まさかのヒロイン!? 本当に私でいいんですか?

つつ

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Ⅺ 青い鳥はすぐそこに

161. 焦りは禁物

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 ――逃げ出してしまった。

 自分の行動に愕然としながら、家への道を歩く。

「リアちゃん? どうした?」

 声をかけられ、無意識のうちに俯けていた顔を上げる。

「……バッソさん。あ――そうだ。ごめんね、ぜんぜんこっち来なくて」

 慌てて笑みを浮かべて言えば、バッソさんの眉間のしわが深くなった。

「リーア。俺は、どうしたんだって聞いたんだけどな?」

 バッソさんが声を低くした。私は目を泳がせる。

「あのなぁ、リアちゃん。俺らの前で無理すんなよ。言えないなら言えないでいいから。落ち込んでるの丸わかりなのに空元気見せられると、そっちのほうが辛いぞ」
「ご、ごめんなさい」
「うち来るか? 話して楽になるなら聞くぞ。それとも話せないことか?」
「ありがとう。その、大したことじゃないの。ただ、自分の行動にがっかりしちゃっただけで」
「あいつに会ったのか」
「……うん。ちょっと驚いて、それで、ひどい態度取っちゃったから」
「あー……」

 バッソさんは黙って何やら考え込む。
 やっぱり初対面であれはまずかったか。このままというのもよくないかもしれない。

「あの、バッソさん。もしこれからウィルに会うなら、ごめんねって伝えておいてくれる? ウィルのせいじゃないからって」
「――なあ、リアちゃん。やっぱり追い返そうか」
「ええっ!? だ、ダメだよそんなの。やっと親子が再会できたんでしょ? 私のせいでそんな」
「親子?」
「お針のお姉さん。ウィルって出稼ぎに行ってた息子さんなんでしょ?」
「あー、そうか。そうだな」

 バッソさんが頭をガシガシとかき始める。うっかりしてしまったせいか、渋い顔をしていた。

「まあ、いいか。ちょっと用事あってお針んとこ行くっから、伝えといてやるよ。リアちゃんは気いつけて帰れよ」

 バッソさんがいつものように私の頭をポンポンと叩く。慰められてるなと思いながら、私はバッソさんと別れた。



 家に着くなり、ばたりと布団に倒れ込んだ。
 奥様からのお給料で買ったお布団は最高だ――なんて現実逃避をして。現実逃避をして、現実逃避をして……。

「――あれ? でもコレ、悩むほどのことじゃなくない?」

 はっと我に返った。
 確かに、視線を外したのは失礼だったかもしれない。逃げるように帰ってしまったのもあまりいいことではない。けれどそれだけだ。次に会ったときに、ごめんと一言謝ればそれで済む。
 ちらちらと、傷ついた様子のウィルが思い浮かんだけれど、気のせいだ。だってまともに顔も見ていなかったのだから。

「うわぁ……私、焦り過ぎ。バッソさんにも謝っとかなきゃ」

 非常に恥ずかしい。けれど、これに気づけたことで気分はすっきりした。
 きっと次にウィルに会ったときは、普通に接することができるだろう。

 
 
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