姉より可愛い弟なんて存在する筈がない

tohalumina

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make a break 真1

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 やっぱこれダンジョンだわ。

 路地裏を進んで一分、早くも楽斗は何故あのとき反対しなかったのかと自分を避難した。一見広そうに見えた道もたった二十秒、二十秒という短い時間で曲がりくねった細い道へと変貌していた。壁との間は五センチあるか、ないかだ。

 これは宗吾とか大毅とか付いてこれなかっただろうな。別行動でよかったな。

 切実に思う。俺も別行動がよかった、と。

 because。小柄な楽斗でそれだけしか壁との隙間が空いていないのだ。無論、女子達も隙間は大して変わらない。圭子に関しては、女子にしてはかなり背が高いせいか楽斗よりもかなり余裕がなさそうに見える。
 そんな狭い道に比較的大柄......いや、一般体型より少し大きい二人が入れるはずがない。きっと付いてきていたとしても、ここで別行動になっていただろう。

 ......俺も大きく生まれたかった。

 そしたらこんな道通らなくてもすんだのに。

 チラと横を向き、本日二回目、壁を見た。隙間ほとんどないので壁が目の前にあるという状況だ。
 そして、楽斗は同じく本日二回目、顔の温度が下がっていく音を聞いた。

 壁には、蝸牛、蜥蜴に百足、蟻、その他もろもろ......。
 なんて悲惨な光景だろうか。これまでにひどい光景は見たことがない。

 しかし、逃げ出すことは出来ない。

 実のところ、圭子に何を言われてもいいから逃げ出したいという気持ちの方が強い。
 だが、先頭、圭子。次、流音。そして楽斗、真愛、菫。と見事に真ん中に配置された楽斗はその狭い道の所為も合って逃げ出すことが出来ないでいた。
 いや、後ろが真愛だけだったら逃げ出すことは出来た筈だ。現に真愛も楽斗と同じく小さい肩を更に小さくして時折悲鳴を上げながらおろおろと道を進んでいる。

 真愛からは俺と同種の臭いがしたのだ。

 そのため、真愛に「逃げよう」と言った時の成功確率は90%以上もあった。

 だが、問題なのは最後尾の菫だ。
 路地裏に入る前に発言した台詞からしてみても、
「おお!蝙蝠初めて生で見たよー!」
 ......今の発言からしてみても、この悲惨な状況を楽しんでいるとしか思えない。

 とかいって楽斗より前の二人は

「へー、圭子よくこんな道知ってるわね」
「まぁ、この街の地理には色々自信があってな」
「えーと。じゃあ、一応聞くけどこの辺りでスイーツショップってあるの?私はいつも駅前の所で買ってるんだけど」
「あぁ。それなら宗吾の家の近くに大きなスイーツショップが一つあるが......」
「うそ!ほんと!?」

 などと周りに人がいないためか大通りを歩いていた時より盛り上がっている。

 何やってんだコイツら

 と、初めはそんな彼女らを冷たい視線で見つめていた楽斗だが、ふと大毅や宗吾だったらこの状況をどうするのか考えてみた。
 ......うん。別にいつもと変わらない二人しか思い浮かばない。逆に、この程度で怯えるなんて病気か?と思うレベルだ。

 流石は馬鹿二人だ。レベルが違う。

 
 そーいえば、あの二人は今どこで何をしているのだろうか。
 楽斗は学校を出たきり会ってない二人の事を考えつつ、携帯を手に持っ......  ヌチャ。

 大きく動かした左手に嫌な感触がした。
 ......ヌチャ? 
 ここで止めておけば良かった。もう何が起こった把握出来たはずなのだから。のにも関わらず思わず何が起こったか確認してしまった楽斗は、その手が触ったヌメリとした、云わば家の無い蝸牛。を見て、視界が暗転するのを見た。
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