姉より可愛い弟なんて存在する筈がない

tohalumina

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make a break 真5

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「なあ、宗吾。行きの記憶が何故か曖昧なんだが......確かここまで車で来たよな。てことは帰りも車か?」
「勿論、帰りも車だ......と、その前に」

 と、話に区切りをつけた宗吾ポケットから黒い機械を取り出し、巧みに操作をし始める。

「何だそれは......携帯か?」
「逆にそれ以外に何に見えるか聞いてみてもいいか?」
「いや、普通は無いんだろうが......」
「俺は普通だから何もないだろ?」

 少なくとも普通の人はボイスレコーダーを常用しないだろ!
 大毅は喉まで出かかったその台詞をなんとか呑み込み、別の言葉を発する。

「いや、お前だと......携帯型手榴弾とか持ってそうだから若干怖い」
「携帯型手榴弾とは良いアイディアだな。それだったら面白かったんだろうが、残念なことにこれはただの携帯だ」
「当たり前だ!冗談で言ったんだからな。本当に持ってたらお前は不審者から怪者にランクアップだッ!......圭子にメールか?」
「あぁ。目的達成してるか一応の確認だ。まぁ、向こうには流音や真愛もいるから心配はいらないと思うけどな。っと、返信早いな。えっとなになに......」
「オレにも見せろ!って、んん!?」

 メールには文と写真が貼り付けられており、書かれていたのは一文で写真には何故かメイド服を来て流音と菫におんぶされている楽斗と真愛の姿が写っていた。

『私は今、人生で一番最高の気分だ』

「「何があったぁぁ!!?」」 

 二人は絶叫した。




 時は遡り、楽斗と真愛が倒れた数分後。

 二人の様子から簡単には目を覚まさないと確信した圭子、流音、菫の三人は二人のおんぶをする人を決めるためジャンケンをした。

 結果的に言うとジャンケンで負けた流音が楽斗を、菫が真愛を背負うことになった。
 背負う側としては、流音は身内を菫は昨日もおんぶしたとだけあって大して問題はなかったのだが。

「くっ、あの時チョキを出しておけば......」
「圭子、一応言っとくけどこれ罰ゲームだからね」
「しかし、プリティーガールや真愛をおんぶする一世一代のチャンスが......」
「何でそんなに悔しそうなんですか、姉御」

 拳をギュッと握りしめて何かを堪える圭子に菫が半眼を向ける。

「嗚呼......一等が当選した宝くじを落としてしまった気分だ......」
「「そんなに!?」」
「いや、流石に冗談だ」
「ですよね~」
「全く圭子ったら紛らわしいわね」
「正確には地球を爆発するボタンを間違えて押してしまった時の気分だ」
「「まさかのグレードアップ!?」」

 想像を超えたグレードアップに全力で突っ込んでしまう二人だが、周りの人々の目線が自分達の方に向いたのに気づき顔を真っ赤にして俯く。
 その純粋とも言える反応に圭子は日本の萌え文化は死んでいなかったと一種の感動を覚えながらも歩いていた足を止め二人に話しかける。

「二人とも目的地に着いたぞ」

 瞬間、俯いていた二人がガバッと顔を上げた。

「ほ、ホントだ......何か感動」
「距離的には大して遠くないはずなのにかなり時間がかかったわね」
「途中のアクシデントもあったからね。久々にちと疲れたよ私は」
「うむ。そうだな。まぁ、なんだ。いつまでもここにいては店に迷惑がかかりそうだしとりあえず中に入ろうか」

 圭子がそう切り出すと二人も異論は特にないみたいでそのまま店内へと足を踏み入れた。



「しっかし、広いですな~。私、驚愕ですな」
「菫、あんたまたキャラが変わってるわよ。いい加減統一したら?」
「ふふふ。私は遂に気づいたのだよ流音君。度々キャラを変えていくスタイルも強力な個性なのだということに」
「へー。でもそういうキャラって大抵忘れ去られてモブにジョブチェンジせざるが得ないのが世の中の理よね」
「卒業までには統一します」
「はっはっは。別に私的には菫は可愛いからキャラを無理に統一しなくてもモブに成り下がらないと思うが」
「姉御、そういう気遣いは無用でござるよ......何かこれも違うなぁ」
「まー、色々頑張りなさい」
「ところで流音に菫。そろそろ疲れていないか?肩は痛くないか?私が代わってやろうか?」
「「多分帰るまではもつから大丈夫(よ)」」
「うぅ......」

 完全に希望が失われた圭子はがくりと項垂れた。
 と、そこで陳列されている生地を見ていた流音が一つの生地のサンプルに手を伸ばして目を大きくした。

「ねぇ、菫!圭子!これなんてどうかしら」
「うん?ちょっと待ってね流音。なに?これは冗談だよね?」

 興奮した声を上げる流音の手には生地のサンプルがあり、触ってみると確かに生地質は現状の制服と酷似していた。
 だが、その生地を制服に使うことは絶対に嫌だ。流石にダサすぎる。
 
 その生地は無地ではなく、女子小学生が好きそうな単純なイラストで描かれた熊が沢山載っていた。

 もしこの生地で制服を作ったら......考えるだけでも恐ろしい。
 黒歴史に載ることだけは間違いなしだ。
 そして、女である私がこれなのに、全員分の制服を作ると言っている以上、これを着なければいけない男達がなにより惨めすぎた。
 言ったら悪いが、ただの拷問だ。恥を晒すだけだろう。完全にいじめだ。

 とにかくこれだけは絶対に嫌だ、と菫がそう主旨を伝えると流音は渋々ながらもそれに応じてくれた。
 ......手に持っていたサンプルを戻す際に言っていた「絶対に可愛いのに」はどこまで本気なのだろうか。

「助かった」

 菫が少し考えていると、圭子がそっと耳打ちをした。
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