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第一話・失ったもの

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病院の中……死体安置所の場所で……無くなった妻を見ていた。綺麗な状態……

涙は出なかった。でも……溢れるのは悔しさと憎しみ……ただ、妻はそれを望まない

犯人は分からない……

失意だけが残る。娘は妻の手を握っていた。俺は目を伏せていて涙を堪え耐えていた

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声が響き揺すられる

「お父さん……もう、起きて」

娘に起こされた。娘はもう中学生。俺は起き上がり

「おはよう」

娘は微笑み

「うん。おはよう。用意して朝ごはん出来てるから」

俺は頷いて洗面所に。娘は妻に似て素直に育ってくれた

身支度しスーツを着てリビングに行くと朝ごはんが置かれていて手を合わせてから食べていく

美味しい……

「お父さん。今日は?」

俺はテレピを見て

「何時もの。お前の為だからな……」

子離れ出来ない……そう言われて仕方がないが娘は満更でもなさそう

「分かった。じゃ、私は行くからお父さんも早くね?」

俺は頷いて娘はそのまま家を出て学校へと。食べ終わり食器類を片してから仏壇の前に

妻に手を合わせてから鞄を持って家から出た

ガレージに置いてある車……昔の趣味で妻も許可を出してくれた……妻との大切な愛車……

『日産GT-R NISMO Special edition』に乗り込む。娘からの反応は普通だけど……昔は普通なのに今じゃ……クラシックカーになってしまった

その上、部品もほぼ無いから頼める場所もない……でも、それでも乗ると妻が隣に居る感じがして安心する

エンジンを掛けて出勤する

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仕事場……警察庁で犯罪組織を追う組織犯罪対策部に。妻の死をキッカケで、そして……

その中でも……

『並列並行人格(マルチタスク・パーナリティー)』と『心体強弱症候群(ハートレングス・シンドローム)』が多発する犯罪を対処する為の組織に

今日も普通の一日を過ごすと思っていた。だから……

「水心藤四郎。良いか?」

そう言われ上司に着いていく。やがて会議室に入ると

「楽にしてくれ」

言われた通りにすると

「水心影子(すいしんえいこ)についてだ」

目を見開いた。妻の名前が出てきたからだ

「お前にとっては辛いと思うが聞いてくれ」

俺は頷いた

「彼女はお前が追ってる組織の人間だった。それもかなり地位の高いくらいのな」

……

「ただ、彼女の出自は分からない。分かるのは……組織を抜けてまでお前の傍に居たことだな

お前にとっては辛いけど……彼女はお前を愛していた。それは本物だな」

……

「……妻は……」

上司は首を横に振り

「罪には問えない。ただ、彼女は生前にこれに関わって何かをしていた。多分お前の為だと思うがな」

そう言ってゲームソフトを置く。困惑してると

「彼女が所属していた組織が利用していたゲーム。何かしらの悪用はあったが今は分からない

ただ、その組織はまた活動を始めこのゲームを利用してる。お前にとってはまたとない機会じゃないか?」

俺は呆れて

「上司が進めていいのか?」

だけど上司は俺を真っ直ぐと見て

「これは俺の判断だ。お前に任せる」

そう言われた。俺はゲームソフトを手にして頭を下げ会議室から出た

ロッカーに仕舞い仕事を始めた

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夜になり家に帰る。鞄の中にはソフトが入っていてやるべきか悩む

幸いにも家には機械があるから始めれるが……

組織が居るゲームにやるかと言われれば気が進まない。何せ……妻がその組織の関係者で……普通なら考えるのが消された

だから……

「……影子……」

妻が何をしていたのか分からない。家に帰ると電気は暗く中に入りリビングに

娘は合宿で止まるみたいでご飯は冷蔵庫に必要分と今日のご飯が置かれていた

ご飯を温め食べる。普通の日常。だから……

「……」

妻の部屋に。当時のまま残されてる。何も無いし、あの日から今までずっと入ってない

妻は……

「……」

手紙が置かれていて手に取った。それは俺宛てで予期していたかのように置かれていた

ゆっくりと開けると

『これを見てるて事は私は死んでいて、私の過去を少しだけ知ったと思う

私は組織に入りただひたすら実験し兵器を作る為だけの人生でした

上の命令を受け作る。電子機器をハッキングし支配し世界を取る。そんな子供が考えるような思考を当時の私は言われるがままにしていました

あの頃の私は目的も無くただ命令を聞くだけの人間。本当に何も無い人間でした

でも……貴方と出会って変わりました。何も無い私に光を見せてくれました

警察官という立場であり、私は本来は貴方と会うことすら駄目な……犯罪者。だけど、貴方が私を救ってくれました

私の過去は今は言えませんが……私が残したモノ……『Another・under・World~alternative・region~』にあります

座標も書いておきます

最後ですが……私は貴方の敵でした。でも今は違います。娘も生まれて、貴方と結婚して幸せでした。貴方は私の希望で光です。そんな貴方は私が居なくても大丈夫です

私は心の底から楽しい人生を送れました。ありがとうございます

また会えるといいですね』

そう締めくくられていた。所々妻の言動が見えて少しだけ安堵した

だから……妻の残したモノを探す為に……上司から渡されたゲームソフトを見た。妻と同じゲームソフト。手に取って始める事にした
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