姉より可愛い弟なんて存在する筈がない

tohalumina

文字の大きさ
33 / 63

make a break 5

しおりを挟む
 てなわけで、作戦名【make a break】を実行することになった楽斗らであったが

「おい」
「るーねぇ、姉御、マナフィー。買い物終わったあとどうする?」
「どうしようか。遊んでく?」

「おい!」
「なら、私は皆で証明写真が撮りたい」
「せめてプリクラにしときなさい」

「無視すんじゃねぇッ!!」

 遂に怒りが爆発した。

「ん?何よ?」
「いや、何よ?じゃねぇよ!それは俺の台詞だっつーの!何だよこの俺の格好は!」

 そう言って楽斗は自分の着ている、セーラー服を指差して激昂する。

「いや似合ってると思うよ?」

 しかし、流音は全く動じず、むしろ何故怒っているのか不明と言う顔でとんでもない方向に秘技、超絶ノーコンボールを放った。
 もはや、会話がキャッチボールではなくただの玉拾いと化している。会話を繋げるのも一苦労だ。
 だが、それでも何とかボールに食らいついた楽斗は

「似合ってるかどうかはこの際どーでもいい!問題なのは俺がセーラー服を着て、尚且つ商店街を歩いているという現状だよッ!!!!」
「仕方ないでしょ。学校にはセーラー服しか無かったんだから」
「そこじゃねぇ!!!何で俺が女装してるのかって聞いてんだ!」

 ガーッと漫画とかならそう効果音が出そうな勢いで捲し立てる楽斗に、横から菫が

「それこそ仕方ないと思うよ~」

 と言って、ポケットから丸めてあった先程のチラシを取り出しバンと広げ、見せびらかすようにした後続けた。

「ほら、ここ!ここ!書いてあるじゃん!女団体様だと生地大特価セールなんだよ!めっちゃ安~い!」
「いや、元々業務用なんだから安いだろ」
「それでも大分変わるもんだよ!特に金欠の私とかはウハウハだね!」

 すげぇ!目の前でいきなり曲がったぞ!魔球カーブってやつだな!!......ふざけんな!

「......どうしてお前達はまともにキャッチボールしてくれないんだ。何で目の前でカーブさせるんだよ......」
「え?ごめん。何言ってるかよく分からないや」
「なんだとッ!?......いや、いいさ独り言だ。......にしても今日は何か随分人多くないか?」

 これ以上会話を続けても、検討違いの方向ばかりに飛ばしてくる超絶ノーコンの流音と魔球を飛ばしてくる菫が相手では話が全く進まないだろうと考えた楽斗は一瞬助けを求めるように圭子と真愛の方をチラリと見たが、二人が何やら話で熱中してることを知って諦めたようにため息を吐き話を変えた。
 すると、無事ボールが渡ったようで流音と菫は周りを見渡した後、ホントだ、と苦笑を浮かべた。

「......確かに今日は多いわね。何かあるのかしら」
「そーいえば今日は業務用生地店だけじゃなくて他のところも割引だった気がする~」

 流音の声に答えるように発した菫の言葉に思わず楽斗は震え、
「さ、最悪だ。人が多い=この俺の恥晒しが皆にバレる=死じゃないか!」
「いやそれ言い過ぎ」
「言い過ぎなわけあるか!......やべぇ。意識したらマジで人の視線がこっちに向いてきている気がしてきた。くそ......暗示っていうやつか!」
「むむむ!がっくん大変だ!私もそんな感じがしてきたよ!暗示が移ったのかな!?」
「だよな!だよな!見られてる気がするよな!良かったー!俺だけじゃないのか!」

(いや、マジで目線こっちに向いてるからっ!注目集めてるから!)

 気さくに笑い合う二人を横目に流音は心でそう突っ込んだ。


「......にしてもこの近くに業務用生地店なんて合ったんだな。長年住んでるけど気がつかなかったよ。どんなところなんだ?」

 大通りの真ん中━━━もちろん歩道の━━━で、暗示のことで菫と気さくに笑いあってた楽斗はふと笑いを止め感心したように圭子に問いかけた。

「うむ。実は私も最近知ったばかりでな。まだ行ったことは無いのだが中々良さそうな場所だと思うぞ」
「無いんかい」
「はっはっは。そう露骨に顔を歪ませるな流音。安心しろ、何があってもプリティーガールは私が守るからな」
「何かある可能性があるんかい!」

 やべぇ。急に不安になってきた。さっきまで大丈夫だったのに。これはあれだなあれ。知ったことで感じる恐怖ってやつか。......そのままだな。

 思わず思考を駆り巡らせる楽斗に、圭子はプッと吹き出し
「あのなぁ。普通に考えて新聞の広告でセールが公表されてるところがそんな治安悪いわけないだろう?」
「どーせ俺はフツーじゃないんだよ」

 何か普通に考えてって悪意あるよな。まるで人が普通じゃないみたいに......みたいな感じで楽斗は唇を尖らせる。
 が、圭子は続けて

「まぁ、プリティーガールはある意味普通じゃないな。女装もなにもしてなくて女子と間違われる男子なんて世界で見ても楽斗ぐらいじゃないか?才能を感じるな」
「いらねーよ!そんな才能!やるよ!無償でくれてやる!いや、むしろもらってください!」
「うむ。よかろう、ではプリティーガール、お前を私の嫁にもらってあげよう」
「......いやまてなんでそうなった」

 業務用生地店まであと一キロ。
 女装がバレてしまうことなどまるであり得るはずがないと余裕綽々に進む女団体一行。
 彼女(?)らはまだ知らない。
 この後最大のピンチが楽斗に襲いかかることを......。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...