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make a break 4
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「......おいおい」
ボイスレコーダーの再生が終わると一番に大毅が呆れた顔でそう声を漏らした。
それに釣られて友人らの間から声が飛び交うが、混乱してる楽斗の頭には届かない。
「なぁ、宗吾。これはいつの話なんだ?」
楽斗が問うと、椅子に背を傾け足を組んでいた宗吾は閉じていた目を片方開け、
「昨日だな」
「くそッ!?上に漏れたって嘘だったのかよ......あいつら、舐めやがって!」
楽斗は思わずガンと拳を机にぶつけた。
すると、それまで黙って目を閉じていた圭子がスッと立ち上がって
「血祭りにしてく━━━」
「落ち着けぇえ!!」
「くっ、離せ流音!私には成さなければならないことがあるのだ!」
「マジで傷害事件は揉み消し効かないから止めて!」
暴れる圭子を羽交い締めする流音。
……関係ない話なんだが、『事件』と『揉み消し』って単語が出ると危ない話に聞こえる気がする。
だが、二人がかりでも止められない圭子をか弱い......とは言えないが女である流音が止められる筈もなく、必死の抵抗虚しく徐々に羽交い締めは解けようとしていた時だった。
「まぁ、落ち着けお前ら。話を聞いてくれ」
「「「落ち着けるか!」」」
「お、おす......」
先刻と同じように静めようとした宗吾の肩があまりの圧力で縮まる。が、それでも宗吾は、気を取り直すためかパチンと指を鳴らしてからバンと机を両の掌で叩いて
「逆に言えばこれはチャンスだろ」
悪ガキっぽくニヤリと笑った。
「チャンス?」
何がチャンスなのだろうか。頭を捻る楽斗に
「あぁ、チャンスだ。だってそうだろ?これは明らかに教員側の工作だ。つまりそこを突けば楽斗《おまえ》のセーラー服登校は防げるってことだ」
「「「おお!」」」
「いや無理でしょ」
話を聞いて感嘆の声を上げる五人に、流音が冷静に突っ込む。
「無理?何でだ?」
「この話が楽斗本人だけに聞かされていた話なら可能性は合ったかもしれないけど......。全校生徒全員が証言となる集会で話された話だから覆すのは難しいと思うわ」
シーン。さっきの感嘆はどこへか。完全に静まる教室に、大毅は何か思い付いたように指を上げ
「確か、集会で言ったのは『楽斗の制服を変えなければならない』って話だったよな」
「......それがどうしたの?」
「確認だよ。......なら、新しい制服をオレ達で作れば良いんじゃないか?」
「「「それだ!」」」
一同口を揃えてそう言った。
「......でも、作るのは良いが材料費とかはどうするんだ?」
物を作るということは当然コストもかかる。ましてや制服なんてどのぐらいかかるのか......。そう考えた楽斗は即座に賛成したことを反省しつつ、おもむろにそう質問した。
すると何も考えてなかったのか宗吾が困ったように頭を掻き
「あー、じゃあ俺が全額負担するか。一流の仕立て屋に頼んでみるさ」
「「おっ、マジで━━━」」
「「「それはダメッ!」」」
全額おごりと聞いて思わず賛同する男子陣の言葉を上書きするような女子陣(圭子除く三人)の言葉に男子陣(楽斗と大毅)はおろか、宗吾も目を丸くする。
何が何だか分からない、と一目で分かる表情をする男子達に流音は、はぁ、と息を吐いて
「金の貸し借りは友人を無くすわよ。長い付き合いなんだから止めておきなさい」
「「そうだそうだ」」
絶対流音以外はノリで反対しただろ。
思わずそう思ったが、先生らの間では実質一番最悪な問題児と称されている宗吾も幼馴染の女子三人に言い寄られては食い下がる他為す術が無いようで
「そ、そういうものなのか。......なら材料費はどうするんだ?」
「そりゃ......皆で出すわよ。ね?」
「「うん。もちろん。━━━ってえええ!?私今月残り四千円しかないんだけどぉおお!!?」
「......あの、菫ちゃん。二人で話してるときに驚くのやめてくれるかな?私まで驚いてるみたいに見えるよ」
「ごめんごめんマナフィー。次から気をつけるよ」
「てか、普通に四千円って多いからな。そもそもそんなに使わないだろ」
「まぁそうね。一着ぐらいなら一人千円ぐらいで足りるわよ」
と、流音は宗吾を確認するようにチラリと一瞥する。が、しかし、宗吾は頷かず苦笑いを溢していた。
「?」
「いや、ほら。楽斗一人だけだと何か可哀想だなって思ってさ。どうせなら皆で同じ制服を着ないか?」
「いいねそれ!よーし決ま━━━」
「それだと単純計算で一人七千円以上かかるわよ?......何か言った菫?」
「......何でもございません」
七千円という大金に思わず肩身を狭くして押し黙る菫。
また、宗吾の方も先程の反応から分かるように費用のことは考えてなかったようでうーんと唸りを上げている。
と、そこで圭子が固く閉ざしていた口を開き
「喜べ皆。費用は何とかなるようだぞ」
どこから持ち出したのか一枚のチラシを披露しながらニヤリと悪女っぽく笑った。
「ほう。これはこれは~」「圭子にしてはナイスだな!」「おい楽斗、逃げようとするな。言っとくがこれはお前のためだからな」「やめろ離せぇぇえええ!」「あらら」「まぁ、これくらいは協力しなさいよ」
それを見た菫が満足気に頷き、宗吾が指を鳴らして同意し、チラシを見た途端逃げ出そうとした楽斗を大毅が羽交い締めし、真愛が苦笑いを溢し、流音が呆れたように宣告するといった通り反応は十人十色━━━ではなく六人六色だが気にせず宗吾が大きく息を吸って宣言をする。
「さぁ、始めようか!制服を『作って』教員らの馬鹿げた思想を『破壊する』。作戦名【make a break】を実行するぞ!」
「「「え。ださ......」」」
「はぁ!?ださくねぇよ!?」
こうして二年生になって二度目の作戦が始まりを告げた。
ボイスレコーダーの再生が終わると一番に大毅が呆れた顔でそう声を漏らした。
それに釣られて友人らの間から声が飛び交うが、混乱してる楽斗の頭には届かない。
「なぁ、宗吾。これはいつの話なんだ?」
楽斗が問うと、椅子に背を傾け足を組んでいた宗吾は閉じていた目を片方開け、
「昨日だな」
「くそッ!?上に漏れたって嘘だったのかよ......あいつら、舐めやがって!」
楽斗は思わずガンと拳を机にぶつけた。
すると、それまで黙って目を閉じていた圭子がスッと立ち上がって
「血祭りにしてく━━━」
「落ち着けぇえ!!」
「くっ、離せ流音!私には成さなければならないことがあるのだ!」
「マジで傷害事件は揉み消し効かないから止めて!」
暴れる圭子を羽交い締めする流音。
……関係ない話なんだが、『事件』と『揉み消し』って単語が出ると危ない話に聞こえる気がする。
だが、二人がかりでも止められない圭子をか弱い......とは言えないが女である流音が止められる筈もなく、必死の抵抗虚しく徐々に羽交い締めは解けようとしていた時だった。
「まぁ、落ち着けお前ら。話を聞いてくれ」
「「「落ち着けるか!」」」
「お、おす......」
先刻と同じように静めようとした宗吾の肩があまりの圧力で縮まる。が、それでも宗吾は、気を取り直すためかパチンと指を鳴らしてからバンと机を両の掌で叩いて
「逆に言えばこれはチャンスだろ」
悪ガキっぽくニヤリと笑った。
「チャンス?」
何がチャンスなのだろうか。頭を捻る楽斗に
「あぁ、チャンスだ。だってそうだろ?これは明らかに教員側の工作だ。つまりそこを突けば楽斗《おまえ》のセーラー服登校は防げるってことだ」
「「「おお!」」」
「いや無理でしょ」
話を聞いて感嘆の声を上げる五人に、流音が冷静に突っ込む。
「無理?何でだ?」
「この話が楽斗本人だけに聞かされていた話なら可能性は合ったかもしれないけど......。全校生徒全員が証言となる集会で話された話だから覆すのは難しいと思うわ」
シーン。さっきの感嘆はどこへか。完全に静まる教室に、大毅は何か思い付いたように指を上げ
「確か、集会で言ったのは『楽斗の制服を変えなければならない』って話だったよな」
「......それがどうしたの?」
「確認だよ。......なら、新しい制服をオレ達で作れば良いんじゃないか?」
「「「それだ!」」」
一同口を揃えてそう言った。
「......でも、作るのは良いが材料費とかはどうするんだ?」
物を作るということは当然コストもかかる。ましてや制服なんてどのぐらいかかるのか......。そう考えた楽斗は即座に賛成したことを反省しつつ、おもむろにそう質問した。
すると何も考えてなかったのか宗吾が困ったように頭を掻き
「あー、じゃあ俺が全額負担するか。一流の仕立て屋に頼んでみるさ」
「「おっ、マジで━━━」」
「「「それはダメッ!」」」
全額おごりと聞いて思わず賛同する男子陣の言葉を上書きするような女子陣(圭子除く三人)の言葉に男子陣(楽斗と大毅)はおろか、宗吾も目を丸くする。
何が何だか分からない、と一目で分かる表情をする男子達に流音は、はぁ、と息を吐いて
「金の貸し借りは友人を無くすわよ。長い付き合いなんだから止めておきなさい」
「「そうだそうだ」」
絶対流音以外はノリで反対しただろ。
思わずそう思ったが、先生らの間では実質一番最悪な問題児と称されている宗吾も幼馴染の女子三人に言い寄られては食い下がる他為す術が無いようで
「そ、そういうものなのか。......なら材料費はどうするんだ?」
「そりゃ......皆で出すわよ。ね?」
「「うん。もちろん。━━━ってえええ!?私今月残り四千円しかないんだけどぉおお!!?」
「......あの、菫ちゃん。二人で話してるときに驚くのやめてくれるかな?私まで驚いてるみたいに見えるよ」
「ごめんごめんマナフィー。次から気をつけるよ」
「てか、普通に四千円って多いからな。そもそもそんなに使わないだろ」
「まぁそうね。一着ぐらいなら一人千円ぐらいで足りるわよ」
と、流音は宗吾を確認するようにチラリと一瞥する。が、しかし、宗吾は頷かず苦笑いを溢していた。
「?」
「いや、ほら。楽斗一人だけだと何か可哀想だなって思ってさ。どうせなら皆で同じ制服を着ないか?」
「いいねそれ!よーし決ま━━━」
「それだと単純計算で一人七千円以上かかるわよ?......何か言った菫?」
「......何でもございません」
七千円という大金に思わず肩身を狭くして押し黙る菫。
また、宗吾の方も先程の反応から分かるように費用のことは考えてなかったようでうーんと唸りを上げている。
と、そこで圭子が固く閉ざしていた口を開き
「喜べ皆。費用は何とかなるようだぞ」
どこから持ち出したのか一枚のチラシを披露しながらニヤリと悪女っぽく笑った。
「ほう。これはこれは~」「圭子にしてはナイスだな!」「おい楽斗、逃げようとするな。言っとくがこれはお前のためだからな」「やめろ離せぇぇえええ!」「あらら」「まぁ、これくらいは協力しなさいよ」
それを見た菫が満足気に頷き、宗吾が指を鳴らして同意し、チラシを見た途端逃げ出そうとした楽斗を大毅が羽交い締めし、真愛が苦笑いを溢し、流音が呆れたように宣告するといった通り反応は十人十色━━━ではなく六人六色だが気にせず宗吾が大きく息を吸って宣言をする。
「さぁ、始めようか!制服を『作って』教員らの馬鹿げた思想を『破壊する』。作戦名【make a break】を実行するぞ!」
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