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make a break 3
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時が経ち、二度寝から目覚めたばかりの楽斗は慌ただしく突如入った『学校で集まる』という予定のため自室で準備をしていた。
いや、準備は疾うに終わっていた。正しくは、休日でも学校に来る際は着用を義務付けられている制服を着替えようとして固まっていた。
「ふっ、やれやれ。最近は随分と俺を驚かせてくれるな......」
「楽斗、早く着替えなさいよ。遅れるわよ」
ガチャ。
その声と共にドアが開いたと思うと、先に制服に着替え終えた流音が怪訝そうな顔で、
「うーん。やっぱセーラーは......驚くぐらい似合うわね。早く着なさいよ」
「うっせぇ馬鹿野郎ッ!!!」
バタン。
突っ込みと共に勢いよくドアを閉める。
だが、数秒の内にまたドアが開かれ、
「もうすぐ時間だから早く早く!観念してセーラー服着なさいよ!」
「うっせぇ!黙ってろ!!!」
楽斗は両手でハンガーに掛けられたセーラー服を凝視しながら続けて、
「......大体、俺の男子用制服が制限されるのは来週からの筈だろ!?おい、馬鹿姉!俺の制服どこやりやがった!?」
すると、それまで何故怒られているか分からなかったのかキョトンとしていた流音が、あーあー!と納得したように声を出して一言。
「捨てt」
「うわぁぁあああああああああああああッ!!!!!!!聞きたくない聞きたくない!分かった分かったからハッキリ言うな!!!せめてまだ、実は「捨てtenai」とか希望をもたせてくれぇぇ!!頼むよ!!!神様仏様流音様ぁ!!」
しかし、思いは届かず早口で捲し立てる楽斗に、流音は急に真剣な顔になって、
「捨てたわよ」
「人の話聞いてたぁぁぁあ!?」
絶対聞いてなかっただろコイツ。と、思いつつ確認作業で叫ぶ楽斗を無視して流音は
「良いから早く着替えなさい。これは三度目の警告よ。流音の顔も三度までってね」
「ばっちり聞いてたんじゃねぇかッ!!!しかもそれ言うなら仏だろうが!」
「嫌よ」
「まさかの否定!?しかも即答!?意味わかんねぇよッ!!!!?」
「分かるでしょ?」
「分かるかボケぇ!!!詳しく説明してみやがれっ!」
「......仏って何か皆ブサイ━━━」
「アウトォオオオオオオオ!!!」
四月十一日、午前七時三十二分。
いつの間にか自前の制服を捨てられていた楽斗は、セーラー服片手に大声で突っ込みを上げていた。
今日もまた、騒がしい一日が始まろうとしていることを予期しながら。
「......で、結果体操服で来たって訳か。なるほどな......ようやく繋がった」
東校舎二階の日の当たる教室。
もはや、第二の家とも言えるほど頻繁に訪れている教室の中心で、やはり会議室みたく長方形に並べてある机に肘を着きながら大毅は謎を解いた後の名探偵のようなどこか清々しさを醸し出す満面の笑みでそう言った。
しかし、そんな大毅とは正反対で、楽斗は「ぐぬぬぬぬ」と顔を歪ませ、
「だが、まぁ......。体操服を着てきた理由は良く分かったが、一つ気になることがある。......何故に女物の体操━━━」
「黙れぇ!うるせぇ!お前なんかに......この気持ちが分かるかよッ!」
「いやオレは別に分かりたくもないんだが......って、おい!まて、マジ泣きは想定外だッ!」
ボロボロと涙を溢す楽斗に大毅は慌てて謝ろうとして、それまで興味無さげに携帯を触っていた流音が一言。
「その目薬、何か不良品みたいだから気を付けてね。使ったら目が痒くなるわよ。早く目を洗った方がいいと進言しておくわ」
「えっ!?ッ、ぎゃあああああ!!!!!ホントに痒くなってきたぁぁ!!!」
「め、目薬だとッ!?楽斗お前オレを騙したのか!?おい!楽斗!」
「うるせぇぇぇ!今はそれどころじゃねぇぇえ!!お前も食らいやがれ!」
「ばっ!?くそっ!?目に入りやがった!!!って、マジ痒ッ!?振りじゃなかったのか!!水水!水道はどこだぁ!!!」
「はい大毅。水道じゃなくて水筒だけどこれでよければ使って~」
「ありがとう菫......ってこれ熱湯じゃねぇか!!ぐぁぁああ!」
「何だ騒がしい奴等だな。まともに寝れはしないではないか」
「ふぅ......死ぬかと思った」
「あれ?楽ちゃんどこ行ってたの?」
「そこのトイレの水道で目を洗ってきた」
「そうか、トイレッ!オレも洗ってくる......おい!圭子何でドアの前に立ち塞がるんだ!?」
「無論面白いからに決まっているだろう?」
「ふっ、......いつものオレなら諦めていたかもな。だが、今のオレはいつもとは違う!今のオレには守るべき物(洗うべき目)がある!例え両目がぼやけていても負ける気はしないッ!!うおお━━━━」
「はいはい。そこまでな!落ち着けお前達。騒いでいるとゴリラに見つかって補習室送りになるかもだぞ」
落ち着くどころかどんどんヒートアップしていく友人達に、それまで黙って話を聞いていた主催者である宗吾はこめかみに青筋を浮かばせながらパンパンと手を叩き言った。
『補習室送り』。そのキーワードはやはり友人達にとったも恐怖の象徴であるようで、ピタリと騒音が止む。
そして、宗吾は完全に静まったことを確認すると話を続けて、
「うーん。やっぱ論より証拠だな。よし、皆これを聞いてくれ」
そう言った宗吾のポケットから出てきたのは一つのボイスレコーダーだった。
いや、準備は疾うに終わっていた。正しくは、休日でも学校に来る際は着用を義務付けられている制服を着替えようとして固まっていた。
「ふっ、やれやれ。最近は随分と俺を驚かせてくれるな......」
「楽斗、早く着替えなさいよ。遅れるわよ」
ガチャ。
その声と共にドアが開いたと思うと、先に制服に着替え終えた流音が怪訝そうな顔で、
「うーん。やっぱセーラーは......驚くぐらい似合うわね。早く着なさいよ」
「うっせぇ馬鹿野郎ッ!!!」
バタン。
突っ込みと共に勢いよくドアを閉める。
だが、数秒の内にまたドアが開かれ、
「もうすぐ時間だから早く早く!観念してセーラー服着なさいよ!」
「うっせぇ!黙ってろ!!!」
楽斗は両手でハンガーに掛けられたセーラー服を凝視しながら続けて、
「......大体、俺の男子用制服が制限されるのは来週からの筈だろ!?おい、馬鹿姉!俺の制服どこやりやがった!?」
すると、それまで何故怒られているか分からなかったのかキョトンとしていた流音が、あーあー!と納得したように声を出して一言。
「捨てt」
「うわぁぁあああああああああああああッ!!!!!!!聞きたくない聞きたくない!分かった分かったからハッキリ言うな!!!せめてまだ、実は「捨てtenai」とか希望をもたせてくれぇぇ!!頼むよ!!!神様仏様流音様ぁ!!」
しかし、思いは届かず早口で捲し立てる楽斗に、流音は急に真剣な顔になって、
「捨てたわよ」
「人の話聞いてたぁぁぁあ!?」
絶対聞いてなかっただろコイツ。と、思いつつ確認作業で叫ぶ楽斗を無視して流音は
「良いから早く着替えなさい。これは三度目の警告よ。流音の顔も三度までってね」
「ばっちり聞いてたんじゃねぇかッ!!!しかもそれ言うなら仏だろうが!」
「嫌よ」
「まさかの否定!?しかも即答!?意味わかんねぇよッ!!!!?」
「分かるでしょ?」
「分かるかボケぇ!!!詳しく説明してみやがれっ!」
「......仏って何か皆ブサイ━━━」
「アウトォオオオオオオオ!!!」
四月十一日、午前七時三十二分。
いつの間にか自前の制服を捨てられていた楽斗は、セーラー服片手に大声で突っ込みを上げていた。
今日もまた、騒がしい一日が始まろうとしていることを予期しながら。
「......で、結果体操服で来たって訳か。なるほどな......ようやく繋がった」
東校舎二階の日の当たる教室。
もはや、第二の家とも言えるほど頻繁に訪れている教室の中心で、やはり会議室みたく長方形に並べてある机に肘を着きながら大毅は謎を解いた後の名探偵のようなどこか清々しさを醸し出す満面の笑みでそう言った。
しかし、そんな大毅とは正反対で、楽斗は「ぐぬぬぬぬ」と顔を歪ませ、
「だが、まぁ......。体操服を着てきた理由は良く分かったが、一つ気になることがある。......何故に女物の体操━━━」
「黙れぇ!うるせぇ!お前なんかに......この気持ちが分かるかよッ!」
「いやオレは別に分かりたくもないんだが......って、おい!まて、マジ泣きは想定外だッ!」
ボロボロと涙を溢す楽斗に大毅は慌てて謝ろうとして、それまで興味無さげに携帯を触っていた流音が一言。
「その目薬、何か不良品みたいだから気を付けてね。使ったら目が痒くなるわよ。早く目を洗った方がいいと進言しておくわ」
「えっ!?ッ、ぎゃあああああ!!!!!ホントに痒くなってきたぁぁ!!!」
「め、目薬だとッ!?楽斗お前オレを騙したのか!?おい!楽斗!」
「うるせぇぇぇ!今はそれどころじゃねぇぇえ!!お前も食らいやがれ!」
「ばっ!?くそっ!?目に入りやがった!!!って、マジ痒ッ!?振りじゃなかったのか!!水水!水道はどこだぁ!!!」
「はい大毅。水道じゃなくて水筒だけどこれでよければ使って~」
「ありがとう菫......ってこれ熱湯じゃねぇか!!ぐぁぁああ!」
「何だ騒がしい奴等だな。まともに寝れはしないではないか」
「ふぅ......死ぬかと思った」
「あれ?楽ちゃんどこ行ってたの?」
「そこのトイレの水道で目を洗ってきた」
「そうか、トイレッ!オレも洗ってくる......おい!圭子何でドアの前に立ち塞がるんだ!?」
「無論面白いからに決まっているだろう?」
「ふっ、......いつものオレなら諦めていたかもな。だが、今のオレはいつもとは違う!今のオレには守るべき物(洗うべき目)がある!例え両目がぼやけていても負ける気はしないッ!!うおお━━━━」
「はいはい。そこまでな!落ち着けお前達。騒いでいるとゴリラに見つかって補習室送りになるかもだぞ」
落ち着くどころかどんどんヒートアップしていく友人達に、それまで黙って話を聞いていた主催者である宗吾はこめかみに青筋を浮かばせながらパンパンと手を叩き言った。
『補習室送り』。そのキーワードはやはり友人達にとったも恐怖の象徴であるようで、ピタリと騒音が止む。
そして、宗吾は完全に静まったことを確認すると話を続けて、
「うーん。やっぱ論より証拠だな。よし、皆これを聞いてくれ」
そう言った宗吾のポケットから出てきたのは一つのボイスレコーダーだった。
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