まさかのヒロイン!? 本当に私でいいんですか?

つつ

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Ⅹ 集まる想い

147. ドレスの出所って

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 私は今、奥様の着せ替え人形になっていた。

 今朝、奥様に呼び出されて部屋に伺うと、唐突に、

「さあ、脱いで」

と言われた。

 聞けば、侍女はドレスを着るものだから着替えましょう、ということだった。これまで渡されていたお仕着せは、ドレスの用意がなかったから着せていただけだったらしい。
 待ち構えていたメイドたち。私はあっという間に下着姿にされてしまった。

「これなんかどうかしら。ああ、でもこちらも捨てがたいわね……」

 次から次へと出てくるドレスはどれも見覚えのないものだった。ミュリエル様のものではない。そもそも私の方がはるかに小柄なので、着ようと思っても着れないのだけれど。では、どうしてこんなにドレスがあるのか。

「奥様、いかがでしょう」
「まあ! それもいいわね、ぴったりだわ。ああ、でも、どうしましょう。本格的にヴィンスのことが心配になってきたわ」

 何着目かのドレスを着させられて奥様の前に出れば、奥様が困惑し始める。
 ドレスを着ただけでどうして若様の名前があがるのか。気にしてはいけない予感がふつふつとわき上がる。

「ねえ、タイム。あの子、マリのことは裁判の時に一度見たきりのはずよね? どうしてこうもぴったりで似合うものばかりなのかしら。恐ろしい子」

 私は聞かなかったことにした。


 それからさらに何度か着替え、ようやく今日のドレスが決まった頃、部屋に執事が訪れた。

「あら、トーマス。なにか……ああ、急ぎの手紙かしら?」

 盆を持って入ってきた執事を見て、奥様が用件を当てる。

「左様にございます。お待ちかねのものかと」
「ようやく来たのね。確認するわ」

 さっと目を通す様はさすが侯爵夫人とでも言おうか。直前までとはがらりと雰囲気が変わる。
 そして顔を上げた奥様はまっすぐに私を見た。

「マリ。朗報よ。ディダでドビオン伯爵令嬢と一緒にいた人物が、一人わかったわ」
「……え?」
「従者が一緒にいたと言っていたでしょう? その人、神官だったようよ。地方の神官」

 意外だった。その青年がどこの誰だったとしても従者には違いないと思っていたから。けれど、朗報、なのだろうか。

「マリ、地方の神官よ? 地方の神殿を取りまとめているのは、誰かしら?」
「あ……」

 ようやく奥様の言わんとすることがわかった。

「メリッサさんのおじ様……?」
「そう。その子の叔父で、ドビオン伯爵の弟、ウィガーラよ」

 メリッサさんのおじ様なら、神官をメリッサさんに貸し与えるのも簡単だっただろう。そして従者ではなく神官が側にいた意味。単に適当な従者がいなかったから、では誰も納得しない。

「神官なら――全員、神秘が使える。入れ替わりの神秘を使うためにつれてきた……?」

 当時のメリッサさんは、まだ本格的な神秘を使っていないはずの年齢で、使えたとしても不慣れだっただろう。神官はメリッサさんをフォローし、共に神秘を行使するために連れてこられていたと考えるのが自然だった。

「推測の域は出ないけれど、その可能性が高いわね」

 やはり最初から神秘を使う気満々だったのだ。気づかされた事実に気持ちが沈んだ。

 
 
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