅠレースってなにかって?



 えっ、ハムⅠレースについてもっと知りたい?

 

 困ったなぁ。なんせ一度知ってしまうと、人によってはその日から同じ夢ばっかり見ることになるしなあ。

 えっ? どうしてそんなことが起きるか、だって? 



 それから、どんな夢を見るか? 



 待って待って、そう質問攻めにしないでくれよ。



 わかったわかった、話すってば。



 じゃあまず、ハムⅠレースがどこで行われているのかを聞いておくれ。



 ハムⅠレースはね、野球場みたいなところで開催かいさいされるわけじゃないんだ。



 ニュースで「本日のハムⅠレース結果は……」なんて結果報告されることもない。



 ほら、野球やサッカーがテレビで中継ちゅうけいされているの、見たことあるだろう。そう、それそれ。


 ちなみにハムⅠレースはハムスターのレースだからって、ペットショップで行われるわけでもないよ。



 そんな小規模しょうきぼではないんだ。



 ハムⅠレースは何千何万ものファンが集まって熱狂ねっきょうする、大きな競技きょうぎさ。 そりゃもう、大会となるとみんなお祭りさわぎ。



 ……ああ、君が言いたいことはわかる。



 そんなに有名ならなんで自分はハムⅠレースについて少しも知らないんだ、本当にそんなレースあるのか、って言いたいんだよね。わかるよ。



 じゃあ教えてあげる。ハムⅠレースが行われるのはね、

 



 ――人間とハムスターの見る夢の中なのさ。




 びっくりしたかい? ふふ、そりゃそうだよね。



 夢の中で開催されているレースだなんて。



 ハムⅠレースに行きたいときは、ハムⅠレースを意識して眠るんだ。



 ほら、ちょうど初夢はつゆめを見る時みたいにね。



 そうすると、ハムⅠレースの夢を見て、レースを観戦かんせんすることができるようになる。



 同じようにハムⅠレースのことを考えて眠りについた子たちと、いっしょに夢の中で、レースを観戦できるんだ。



 参加することもできるよ。




 ハムⅠレースはすごくおもしろい。



 ゴールまでには、いろんなわなやステージが用意されていて、レース出場選手はハムスターと協力して、全力でゴールを目指す。



 栄光えいこう賞品しょうひんを目指してね。



 観ていてとっても興奮こうふんするよ。



 僕は野球やサッカーよりずっと好きだ。



 君もきっと好きになるだろう。



 行きたいって思うかい?



 そうか! よかった。

 じゃあ僕、君がこの夢を見られたら、会場を案内してあげる。



 僕は、初めてレース観戦に行く人を連れていくのが好きでね。



 君が来るのを夢の中で待ってる。




 今日、君はふだんどおり、

 お父さんとお母さんに “おやすみ ”して、ベッドに入って、

 目を閉じるだけでいいよ。



 もちろんごはん・宿題・お風呂をすませて、

 明日の学校の用意もちゃんとして寝るんだよ、いいね? 



 そう、それと、なるべく早めに寝るようにね。

 睡眠すいみんはだいじさ。

 長い夢を見よう。



 あ、そうそう、

 人によっては、夢の中でハムⅠレースを観戦しにいくのは、けっこう難しいんだ。



 行けない人もいる。



 ハムⅠレースに行きたい! って強く願って、

 しかも、ハムⅠレースの存在を信じていないと、夢の中には行けないからね。



 ハムⅠレースに参加できる人は、限られているんだ。



 強く思うのがコツだよ。





 話しすぎてしまったね。



 そろそろ起きないと、遅刻してしまうんじゃないかい?



 ほら、聞こえるだろう?

 お母さんが、もう朝だよって君を呼んでいる。




 なーに大丈夫、僕とはハムⅠレースの夢の中できっとまた会えるさ。



 あ、それともうひとつ。



 これは、大切なことなんだけどね、今の君にわかるかな……? 



 でも言っておかなくては。



 ああ、言いたいことがまたたくさん出てきてしまった――



 いけないいけない、君はもう行かなくちゃ。

 うん、

 短くまとめよう。




 いいかい、よく聞いて。聞いたら行っていい。







 ――大人になっても、夢を忘れないで。

 そうすれば、ハムⅠレースの夢は、また見られる――

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