まさかのヒロイン!? 本当に私でいいんですか?

つつ

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Ⅵ 決断は遅きに失し

74. その覚悟に許しを

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 あまりにも視線を集めてしまったので、教室から廊下へと場所を変える。
 そしてメリッサさんは足を止めるなり、頭を下げた。

「ミュリエル様、本当にごめんなさい。私、ずっと謝らなくてはと思っていましたの」

 どうやらメリッサさんはずっと、私から距離を取ったことを気にされていたらしい。けれど聞けば、それは家からの指示だったのだという。
 であればどうしようもないことだ。家を何より重視する貴族社会では、家の方針に従うのは当然だ。

「許してくださいますか?」
「許すも何も……仕方なかったのでしょう? 気にしないでください」

 私はそう答えるしかなかった。
 一人になるのは寂しいし、蔑みや奇異の視線を向けられるのは辛い。けれど、事情があったと聞かされた上で、責めることができるほど、図太い神経は持ち合わせていなかった。
 もちろんまだ胸の中はもやもやしている。けれど、それはこれからの付き合いの中で時間をかけていけば、きっと解消できるだろう。

「本当に、気にしなくて大丈夫よ。それよりも皆さん、冬期休暇をどのように過ごしていたのか聞かせてくださらない? 私まだ、こういった話を誰ともしてないの」
「ミュリエル様……。ありがとうございます。わかりましたわ。では私からお話しますね」

 メリッサさんが話を始めると、一緒にいた子爵令嬢たちもポツリポツリと話に混ざり出した。歓迎はしていなくとも、拒絶するつもりはないようだとわかり、ひそかに安堵する。

「それで翌朝起きましたら、氷の張った湖に、まるでどなたかが通られたかのような道が出来上がっておりまして――」
「まあ!」
「一晩で、ですの?」
「ええ。ですから、きっとそれは神様がお通りにな――」

 そこで不意にメリッサさんが言葉を切る。
 私はメリッサさんの視線の先へと目を向けた。するとそこには、こちらに向かって歩いてくるレイラ様の姿があった。
 メリッサさんがさりげなく私の腕を引く。そしてそのまま、レイラ様がいるのとは反対の方向に歩きだし、廊下の角を曲がる。そのとき、廊下の向こうでレイラ様が足を止めてじっとこちらに視線を向けているのが見えた。

 そして完全にレイラ様の視界から外れると、メリッサさんがふうっと息を吐いた。

「メリッサさん?」
「その、ごめんなさい。余計なことかとは思ったのですが、もうミュリエル様に嫌な思いをしてほしくなくて」

 私は驚きつつも頷いた。確かにこの状況でレイラ様と顔を合わせて、メリッサさんをとったなどと難くせつけられるのは好ましくない。
 けれど、残念ながらすでに目撃されてしまっている。文句を言われる日はそう遠くないだろう。

「ありがとうございます、メリッサさん。そこまで気遣ってもらえるとは思っていませんでした」
「そんな……ただの罪滅ぼしですわ」


 そしてこの日から、レイラ様は何度も何度も私のほうへやってきて、メリッサさんは何度も何度もそれを阻んだ。

 メリッサさんは私が思っていたよりずっと、大きな覚悟を決めて私に声をかけてくれたのかもしれない。
 であるなら私も、またすぐに離れていってしまうのではないかなんて怯えずに、友人としてちゃんと向き合う覚悟をするべきだろう。


 メリッサさんになら話せるだろうか。
 私が、ミュリエルとしての過去の記憶を持っていない代わりに、前世の記憶を持っているということを。


 
 
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