桜稜学園野球部記

神崎洸一

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「初戦どことだっけ?」

「連合チームなのは覚えてるけど?」

「喧嘩腰だなコイツ」

「あのさぁ」

「なんだ一条」

「それを当日の球場前で言うか?」

「知らねぇよそんなもん」

「こいつら変わらねーなぁ」

「たぶん今から試合ってことさえも知らないのでは」

「緊張のしてなさが尋常じゃないもんな」


「さて強豪ひしめく神奈川県大会の1回戦も後半へ差し掛かりまして、間もなくプレイボールとなる本日の第二試合は異色の組み合わせとなっております。」

権藤が持参していたラジオが伝え始める。

「三塁側、今年から共学化、11名全員1年生となっている桜稜学園高校。
対する一塁側、清川星稜、桜陰、英理数学館、栄以上4校の連合チームの対戦が間もなく開始となります。」




さて、球場に入ると相手のほうが先に来ていた
らしく、何やら背番号5の男が発破をかけて
いた。あの人が主将なのだろうと確信してみる
と「寄せ集めのメンバーだが!雑草魂で乗り越
えていくぞ!油断せずに先ずは1つ勝つぞ!」と言い、それに周りの10数人が「応!!!」と
吼えていた。なんか、高校野球っぽい。そういう感想を得た。

「なぁ、一条。もしも俺達が勝ったら、あそこに居る人達は引退するんだよな」

「当然だろ」

「つうか財前よ、そんな事考えてたら1回も勝てないぞ」
 
「まあ、そうだが」

「当然なんだよなぁ…」

「俺としては初戦景気よく勝って勢い付けたいんだよ」

「同感」

「だろ?さ、そろそろ始まるぞ、試合」

「ああ」


「プレイボール!」

「一番、センター口羽くん」

球場のアナウンス。大会が始まったと改めて実感する。

余所見は良くない。もういくらか投げているではないか。

(これで3球目…良い球だが、打てない程ではない!)

「サード!」

「三塁強襲!サードのエラーとなります」

「残当なんだよなぁ…」



「二番、キャッチャー川辺くん」

相当太い。こんなので出塁とか任せるのが、さっぱりわからんぞ。


やれやれ、初球バント、それも三塁へ…
あいつが内野イチのヘタクソなのがもうバレているのか?それとも偶然?

一塁アウト。バント成功せり。

「3番、サード 土志田くん」

頼りになりそうなヤツだ。 

「豪快に引っ張る!レフト、フェアー!」

江島がワンバウンドで捕り、投げる。

クロスプレーになる。間一髪のアウトとなる。

「レフト江島くんの強肩が光りましたね」

「まぁ2塁への進塁自体ギャンブル性がありましたしね」

「ツーアウト、ランナー三塁。ここで四番の佐治くんへと繋がります」

しょうもないフライだった。将輝よ、マウンドまで走るのは面倒くさかろう。



「一番、センター 長宗我部くん」

「適当に打てや適当に」

「誰も期待しとらんで」

「まだオリックスのファンの方が多いくらいだ」

「流石に3人は居ると思うけどね」

「最近1人だと発覚した模様」 

「あっ…」


(ボロクソ言いやがってからに…!)

「ストライク!バッターアウト!」

(結構良いスライダーだなぁ)



「2番、セカンド 一条くん」

(スライダーが来る前に、こういう球を、打つ)

「力みすぎたか、センターが前進してツーアウト」


「3番、キャッチャー 北くん」

(2球見逃してみたが…甘い球だな、コレは)

(予想通りのスライダーや!)


「三遊間!抜け…ない!ショートは栄高校1年生綿鍋!ファインプレー!」

「マジかよ…」

「面目ない、南」

「まだこれからやで」

「わかっとるわ」


「5番、ライト 屋代くん」

「先輩たちの分まで、俺が打つ!」

「ストライク!」

「俺が!」

「ストライクツー!」

(あんなボール球なカーブに手ぇ出さねぇだろ)

「ストライク!バッターアウト!」

(カーブが苦手みたいやな)
 
(何で5番なんやろか)

「6番、ファースト 長谷部くん」

(俺はあいつとは違って、変化球は得意なんだよ!)

「カーブ引っ掻けた、打球は前へは行きません。キャッチャーゴロとなります」

(畜生!)

(今日は調子ええのう、南)
  

「7番、セカンド 米沢くん」

(打てる気はしないが、やれるだけやってやる!)

 「ファール!」

「マジかよ」

「打てるぞ!米沢!」

「お、おう!」

(癪に障るわ!)

「ストライク!バッターアウト!」

「あれはストレートが凄かったですかね」

「まあ、次は打てるさ」

「はいっ!」

(はてさて、そう上手く行くかね?)

「四番、ピッチャー 南くん」

「さぁー、来いっ!」

(そう簡単には打たせねぇよっ!)

「南くん初球攻撃!左中間へ飛ぶ!ヒットだ!桜稜学園の初安打はエース南!」

「クソがっ!」

相手ピッチャーの勝が思い切りマウンドの土を蹴りあげる。そこまで悔しいのかよ、そう中之島はバッターボックスへの道中に思うのである。


ーーーやはり相当怒っている。一年生なら一巡くらいは抑えられると信じていたのだろう。
力がこもりすぎている。
だから、
振り抜く。


「アウト!」

打球はライトが追い付いていた。
意地、そんな単語が似合う感じだった。

「6番、ショート 橋本くん」

勝は先程よりかは機嫌が治ってはいたようだがしかし、キレがあった。
攻めあぐねてしまった。そう橋本はサードフライの軌跡を見ながら思うのであった。

「7番、レフト 江島くん」

(怒ったと思ったら今度は自信を取り戻したってか?チクショウ)

あっさりと見送った。三振である。

2回を終えて0-0。
まだ試合は始まったばかりである。
    
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