まさかのヒロイン!? 本当に私でいいんですか?

つつ

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Ⅷ 優しさ、たくさん

109. ぼっちゃま登場

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 あっという間に二か月が過ぎた。神秘を教え始めてからももう半年近く。これまでに村人のおよそ三分の一が神秘を使えるようになっていた。けれど、たぶんこれで限界だ。残る三分の二の人たちはメイズヤーンを用意できない限り無理だろう。

 そしてこの間に、ご領主様の息子とやらにもらった神秘の器具もすべて直してしまった。神秘を教えるのももう終わりであるから、これからどうしようかと私は頭を悩ませていた。

「リアちゃん。今日はドードーさんが手伝ってほしいって。町に卸す燻製を作るってさ」
「わかった! ありがとう、行ってくる!」

 村の人たちも気づいているのだろう、何とか手に職をつけられるよう入れ替わり立ち代わりお手伝いを申し出てくれる。
 昨日は、村で一番私と歳の近い女性(三十代前半。子どもは出稼ぎに出ている)の元で針仕事を教わり、その前は乾物屋のおばちゃんに下ごしらえの仕方を教わった。
 針仕事を教えてくれた、お針のお姉さんは神秘を使えるので、神秘の器具で紙漉きを始めるから針仕事を継いでくれない? ――なんて言っていたけれど、私はまだ決められていなかった。



 ドードーさんちで一仕事終えて家を出ると、村の入り口に人だかりができていた。

「ありゃ? なんかあったんか?」

 小さな村では、事件と呼べるようなことは滅多に起こらない。
 せいぜいあっても、飲み過ぎた旦那がお隣の家で寝ていたとか、その程度だ。だから、この人だかりは異常だった。

「行ってみっか」

 私について家から出てきたドードーさんが、村の入り口に向かって歩き出す。私もすぐにそれを追った。そして二歩、三歩いくと、声が聞こえてきた。

「その……私は以前、神秘の器具を寄付した者なのだが」

 決して大きな声ではない。だが、その声は私の耳にまではっきりと届いた。私はドードーさんと顔を見合わせる。少し足を速めれば、人だかりの合間から、三十代後半くらいのダンディなおじ様が見えた。

「これっ、ぼっちゃま」

 おじ様の側に立っていたご老人が何やら注意するように声をあげた。

 ぼっちゃま……?

 私はつい、おじ様を二度見する。そこにいるのはやはりどう見ても三十代後半の――。

「いや、すまない。まだ名乗っていなかったな。私は」

 男性は何事もなかったかのように続ける。

「ギオスティン・フェーニ。伯爵位をいただいてる」
「これはご丁寧にどうも。フェーニ伯爵様でいらっしゃいましたか――って、はあ!? ご領主様!?」

 一拍遅れて、誰かの叫び声が上がった。
 そうだ。かつて寄付をしてくれたという領主の息子は今、この領の領主となっていた。

 
 
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