姉より可愛い弟なんて存在する筈がない

tohalumina

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make a break 7

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「......で、宗吾。オレ達があいつらと別行動してる理由は何なんだ?一体どこに向かってるんだ?そろそろ教えてくれないか?」

 ちょうどその頃。楽斗達とは別行動を取っていた大毅は、理由も教えずただ付いてこいとだけ言った宗吾に問いかけた。
 その声は若干低く明らかに不満が溢れている。

 まぁ、当たり前か。もう歩いて三十分以上になるのだ。逆にこれまでの時間決して短かったわけでないのに聞かなかった方がおかしい。
 だが、ここで簡単に説明してはつまらない。ていうか、つまるつまらないの問題ではない。行き先言ったら絶対に大毅は来ないと逃げるだろう。それだけは避けなければ。
 おう。認めてやろう。俺だって一人で行きたくないのだ。大毅がいるからこそ行く気になったのであって一人では決して行きたくなんてないのだ!
 仕方がない。時間潰しに少し茶化してやるか。

「何だ?あいつらと共に行動したかったのか?えっ?えっ?大毅くぅん?」

 まるで小学校低学年がやるような挑発だ。
 自分でやっていながら何て低レベルなんだろう。......だ、だが大毅ならこのレベルの挑発にも乗ってくれるはず。きっと小学校低学年の男児みたいに「そ、そんなわけないだろ///」と顔を染めながら言ってくれるはずだ。で、俺が「はいはい。ツンデレツンデレ~」と言う。それが友情と言うものだろう。......我ながら完璧だ。完璧の作戦だ。うむ。作戦名は「チョウハツンデレ」と名付けよう。

「それは当たり前だろ。何が楽しくて男と二人きりで居なきゃならんのか」
「おい友情はどこいったぁ!!!?」
「は?友情?何言ってんだお前......いやまて何故に涙目なんだよ!?やめとけやめとけ。そういうのは可愛い子がやるから萌えるんだ。お前がやっても吐き気しかしないからやめておけ」
「はぁ!?」

 最後は逆ギレ。何とも情けない結末だ。
 まぁ、何がともあれ作戦失敗はしたものの時間潰しは成功したようだ。

 宗吾は自分達が向かっている方角から真っ直ぐこちらに向かってくる黒い車を見て「よし」と小声を溢した。

 しかし、誰にも聞こえないぐらいに小さな声で言ったつもりなのだが、横にいた大毅には聞こえたらしく「?」と首をかしげていた。
 
 おい。特大ブーメランだこのやろう。首をかしげるのは可愛い子の特権だろうが!

 と、怒鳴りを入れて言ってやろうかと思ったがやめておく。怒鳴りを入れたことで勘づかれて逃げられては元も子もない。だから代わりに笑顔でニコリと笑ってやる。

  すると大毅は怪訝そうな顔をして、何かに勘づいたように周りをキョロキョロと見渡した。

 ......俺の笑顔ってそんなに怪しいのかよ。

 テレッテレッテー。
 宗吾はメンタルが20下がった♪

 愉快な音楽と共に謎の文字が浮かぶ。
 うん。只の幻聴と幻覚だ。どっかの異世界に行ったと思った君!残念でしたぁぁ~!
 いやまてまて妄想の中の君!決して俺は薬剤とか使ってないから警察は止めいいいい!!

 あっ、大毅の視線が黒い車を捉えた。

 バッ!気づいたのかやはり逃げ出そうとする大毅を宗吾は即座に羽交い締めにする。
 いやー、準備って大事だよな。備えあればうんぬんかんぬん......とかよく言ったものだな。

「くそッ!放せぇ!!」
「はいはーい。分かってるよ」

 羽交い締めによって完全に無力化されたのにも関わらずまだ必死に逃げようとする大毅に懇願に宗吾は快諾し、パッと放した。

 まさか本当に解放されるとは思ってなかったのだろう。あっさりと拘束を外されたことに戸惑いを隠しきれていない大毅に宗吾はニコリ再び笑みを浮かべてその口にハンカチを被せた。

「何をする......んだ............」

 そう言い残し大毅の意識は闇の底に落ちていった。

「よいしょっと」

 宗吾はそんな大毅を担ぎ上げすぐ近くに止まった黒い車に向かう。
 そして黒い車の前に着いた宗吾は、出迎えで車から出てきた運転手ともう一人の男に大毅を「前の席に」と託し後ろの席にドスンと腰を掛け早く車を動かすように指示する。

 いくら大毅でも動いている車から逃げることは出来ないだろうし、二人知らない人がいるところでは信号で止まったからと逃げ出すことはないだろう。
 まぁ、予定では大毅は目的地に付くまで目を覚まさないのだが。何て言うか念には念をと言うやつだな。

 ん?大毅に何をしたって?クロロホルム?ハッ。馬鹿かクロロホルムなんて使っても一瞬で卒倒なんて無理だろうが。じゃあ何って?それは......逮捕されるんで絶対に秘密だ!




「おい。本当にこの道で合っているのか?」

 商店街の路地裏。昼間でも一定の暗さを誇る「商店街の闇」と言っても過言では無い所で、更に暗く続く細道を見て、楽斗は自信満々にここまで案内した圭子に尋ねた。

 正直こんな得体の知れない道は通りたくない。これは細道と言うよりもダンジョンと言った方が近いイメージな気がする。ほら魔物の代わりに蜘蛛とかいそうだし。ダンジョン名は「商店害の悪道」だな。
 ......何かものすごいバッシングされそうなネーミングになってしまった。まぁいいか。誰かに言うわけでもないし。考えるのは人の自由だよな。
 しっかし、本当に暗いなこの道。モンスターは流石にいないだろうけど怪しい薬屋とかチンピラならいるんじゃないか。

 うん......行くべき道を間違ってたとかないかな?

 淡い期待を込めて圭子を見る。
 だが、残念なことに圭子は横ではなく縦に首を振った。肯定の印だ。

 うわ。マジでこの道かよ。最悪すぎる......と、そこで流音と目があった。

 どうやら流音も同じようなことを考えていたようで行きたくないと言う文字が分かりやすくはっきりと顔に出ている。

 そんなに行きたくないなら圭子に物申せばいいのに。てか物申してくれよ。頼むから。

 菫が言うにはシスコンの証である、姉弟の秘技「顔会話」を使ってそう訴えてみたがまたしても顔を横に振るだけだった。
 「何か圭子怖いから絶対無理」と。
 
 流石双子と言うべきか、俺と全く同じことを考えているなんて......いや別に双子は関係ないな。真愛も魂抜けながらだけど「けーちゃんもこの道も怖い」って時々呻いてるし。菫も......はぁ?なんであいつ準備体操なんかしてやがるんだ!?乗り気にも程があるだろ!
 思わず毒づくと、楽斗の視線に気づいた菫が「なはは」と笑いながら近づいてきて

「いやー楽しみだね~。何かダンジョンみたいで!」

 いや、ダンジョンみたいだから嫌なんですけど!?
 しかし、この花が咲くような笑みの前にはそんな事は言えないチキンハートな楽斗は色々言いたいことを全て飲み込んで苦笑いで頷いた。 
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