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Ⅹ 集まる想い
156. 裁判初日の夜 殿下の居室にて
しおりを挟む「ベイル、クリフォード。説明を。お前たち、知っていたな?」
裁判初日の夜。
クリフォードはベイルと共に呼び出され、厳しい表情のセーファス殿下の前に立っていた。
「ドビオン伯爵家に不審な動きがあったとわかったため、ベルネーゼ侯爵家に協力いただきました。結果、裁判を開くに至ったかと」
答えたのはベイルだ。もう少し言いようがあるだろうと不満がくすぶる。
案の定、セーファス殿下は眉を寄せた。
「王太子である私が間違っていたと?」
「ええ」「いえ」
ベイルとクリフォードの真逆の答えが重なる。
クリフォードは驚いてベイルを見た。ベイルは平然とセーファス殿下を見据えていた。
「あの子は悪霊ではありませんでした。巻き込まれた被害者でした。話も聞かずに刑を下した殿下は、間違いだったと言えるでしょう」
「ベイル!」
慌てて止めた。本来、こういったことは濁して伝えるものだ。はっきりと言ってしまっては不敬罪になってしまう。
「いい、クリフォード。構わないよ。それで? その例の子はもう死んでしまったのだろう? 何を求める?」
「え……?」
セーファス殿下の言葉に思わず戸惑いの声をあげた。けれどそれはクリフォードだけらしく、ベイルは構わず話を続ける。
「なぜ黙っていた、とは聞かないのですね」
「それこそ愚問だろう」
一拍遅れて思い出した。この件は、陛下がすべてを握り、殿下に情報を渡さないようにしていたのだということを。
だから今、この場で少女が生きていることを知っているのは、クリフォードだけだった。
「あの、セーファ――」
「では。あの子の名誉の回復を。それから本来、罪を負うべきであった人間に適切な処罰を」
「なるほど。そのために口を出すなというのだね」
「ええ。このようなことで償いになるとは思っていませんが。それに殿下に謝罪を求める訳にもまいりません。ならば、せめて誠意をと」
とても口を挟めない張りつめた空気が続いていた。けれど次の瞬間、それはふっと緩む。
「――そうか。わかった、誠意を見せよう。それから、土に還った彼女にも、心の中で謝罪を」
「是非に」
焦るクリフォードを後目に、二人の間できれいに話がまとまる。
このまま気づかなかったことにしてしまいたかった。黙っていてもいずれ誰かが明かすだろう。けれど、そのときクリフォードが知っていたと知られるのだけは、遠慮願いたい。セーファス殿下は、嘘と同じくらい秘匿も嫌うのだ。その怒りに触れたくはなかった。
「あの、セーファス殿下、ベイル。その、少々よろしいでしょうか」
「どうした?」
「ええと、その……彼女ですが、生きておられます」
「なに?」
「彼女、ベルネーゼ侯爵令嬢の中に入っていた少女はまだ、生きております」
「なんだと……!?」
クリフォードは、滅魂の刑が失敗に終わったあとのことを話す。
セーファス殿下は滅魂の代わりに死刑をと指示したけれど、それが陛下によって取り消されたこと。それから、今は他国で無事に暮らしていることを告げた。
「生きて、いるのか……」
ベイルの呆然とした顔が目に焼きついて離れなかった。
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